さくらんぼシスターズ
この橋を渡りたきゃ、あたしたち「さくらんぼシスターズ」を倒すことだね!
と、露出の多い服装をした小柄な女性二人が言うので、僕は迂回することにした。
「待って! そういうのはなし! この先に進むためには、ひとまずこのフラグを立てる必要があると考えてよ!」
よく見ると、露出の多い服装から見える肌は、40代以上の年齢を感じさせた。
顔には深いほうれい線が入っており、気丈に振る舞ってはいるが、物悲しさを感じる。
「いえ、橋を渡る用事はないので、帰りますね」
「そうですか……」
二人は肩を落とし、先程の威勢とは打って変わって弱々しい声で返答した。
ブゥーーンと低い音がなり、その世界は真っ暗になった。
僕がVRヘッドセットを外すと、すかさず彼は話しかけてきた。
「どうだった? 二〇年後の彼女たちは?」
「うーん、なんだろう。キャラ設定、キャラデザが二〇年も一緒で、歳だけ食ってるってのは、なんか物悲しい感じはしましたね」
「でも、リアルだろ? それが売りなんだから!」
「二〇年も経ってるのに、ずーっと橋を守り続けてるのは、なんか違和感ありますよ」
「仕方ないだろ。そうしなきゃ、ゲームシナリオが崩壊しちゃうじゃんか。さくらんぼシスターズは橋を守る役目! でも、ゲーム中の登場人物たちは、全員現実と同じ時間軸で歳を取る! リアルだろ?」
「うーん。もう少し年相応な生活をしてたら良いと感じました」
「ふむ……。なるほどな。よし調整してみよう! さあ、VRを装着して!」
僕はVRヘッドセットをかぶる。
「こらー! たっくん! 待ちなさい!」
縦横無尽に走り回る三歳くらいの男児を、さくらんぼシスターズの一人が追いかけていた。
彼女は男児をだっこして一息つくと、僕に気づいたようだ。
「あれ? えっと、どなたですか?」
「橋を渡りにきました」
「え……、橋を……渡りに……? お姉ちゃん! お姉ちゃん! 橋を渡りたい人きたッ!」
しばらくすると、三人の子供にまとわりつかれながら、少々ふくよかな女性が現れた。
「君か。二〇年もこの橋を渡りたいってやつは来なかったのにね……」
その女性の傍らにいる、四歳ほどの少女が短剣を持って震えながら話した。
「この橋は……渡らせないぞ……」
「ほら、大丈夫。お母さんたちに任せたらいいから」
さくらんぼシスターズは、我が子達を守るように身構えた。
「この橋は渡らせない!」
僕はなぜか気分が落ち込み、さくらんぼシスターズに告げた。
「僕は、この橋を渡るつもりはありません。お騒がせしてすみませんでした」
「……え。そうなんだ。なんだ……。よかった」
妹が安堵の声をもらすと、短剣を持っていた少女が、小さく震えながら僕に話しかけた。
「ほんとに……?」
「本当さ」
「よかった……。うぇーーん。お母さーーん」
女児は母親にしがみつき、感情の糸が切れた声で泣いた。
「どうか、みなさん、お幸せに」
女児は母親にしがみつきながら、涙目の顔でこちらを向いた。
「お兄ちゃん。ありがとう……」
僕の顔は自然と笑みがこぼれ、女児に手をふった。
ブゥーーンと低い音がなり、その世界は真っ暗になる。
「どうだ!? リアルだったろ!?」
「いや、重いっす……」




