『第7話 むかしむかしのエタったファンタジー、最終話め(中断まで)』
『第7話 むかしむかしのエタったファンタジー、最終話め(中断まで)』
おつきあいありがとうございました。
感謝致しますm(_ _)m
実はこの物語にはけっこう大きなミスがあります(苦笑)
今回、直そうかとも思いましたがやめました。ちょっと面倒な改稿となることと、ミスがあったという自虐的な晒しですね(^_^;)←当時書くのに夢中で気づかなかったのでした。時系列変だろっ!ってあとで思いましたけど、後の祭りです( ̄▽ ̄;)
それについては文末に書きますね(笑)
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すべてを聞き終えたリルフは、力なく口を開く。彼にはまだ、叔父の死が実感として湧いてきてはいない。
「お話は解りました…。ですが何者なのでしょう」
リーはかぶりを振る。だがリルフに向けられた眼は何かを掴んでいるかの様に見えた。
「声は違っていた。しかしあの口調…そしてリルフ、そなたを知っているもの…。
イリア…。彼なら娘のためにそなたを送ってくれると思うのだ」
「ですが…」
リルフはそれに反論し、大公から受け取った竜刀を、以前に見た景色を思い起こしつつ、無意識にいじった。
- 彼は高台から、無惨に裂けたその塔を見下ろした。
かつて、緑なす渓谷に建ち、自然との調和の内にあり、その主、『白の導き手』イリアの力を受け、白き姿を一層白く輝かせていた、『白き月の塔』。
それは天からの雷によって二つに裂かれ、そして今、真実を見届けに来た彼の前に、その姿を晒していた -
それはかつての名ではなく、今はこう呼ばれていた。『白骨の塔』と…。
「わかっている。だが、わしには彼がその程度の事で死んだとは思えんのだ」
大公の脳裏を古い記憶がよぎる。
「声の主が誰であれ、手助けをしようとする者である事に間違いはない。
リルフ・ファイン、そなたを送ってくれたのだから」
リルフの心は城に着く前から決まっていた。彼はそれを大公へと伝える。
「私にやらせてください。叔父と…、イルス様のためにも」
「やってくれるのか?」
「…自信はありません。けれども私はそれをやらなければならないのです」
リーの眼には、そう言っている彼が、叔父のガイルと重なって映る。
そしてそれが、イルスが拐われてから初めて、僅かではあるが大公に笑みを浮かばせる事になった。
「わしたちが若い頃もそうだったよ。
リルフ、話ができて良かったと思う。イルスの事よろしく頼むぞ」
扉が軽く叩かれる。
「リー様、最後の捜索者が見つかりました」
大公はそれに応じ、リルフの笑みを向けた。
「では仲間に会ってもらうとしよう」
◇
大公は周りの人物たちを見回して、今までの話を締めくくろうとする。
「私は嫌だからね!!」
リルフィーナは彼の言葉を遮り、そう言いはなった。
「大体、おかしいと思わないの?
嫌がる私たちを無理矢理つれてきて、そのあげくに竜と戦ってくれですって!? 正気じゃないわっ!!」
その様子に、大公や、それに他の男たちは声も出ない。
確かに理不尽な話だ。けれども平民の、それも親子ほども年の違う違う少女が、悪さをした弟でも叱りつける様に大公に食ってかかっている。
「いくら自分の娘が可愛いからって、同じ年頃の他人の娘をそんな危険な所に行かせようとする気なの?」
「リルフィーナっ、それは言い過ぎだ」
ヴェマーは彼女の言動を強く戒めて、大公に謝罪を示す。
「申し訳なく思います。悪気はないのです、性格がきついだけで」
「リー様…」
リルフの声に、大公は微かに頷く。
「我が娘のために無理を言い、すまないと思う。
今からでは宿はなかなか取れまい。部屋は用意する。今夜はゆっくり休み、明日発つがいい。」
彼が部下を呼ぼうとしたとき、先ほどまで黙って目を瞑っていた金髪の妖精らしき男は、その目を開き大公へと告げる。
「おれも遠慮させてもらう…」
淡い金の光を放つ眼は、面白がっている様な輝きを見せる。
「"黄金竜"のサイファともあろう方が、弱気なことで」
今まで、ほとんどの間、彼がサイファと呼んだ妖精を眺めていた男は、にやにやと笑いながらそう言う。
「サイファ?」
そう言って金髪のエルフを見たリルフィーナに、ジムはさらに、にやにや笑いを向ける。
「化物と言ったほうが分かりが良いかな?
