俺の幼馴染がヤリチンに。
俺、杉村智と、中田祐子は小学校からの付き合いの、幼馴染だ。
「大きくなったら、智くんのおよめさんになるー」
そういって笑っていた、俺の愛しい幼馴染。
物心ついたときには隣にいたし、何をするにも一緒だった。
小学生って、気になる異性にはいじわるをしたり、
逆に男子と女子が仲良くしていると、あれこれ言われるのだが、
俺がクラスのやつらに何を言われても、祐子と一緒にいる方が大事、と一括したらカップル認定されて掌返しでカップル扱いされるようになった。
俺も祐子も、お互いを想い合っているのだと、俺は思っていた。
ずっと祐子の事は意識していたし、可愛いと思っていた。
中学までは眼鏡で地味だったが、高校になってコンタクトにし髪も美容院に通うようになり垢ぬけたことで、祐子はクラスメート達に注目されてるようになった。
それでも俺と祐子の関係は変わらなかったが、
俺は今年こそ、祐子との関係を変えようと決意した。
春、高校に入学したての頃に、祐子に言われたことがある。
私、誰かに告白されるなら、夏休みの日に、花火の下で告白されたいなぁ。
そんな祐子の言葉を俺は覚えていたから。
「祐子、今年の夏祭りで、お前に話したいことがあるんだ」
俺のそんな言葉に祐子は驚いた様子だったが、
暫くして、少しだけ顔を赤らめながら、
「わかった。・・・うん、待ってる」
そう、言ってくれた。
――筈だった。
夏休みが目前となったある日の帰り道。
祐子と並んで帰っていると、祐子が、何か思いつめたような、
真剣な顔をして俺に言ってきた。
「ごめん、智くん。私、もう智くんと一緒に帰ったり、でかけたりできないの」
祐子の突然の言葉に、驚く俺。
「えっ、どうして?」
俺がそう聞くと、祐子は言いにくそうにしながら、とつとつと語った。
「私、矢理地先輩に告白されて・・・付き合う事にしたの」
その言葉に、頭を横から殴りつけられたかのような衝撃を受けた。
矢理地。
確か3年の、女子たちが騒いでいるイケメンだ。
読モとかもやっていたり、雑誌やTVに出たりもしているみたいで学校では有名な人だ。
女子からのウケはいいが、男子からの評判は最低。
人の女を寝取ったとか、女を妊娠させて捨てたとか、悪いうわさばかりが流布されている。
「な、何で?!俺、祐子に祐子の事を――夏祭りの約束、してたじゃないか!」
まわらない頭で、そう叫ぶ。
「うん、そうだね。・・でも、ごめん智くんは、やっぱり幼馴染だし、なんか違うかなって。それに、矢理地先輩、かっこいいし、優しいし、私の事何でも全部解ってくれるから・・・。だから、智くんよりも、先輩の方が、いいなって」
「・・・何なんだよそれ。自分勝手すぎるだろ」
祐子はそれからも、謝罪と、自己弁護と、慰めを交互に言っていたが、もう頭には入ってこなかった。
それから祐子と別れた際も、これからも幼馴染として、お友達で居てねとか言われた気がするが、返事はできなかった。したくなかった。
裏切られた、と思った。
俺の方が先に好きだったのに。
祐子が、夏祭りがいいといったから、その時に伝えようと、したのに。
自分は先輩とあっさり付き合ってるとかふざけんなよ・・・。
悔しさと、悲しさと、怒りでぐちゃぐちゃになり、俺は祐子からもらったプレゼントや、祐子とうつっている写真を壊し、破り、ダンボールに詰めた。
もうどうでもいい、あんなクソ女。
夏休みは空虚だった。
親父やお袋には祐子がヤリチンの先輩と付き合いだした事を言って、
もう祐子とは関わらないとだけ言った。
2人とも、悲しそうな、寂しそうな顔をしていた。
祐子の両親とうちの両親は仲が良いが、まぁ俺には関係ない事だ。
