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さくらんぼシスターズ

作者: 京屋 月々
掲載日:2021/09/10

この橋を渡りたきゃ、あたしたち「さくらんぼシスターズ」を倒すことだね!


と、露出の多い服装をした小柄な女性二人が言うので、僕は迂回することにした。


「待って! そういうのはなし! この先に進むためには、ひとまずこのフラグを立てる必要があると考えてよ!」


よく見ると、露出の多い服装から見える肌は、40代以上の年齢を感じさせた。

顔には深いほうれい線が入っており、気丈に振る舞ってはいるが、物悲しさを感じる。


「いえ、橋を渡る用事はないので、帰りますね」

「そうですか……」


二人は肩を落とし、先程の威勢とは打って変わって弱々しい声で返答した。



ブゥーーンと低い音がなり、その世界は真っ暗になった。


僕がVRヘッドセットを外すと、すかさず彼は話しかけてきた。


「どうだった? 二〇年後の彼女たちは?」

「うーん、なんだろう。キャラ設定、キャラデザが二〇年も一緒で、歳だけ食ってるってのは、なんか物悲しい感じはしましたね」

「でも、リアルだろ? それが売りなんだから!」

「二〇年も経ってるのに、ずーっと橋を守り続けてるのは、なんか違和感ありますよ」

「仕方ないだろ。そうしなきゃ、ゲームシナリオが崩壊しちゃうじゃんか。さくらんぼシスターズは橋を守る役目! でも、ゲーム中の登場人物たちは、全員現実と同じ時間軸で歳を取る! リアルだろ?」

「うーん。もう少し年相応な生活をしてたら良いと感じました」

「ふむ……。なるほどな。よし調整してみよう! さあ、VRを装着して!」


僕はVRヘッドセットをかぶる。


「こらー! たっくん! 待ちなさい!」


縦横無尽に走り回る三歳くらいの男児を、さくらんぼシスターズの一人が追いかけていた。

彼女は男児をだっこして一息つくと、僕に気づいたようだ。


「あれ? えっと、どなたですか?」

「橋を渡りにきました」

「え……、橋を……渡りに……? お姉ちゃん! お姉ちゃん! 橋を渡りたい人きたッ!」


しばらくすると、三人の子供にまとわりつかれながら、少々ふくよかな女性が現れた。


「君か。二〇年もこの橋を渡りたいってやつは来なかったのにね……」


その女性の傍らにいる、四歳ほどの少女が短剣を持って震えながら話した。


「この橋は……渡らせないぞ……」

「ほら、大丈夫。お母さんたちに任せたらいいから」


さくらんぼシスターズは、我が子達を守るように身構えた。


「この橋は渡らせない!」


僕はなぜか気分が落ち込み、さくらんぼシスターズに告げた。


「僕は、この橋を渡るつもりはありません。お騒がせしてすみませんでした」

「……え。そうなんだ。なんだ……。よかった」


妹が安堵の声をもらすと、短剣を持っていた少女が、小さく震えながら僕に話しかけた。


「ほんとに……?」

「本当さ」

「よかった……。うぇーーん。お母さーーん」


女児は母親にしがみつき、感情の糸が切れた声で泣いた。


「どうか、みなさん、お幸せに」


女児は母親にしがみつきながら、涙目の顔でこちらを向いた。


「お兄ちゃん。ありがとう……」


僕の顔は自然と笑みがこぼれ、女児に手をふった。



ブゥーーンと低い音がなり、その世界は真っ暗になる。


「どうだ!? リアルだったろ!?」

「いや、重いっす……」

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