この前の戦役でも勇名を馳せた戦士。今を遡ること50年前、『聖騎士戦争』での英雄に数えられた事もある男。
その死を恐れぬ戦いぶりを見た、かの黄金騎士団はこう言ったそうだ。 -奴は人間ではない。亜人ですらない何かだ- と…」
「詳しいな…」
サイファと呼ばれた男は、そう口を開く。
「だが…、なぜおれがサイファだとわかるのだ?」
答えを用意してあったかのように、ジムは満面の笑みを浮かべてこう答えた。
「その格好を見ればすぐわかるさ!!そんな抜き身の剣を腰に下げた戦士なんてそうは居ない。
歌にもある。 -抜き身の剣を掲げし、黄金の竜- とね」
- その時の剣は、この私ではないがね -
ジムの言葉に呼応する様に、金属を思わせる硬質的な声が響いた。ここに集められた誰のものとも声とも違う声だった。
彼は笑いを凍りつかせ、声の主を探して辺りを見回す。ジムに集中していた周りの視線も、その行き場を失い辺りをさ迷う。
サイファは剣を外し、刃を下にして掲げる。
視線が集中した。
それは光を受け、滑りを感じさせる黒い光沢を放つ。
「我が剣、ダーク・レギオンだ」
彼が言ったその言葉を引き継ぐように、硬質な声が続く。
- その通り、我が名はレギオン。ギッヴスが創りし『七降りの剣』の中の一降り、『黒の剣』。以後お見知りおきを -
「剣が喋るのか…」
大公を初め、彼らは信じられないという様なつぶやきを漏らす。
リルフが口を開いた。その眼には決意の色が伺える。
「聞いてほしい。ぼくは行きたがらない者まで行ってもらおうと思わない。
あなたはどうする?」
リルフはそう言ってジムを見る。
彼は笑った。それはリルフたち他人へ向けられたというより、自身に向けられたものの様だった。
ジムの手が差し出される。
「おれは自分から来たんだぜ。行かないでどうしろと言うんだい?
ジム・スタイナーだ。よろしく頼むぜ!」
「私も行く!!」
リルフが彼の手を取ろうとしたとき、リルフィーナは無意識のうちにそう言っていた。
リルフの視線を受けて、
「えっと、このまま出ていくと、なんだか寝覚めが悪そうだから。かまわないでしょ」
リルフたち皆に見つめられて、彼女はばつが悪そうな顔をしてそう言った。
ヴェマーには、多分そうなることが分かっていたのだろう。彼女の後ろで笑みを浮かべている。
「みなさん、よろしくお願いいたします。わたしはヴェマー。この娘はリルフィーナといいます。
リルフィーナが主、わたしは使役者です。まあ、そのあたりはおいおいに」
「リルフでいいわよ」
彼女はそう付け加える。
彼は二人に笑いかけて、こう切り出す。
「よろしくヴェマー。それに…、ごめん。リルフィーナでもいいかい?
名乗るのが遅れたけど、ぼくはリルフ・ファインと言うのさ」
- さて、どうするのかな。サイファ? -
サイファの行動を見通すようにレギオンが声を響かせる。
「…軽い運動にはなるかもな…」
微かな笑いと共にサイファがささやき吐き出した言葉は、ほんの少しではあるが、肯定を示していた。
今までの成り行きを見守っていた大公は、穏やかに口を開く。
「では、改めてお願いする。勇者たちよ…、どうかイルスを救ってやってほしい」
その言葉は、領主ではなく、父親としてのただひとつの願いだと思えるものだった。
◇
豪華な、しかし心から楽しむことが出来なかった晩餐の後、リルフは大公に導かれ、ガイルの部屋を訪れていた。
大公は無言のうちに去り、暗い部屋に彼はガープを背に、一人で立っていた。
手の込んだ調度品など一切なく、彼は実直な叔父らしい部屋だと思っていた。
「叔父さん」
リルフがつぶやく。
「あなたの代わりにイルスは救い出します。その方が貴方も喜ぶでしょうから…」
それは以前に、叔父が旅立つリルフに残した最後の言葉だった。-リルフ、死んだ者の為ではなく、生きている者たちの為に、出来ることをするんだ-
そして彼は、それを行うつもりだった。
部屋の扉がそっと開き、リルフィーナが顔を出す。
「リルフ、ちょっといい?」
彼女の後ろから、ジムも姿を見せる。
「サイファがもう行こうって言ってるんだけど」
「なあリルフ。どうせなら、明日の誕生式典に間に合うように出かけないか?