夏休みのある日、買い物に行こうとしたら金髪にピアス、露出の高い格好をした祐子が、矢理地と腕を組んでホテルに入っていくのが見えた。
一瞬、祐子と目が合い、祐子は気まずそうに俺から目をそらした。
俺もそんなお前の姿は見たくなかったよ、祐子。
夏休み明け。
すっかり雰囲気の変った祐子に驚き、何人かの共通の友達からは中田さん何があったの?と聞かれたが、その度に俺は振られた、祐子は矢理地と付き合ってると答えた。
そう言うと皆、俺を慰めて、うわぁ・・・と祐子にどん引きしていく。
・・・それもうっとうしくて、だるくて、嫌だった。
もうあいつは俺には関係ないんだ。
2学期、何度か祐子とすれ違ったことがあった。
金髪で胸のボタンをおおきくあけた祐子は、何か俺に話しかけようとしていたが、
俺は悉く無視した。
口もききたくない。裏切り者の、キモチワルイ女め。
授業中、別に調子が悪いわけではないが、ダルいからトイレの個室に籠り、スマホをいじってサボっていると誰かが入ってきた。・・・・少し時間を潰したら教室に戻ろうと思っていた。
「せんぱい、こんなところで・・・スるんですかっ」
「おぉ、授業中にハメるのも・・・興奮すんだろぉ?」
・・・それは、聞きたくもない、祐子と、矢理地の声だった。
――板一枚を隔てた壁の向こうから、祐子の淫らな声がする。
耐えられない。
俺はスマホをポケットにしまうと、トイレの個室を出た。
「やだ、誰かに聞かれてた・・・・・っ」
祐子の声が背後で聞こえた。
「いいじゃねーか、いっぱい聞かせてやろうぜ・・・!」
矢理地が下種な事を言っている。クソだ。
やる気でねえ、今日はもう帰るか・・・。
それからしばらくした日、両親がでかけるので外食してくれと言われ、
学校にほど近いファミレスで晩御飯を食べていると、聞き覚えのある声が近くでした。
「でよ、その中田って女の締まりがマジ最高でよーwwwww」
「何だよそれめっちゃ羨ましい、俺にも使わせてくれよ」
「だったらお前も新しい女提供してくれよなwwww」
ゲラゲラと笑いながらクソみたいなことを言っているのは、間違いない、矢理地だ。
「中田も夏休み中仕込みまくって、今じゃ俺のけつのあなまで舐めるぐれえ調教してやったわww可愛いしヤリ心地抜群でマジ最高のオナホだから、今度お前らにも使わせてやるよ」
「あざーっすww」
「でもそんなかわいい子どうやっておとしたんすか?」
「あー?話しかけて、何言われても適当にわかってるふりして、甘い言葉かけて、その場で即ハメしてOKさせた」
「エッグ手が早いwww」
「俺のテクにかかれば一発でメロメロよwwwwあとは気になってた幼馴染の男とかいうやつを振らせて、夏休み中毎日ヤリまくったったwww今度つかわせてやるからmそのかわりここのファミレス代奢れよw」
「え、そんでいいんスかw1000円もしないじゃないっすかw」
「特別出血大サービス価格だよ」
「ギャハハハハマジ受ける、やっすいオナホっすねwww」
とてもじゃないが、聞くに堪えない。
・・・俺は食べかけの食事を置いて、会計を済ませてファミレスを後にした。
もう二度と関わりたくないと思っていたし、今後関わるつもりもないが、
・・・幼馴染だった女だから、あと1度だけ、助言しよう思った。
中田の家を訪ねると、おばさんが応対してくれた。
俺が訪ねてきたことに驚きながらも、おばさんは祐子を呼んでくれた。
祐子は俺が訪ねてきたことに驚いていたが、喜んで入れから出てきてくれた。
久しぶりに、祐子と並んで道を歩く。
「・・・久しぶりだね、智くん」
「そうだな」
お互いが、ぎこちなく、言葉を選びながら会話する。
