プロローグ
「ううん…?ここは?」
目がさめると、見覚えのないところにいた。
ここは…部屋…?
だだっ広い空間に、机とイスが置いてある。机は、一般家庭にあるご飯を食べる時に使うでかい机を想像してもらえば、多分合ってるだろう。イスは、普通な一人用のイスが、机を挟んで向かい合って置いてある。
マジでここどこだ?
たしか、こうなる前は…
ーーーー目がさめる前ーーーー
はあ…
疲れた…
中学二年生の俺は他のことはともかく、不幸なことに関しては自信があった。
学校では「先生に媚びをうっている」という理不尽かつまったく心当たりのないことで約四年ほど前からいじめられ、家では小学校入学時の両親の離婚が原因で、母から虐待を受けている。
それでも、たった一人の親友がいたから、耐えられた。
でも、その親友も去年死んだ。しかし、最初は「あいつが見ているから」と、あいつの分も生きようとした。でも、もう疲れたんだ。
なあ、もう死んでもいいよな?
アニメやマンガと違って、現実には、俺を助けてくれる「主人公」なんていない。
目の前には、大量の車が行き交っている。それに向かって、足を踏み出した。
キィィィィィィ!!!!!
バンッッッ!!!!!
…バタッ
ああ、最悪な人生だった…
それでも、願うならば。
「…主…人公…に……なりた…かった…」
来世の俺よ。
願わくば、俺の夢を叶え…て……くれ…よ…
薄れゆく意識の中、そう願った。
ーーーーそして今ーーーー
「俺死んだんだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
すっっっかり忘れてたぞ!!!
つかなんで自分が死んだこと忘れてんだよ!!!
「うわっ!いきなり叫ぶなよ…」
?
声がした方を振り返ると…
誰かいた。
俺が戸惑ったのは、そいつを懐かしく感じたからだ。
「あの…どこかで会ったことありますか?」
そう聞くと、そいつはびっくりしたような、戸惑ったような、寂しいような表情を浮かべ…笑った
「初対面だぞ?」
…うーん…気のせいか。
「あの、なぜ俺はここに?ここはどこ?あなたは誰?」
「れ、冷静だな…えっと、ここは天界で、俺は神で、お前は死んだからここにいる。」
…は?
なにいってんのこいつ?
「?…あー、なるほど」
悟ってくれたらしい。よかっ…
「トイレだな?それならそうと早く言ってくれれば…」
「違ぇぇぇぇぇよ!!!!!」
全然違うし!!!
「?あ、あーあー、なるほどな!」
はあ…今度こそ…
「腹減ったのか、育ち盛りだなぁ」
「だから違ぇっつーーーの!!!!!!」
「説明だよ説明!!!!!説明しろ!」
「?それならさっき…」
「あんな簡潔な説明で納得できるか!!!!!」
「そっか…えっとだな、俺はお前らが言うところの『神』で、ここは俺が暮らしてる部屋だ。だから『天界』。そんで、お前がここにきたのは、死んだお前の魂を俺がここによんだからだ」
俺がよばれた?…連れてきたってことか?じゃあ…
「なんで俺を?」
「お前は、今までにすげぇ不幸になってきたから、『適任』だと思ってな。」
適任?
「どういうことだ?」
「お前には、これからあるミッションをしてもらう。
クリア条件は
・ターゲットの「心」を開き、本来あるべき「心」を「奪還」すること。
・自分がこのミッションをしているとばれないこと。
この二つだ。
お前の顔はイケメンにしてやるし、「奪還」するにあたって都合のいい関係…たとえば、「ターゲットの親友」とかにさせる。だが、そこからはお前に任せる。ミッションクリアした時には自動的にこっちに戻ってくるし、ターゲットの記憶は都合のいいように改竄される。だからお前は、ターゲットの「心」が閉ざされている原因を解決して、「心」を「奪還」…ようは、幸せにしてやるだけだ。どうだ?」
…ここまでは理解できた。ただ気になるのは…
「なんで俺なんだ?」
「それはお前が不幸を背負ってきたから…っていうのもあるけど…」
「…お前、『主人公』になりたいんだろ?」
「!?」
「…ああ。」
「お前は主人公になれる、俺は世界の問題を解決できる。…WinWinの関係だからな」
なるほど…
「その話し…」
「のった!!!」
「じゃあさっそく…」
「あ、ちょっと待て!!!」
「名前が欲しい。」
「名前…?んなのもうあるじゃねーか」
「違う。生きてた頃の名前じゃなくて、『主人公』として再スタートするための新しい名前が欲しい。」
俺は、自分の親がつけた名前が大嫌いだからな。
「そうか…じゃあ…」
ブワッ!!!!!
「!?なんだこれ!?」
「それは転生陣だ!!!名前…っ!」
「わわっ!光が…!」
「お前の名前は『レイト』!!!『大幸 冷翔』だ!!!!
さあ、行ってこい!新しい主人公、レイトとして、みんなの心を奪還しろ!」
レイト…大幸冷翔、か…
いい名前じゃねーか。
さあ、俺が主人公だ!!!