あの男が言うことには、夜なら一瞬で目的地まで行ける方法があるそうなんだが」
リルフは大きく頷く。
「ああ。行こう!!」
「じゃ、あいつを連れてくるね!!」
彼女はそう答えて走り去った。
その様子をながめて、ジムとリルフは顔を見合わせて、思わず笑いを浮かべ合った。
リルフは小さく呟いた。
「叔父さん、行ってくるよ…」
◇
サイファは、その暗い部屋で、剣を構える。
レギオンより滲み出す様に広がった闇は、徐々にその姿を変えて、漆黒の門を造り出した。
サイファは会釈をして門へ招く。
「勇者よ。どうぞお通り下さい、夜の門を」
- そう。闇を抜けて、夜の闇の中へと -
レギオンはそう言い添えた。
門の向こうには、夜の闇が広がっていた。
◇
…to be continued
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ここまでですね(^_^;)
お付き合いありがとうございました("⌒∇⌒")
で、大きくミスしてるのは、サイファの名前です。
サイファの名はレギオンが付けたことに物語の初めでなっておりますが、
50年前の戦争の時に、レギオンでない剣を持っていた時にはサイファという名だったとジムが言っておりますね(^_^;)←ではレギオンの名付けはいつなのか?と(苦笑)
現在は、レギオンの名付けは数百年かそれ以上前ということ。
彼は一時期、黒の剣を手放しており、その時期には金の逆刃剣を使用し、それが折れてしまうまで使っていたという設定ができております。
この物語がエタった後、レギオンとサイファ、創り手ギッヴス、それに七降りの剣という設定は別のものに移植されて、TRPGシナリオに使う設定として使われました。
移植先は、3話で公開したTRPGシナリオです。←若干いじりつつ基本的な設定はそのまま使っていますね(^_^;)
レギオンという剣を作ったのは、以前に書いたと思いますがTRPGシナリオのためでした。高校の頃ですね。←その頃の剣は、TRPGのプレイヤーに持たせる予定のものでしたから、対して強くありませんでした(笑)
物語に出すにあたり、能力は大幅に強化されました。←能力の性質は基本的変わりません。魔力喰いの対魔術師剣ですね。相手の魔法を防ぎ、相手から吸収した魔力で魔法を使う、相手の力で戦い続ける、永久殺戮剣です(苦笑)
サイファについては、現在中断している拙作のメイン連載から、きょんの未来世界まで、いろんな作品に出てくる神様(悪魔)となってますね(笑)
あとは、
このお話で書かれていなかったことを幾つか付記しておきます。
リルフィーナはドラゴンライダーです。
ヴェマーは彼女の使役竜で、彼はその人間体ですね。
元の文章には、ヴェマーが使役者であるというくだりも一切書かれていなかったので、今回追加いたしました。
ジムは当時から異世界よりの転移者という設定でした。←現在は稀人という通称を使っております。
当時は『装甲騎兵ボトムズ』の外伝、『メロウリンク』の様な対装甲ライフルの様な大型武器や大火力を駆使して戦う兵士という設定でした。←装甲武装トラックごとの転移で、膨大な量の武器をちまちまと消費しつつ戦っているという設定でしたね(苦笑)
今考えているのは違う形になっており、新しく書く予定のお話でお披露目できるときがあるかもしれません。←たぶん巨大ロボが出ます(笑)
この話はこれで終了(中断)ですが、お話のエッセンスはいろいろと使い回して、TRPGや新たなお話のネタになってますね。
お話はそんな風につながり続けています。
最後になりましたが、
続きが気になると感想をいただけた、あいるさん。
どうもありがとうございました。
感謝いたします。
3話で終わらせる予定でいたこの文章を終わらせる事ができたのは、
あいるさんのおかげです。
楽しんでいただけると良いのですが("⌒∇⌒")
読んでいただけた皆さま、どうもありがとうございました。
皆さまの、何かしらのお役に立てたのでしたら幸いです(^ω^)