「学校であっても無視されるし、もうこうやって話すことなんて、ないと思ってたんだ。寂しかったんだよ?」
「そうか」
――そうさせたのはお前だろうに、と金髪になった幼馴染の方を見る。
耳には、いくつもピアスがついている。
「今日はどうしたの?」
「・・・祐子、単刀直入に言うぞ。お前は矢理地に騙されてる。
さっき、ファミレスで矢理地にあった。お前との・・・行為の事を、連れと面白そうに話してた。今度、お前をヤらせてやる、とも言っていた。別に、俺とどうこうしなくてもいい。ただ、矢理地とは別れた方が――」
言葉の途中で、頬に痛みをかんじた。
祐子に平手打ちをされたのだと気づいたのは、隣を歩いていた祐子が、涙目で怒っていたからだ。
「・・・最低!振られたからって、人の彼氏の事悪く言うなんて。
見損なったよ!そんな人だったんだなんて」
「違う!今更お前と付き合いたいだとかどうこうしたいだなんて思っちゃいない!ただ・・・幼馴染だったお前が心配だったからだ」
「嘘!どうせ、智くんも私とヤリたくなったからでしょ!
先輩と別れさせて、私を誘惑するつもりだったんでしょ、このクズ!」
・・・駄目だ、取り付く島もない。
「あんたみたいに、姑息で卑怯な童貞野郎なんかと違って、先輩はいつも優しくて、スゴいんだから。今更アンタなんかと付き合いたいなんて思うわけないでしょ、キモいんだよ!」
そう言って俺を罵倒した後、俺を蹴りつけて、踵を返す祐子。
「2度と私にはなしかけないでよね。絶交よ!!死ね!!」
そういって、中指を立てるジェスチャ―を向けてえから帰っていく祐子。
ここまで言われたら、もう俺に出来ることは無い。
「わかった。じゃあな」
それだけ言って、俺も祐子に背中を向けた。
それから一週間ほどして、祐子は学校に来なくなった。
何かあったのか?と教師やクラスメートにもきかれたのが、俺は知らないし、関係もないとしか言いようがなかった。
母親から、祐子が引きこもっているという事は聞いていたが、もう俺の知ったことじゃない。
そして祐子が学校に来なくなってさらに一週間ほどたった日、矢理地が逮捕されたことが学校内で話題になった。
矢理地は付き合った女にあやしい薬をのませていかがわしい事をさせたり、そうやってとった行為をインターネットにアップロードしたりをしていたようだが、それがバレて警察に捕まったようだ。
現役のタレントということでTVや、矢理地が読モをしていた雑誌も、謝罪文をのせていた。
祐子が学校に来なくなったのは、恐らくあの時のファミレスであったときの事の話や、矢理地のことがらみだろう。興味もないけど。
そんな事があった日の夜、祐子が俺の家を訪ねてきた。
「智くん、・・・少し時間、いいかな」
「あ?2度と私にはなしかけるなっていったのはお前だろうが」
俺がそう言うと、しくしくと泣き出す祐子。うぜえ。
「何だよ泣くなようっとうしい。・・・くそ、少しだけだぞ」
その被害者面した態度がクソいらつくが、
放っておいても泣き止まないので時間をドブにすてる覚悟で話に付き合ってやることにする。
歩きながら、ぽつぽつと話し始める祐子。
あの時はごめんなさい、私を心配してくれていたのに酷いことをいってごめんなさい、
智くんの気持ちを無下にして先輩と付き合ってごめんなさい、と。
「・・・で?謝って満足したか?じゃあ俺は帰りたいんだけど」
俺のそんな態度に、驚く祐子。
そりゃそうだろ、今更お前に愛情なんてひとかけらものこっちゃいないんだ。
用事が済んだってのならさっさと帰りたい。
「あの、あの、智くん、私ね・・・やっぱり、やりなおしたい・・・よ」
――は?何いってんがこのアバズレビッチ。
あれだけコケにしておいた俺と、今更何をどうやり直すっていうんだ?
