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電脳戦場の白血病魔  作者: 仙葉康大
第二章 ゲーム少年
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第八話 「ゲーム対戦」

 食堂でクソガキ流架を見かけた。テレビにゲーム機をつないでコントローラーを握っている。俺は近づいて行った。


「何してんだよ」

「ゲームです。見て分かりませんか?」

「んなこと分かってるよ。どうしてお前が食堂のテレビを占領してるか、訊いてるんだよ」

「病室のテレビより大きいからですよ。百インチ以上あるらしいですよ、これ」


 確かに食堂のテレビは、病室のテレビの三倍は大きい。


「だーかーらー、なんでお前がどでかいテレビを自分一人の物みたいに使ってるんだ? 皆の物だろうがよ」

「うるさいですね。誰も文句を言ってこないんですから、いいじゃありませんか」

「ジジババ共が子供に文句、言うはずねえだろ」

「なら、問題ないじゃありませんか」


 俺は舌打ちして、テレビの前に立った。


「あ、何してるんですか。見えない。どいてください」

「嫌だね。てめえみたいなガキは我慢がならねえ」

「自分より年下の子供にせっこい嫌がらせして、恥ずかしくないんですか?」

「ねえよ。バーカ」


 俺と流架の視線が交差する。食堂にいる他の患者は、俺たちの口喧嘩を気にせず、談笑してやがる。ジジババ共が。てめえらが甘やかすから、俺が教育しなくちゃならねえ。


「どうすれば、どきますか?」

「ジジババ共だって見たいテレビがあるんだよ。夕方の時代劇とか、ニュースとか」

「僕の質問の答えになってませんけど」

「だから俺と勝負しろ。俺が勝ったら、食堂のテレビでゲームをするな」


 流架が目を細めた。


「勝敗の決定方法は? 殴り合いとか、僕、無理ですよ」

「安心しろ。お前の得意分野、ゲームでいい」


 今しがた流架がやっていたゲームを使って対戦することにした。俺はゲームに詳しくないので、流架に説明を求める。


「このゲームはいわゆるFPSです」

「説明になってないぞ」

「ファーストパーソンシューターですよ。一人称視点シューティングゲーム。画面全体がプレイヤーの視界となります。で、後は銃で敵を撃つだけ」

「簡単じゃねえか」


 俺がそう言うと、流架が歯を見せて笑った。


「ハンデ、つけましょうか?」

「いらねえよ」

「後悔しないでくださいよ。病室からコントローラー、取ってきます」


 流架が戻って来るまで、適当に遊んだ。スティックで移動したり、的を合わせたりできる。あとは○ボタンや×ボタンを押せば、弾丸が発射される。病魔に比べたら、敵は雑魚としか思えない。


 小走りに戻って来た流架がコントローラーを差す。モードから対戦を選び選択する。次はキャラの選択だ。俺は顎の尖がったイタリアンマフィアを選んだ。流架はピエロを選んだ。なめてやがるな。


「味方は九人ずつ。十対十で、プレイヤーキャラが死んだら負け。いいですか?」

「おうよ。負ける気がしねえ」


 フィールドは廃れたビル群。開始と同時に俺は仲間に散開、各個撃破指示を与え、自分はとにかくビルを上へ上へと登った。屋上に出て、ゴーグルで索敵する。が、敵影なし。


 ピコン、と音がした。仲間が殺られた。ピコン、ピコン、ピコン。数秒の内に仲間は半数以下になり、俺のいるビルを敵が包囲していた。


「どうゆうことだよ」

「索敵って馬鹿ですか? 画面半分に敵、映っているでしょ。これは位置情報筒抜けの状態での戦闘なんですよ」

「しまった」


 と言ったところで、もう遅い。屋上まで登って来たピエロの軍勢が俺の顎尖がりおっさんを蜂の巣にした。YOU LOSE,


「ああっ。馬鹿な」

「当然の結果です」

「もう一回だ」


 俺は口走っていた。

「何度やっても結果は変わりませんよ」


 と言いながらも、流架は再戦に応じてくれた。


 対戦を繰り返したが、俺は勝てなかった。けど、敵の一体や二体は倒せるようになった。ふと、時計を見ると、三時を過ぎていた。俺はコントローラーを置いて、立ち上がる。


「もう諦めるんですか?」

「ちげえよ。俺はお前ほど暇じゃないんだ。また明日、来るから、せいぜい腕を磨いておけ」

「それ、強い方が言うセリフです」

「うるせえ」


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