プッツンと、何かが切れる音がした。
「矢理地のけつあなまでナメるように仕込まれた中古便器と何をどうやり直せっていうんだ?あ?」
豹変した俺の態度に、言葉を失う祐子。
「ファミレスでな、矢理地が言ってたぞ。夏休み中ヤリまくったとか、オナホだとか、ファミレス代と引き換えに祐子とヤらせてやるってな」
そんな俺の言葉に、ぶるっ、と震え青い顔をする祐子。
「なんだよ、思い当る事があったのかよ。あぁ、じゃああれか。俺がお前に、矢理地がそう言っていたから別れた方がいいって言った後に、お前、そういう扱いを受けたのかよ」
無言と言う名の肯定を返す祐子。
「そんなところまで堕ちるに落ちた使い古しの便器をどうやってまた好きになれってんだよきたねえ。今更やり直そうだなんていわれても、もう遅いんだよ・・・バカが!!」
俺の言葉に泣きだす祐子。
これはお前にされたことの因果応報なんだよ、クソ女。
「そういや学校で矢理地が、そういうビデオをネットで販売してたっていってたぞ。お前は大丈夫なのか?ええ?」
そういうと、さらに泣きはじめる祐子。
「うううう、ううううう、消してって、お願いしても、増えるの・・・消えないんだよお・・・」
ブラフでカマかけたが、やっぱりそうか。
こいつはもう、あられもない姿を世界中に拡散されちまってるのか。
だから、学校にもこれず、引きこもりしてたのか。
外が怖いなら一人で一生引きこもってろ、ボケ。
「しらねーよ。俺には関係ねーよ。そもそもがお前が俺との約束破って矢理地に靡いたのが原因だろ。なんで自分が棄てた男にすがろうとするんだよカス」
すすりなく泣く祐子だが、微塵も可愛そうだとは思わない。
「お前、惨めだな。綺麗だった黒髪もなくして、肌もガッサガサで、オナホ扱いされて男にヤリ捨てられて、動画は拡散されて女として終わってんじゃねーか。そんなのともう関わりたくねえ。二度と俺にかかわるんじゃねーよアバズレビッチがよ」
その場にうずくまり、わあわあと泣きはじめた祐子だが最早俺には1ミリも興味がわかない。ざまぁみろ、裏切り者。
祐子を置いて家に帰り、カチャン、と鍵を閉めた。
すこしだけ、気が晴れて、楽になった。
その夜、珍しく子供のころの夢を見た。
笑顔の素敵な幼馴染の女の子と一緒に、公園で遊んでいる夢だった。
次の日の朝、スッキリした気分で目覚めて学校に行く。
教室の席に着けば、今日も矢理地の逮捕や、その余波でもちきりだ。
そしてそれからしばらくして、
矢理地が残した動画保管庫のアドレスが学校内で拡散されて、
矢理地がヤリ捨ててきた女のそういう動画が、全校男子のオカズになってるらしい。
俺には興味もないが、その動画を見た男子からは、可哀想な幼馴染、として購買のパンや菓子をカンパされたりするが、気を使ってくれなくてもいいのに、と思う。
これから先祐子がどうなるかはしらないが、
俺の中での祐子はこれで一区切りとして、
吹っ切ることが出来たと――思う。
今日も今日とて見知らぬ男子に奢られたパンを食べながら、
ぼんやりと雲を眺めてそんな事を思うのであった。
夜寝れなかったので書いた単発作品になります。
先日完結したイケメンモデルの続編として最近連載している「失恋俺氏と、CV若本ちゃんと!」が、(今のところ)ざまぁ色の薄いラブコメ作品なので、
文字を書いていると幼馴染ざまぁを書きたくなってきます。
定期的に幼馴染ざまぁしたい衝動があふれてくるので、
何かまた幼馴染ざまぁを思いついたら短編投稿したいです。