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電脳戦場の白血病魔  作者: 仙葉康大
第三章 祭り
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第二十四話 「化け物呼ばわり」

 出会い頭に病魔を倒していくと、五体倒したところでアバターの体が限界を迎えた。回復のため、一時戦場を離脱する。


 ヘルメットを脱ぐと、看護師が入って来た。


「うん。ちゃんと休憩してますね」


 と言ってすぐ出て行った。そうか。もう一時間経ったのか。ということは、初菜も休憩の時間のはずだ。

 初菜の病室の扉をノックする。


「何? 休憩ならちゃんと取ってるわよ」


 青白い顔の初菜がドアの隙間から俺を睨む。


「お前、キスシアと友達なのか?」

「時々チャットしたりはするけど、友達かは分からないわ」

「友達だろ。お前を泣かせる奴がいたら、黙っちゃいないってあいつは言ってたぜ」

「そんなことを」


 初菜は自分の頬に手を当て、俺に背を向けた。


「で、私とキスシアが友達だったら何なの? 悪い?」

「悪かねえよ。ただの確認だ」


 キスシアがついているなら、初菜の病魔は倒せるだろう。最悪、キスシアの所属するチームも動かくかもしれない。そうなったら、初菜の完治は確実だ。問題は俺か。強くなるしかねえな。初菜よりも。キスシアよりも。


「もしかしてキスシアと接触したの?」

「したよ。あいつ、速いのな。動きが見えねえんだもん」

「待って。あなた、エリアSにいるってこと?」

「だったら何だ? 悪いか?」


 さっき初菜が言ったセリフを返してやる。


「あり得ない。戦闘医になって二か月程度のあなたがランクSの病魔を倒せるはずがない。ランクAですら手こずるはずよ」

「俺は戦えてる。現にケルベロスを倒した」

「嘘」


 俺は高笑いしながら、病室に戻った。笑い過ぎて喉が渇いたので水を飲む。無駄な体力使っちまった。くそったれ。


 アバターはまだ全快していなかったが、戦闘を再開する。残ったダメージは多くない。ケルベロスに噛まれた箇所が痛むだけで、戦闘に支障はない。


 昼までに俺は、ミノタウロス二体、ハーピー一体、ケルベロス三体、(ぬえ)二体を倒した。あと二十一体。午後からもペースを落とさず行けば、何とかエリアSSに行けそうだ。


 昼休憩の時間になり、電脳空間を離脱しようとしたら、ビルがはす向かいに立っている交差点で流架と鉢合わせた。


「おう、いつから来てたんだ?」

「一時間前からです」

お互いの病魔撃破数を確かめ合う。流架の頭の上の数字は二だ。

「もう九体? 僕なんか一体倒すのに二十分以上かかってるのに」

「まあ、伸び伸びやれよ。いざとなったらキスシアが助けてくれるしな」

「もう三回もお世話になりました。僕の実力では厳しいみたいだから、午後からはいったんエリアAに戻ってアバターを強化します」


 初菜は言った。戦闘医になって二か月の俺がランクSの病魔を倒すのはあり得ない、と。俺の急成長には複数同時操作型ヘルメットという理由がある。しかし、流架はどうだ? どうして俺よりも遅く戦闘医になり、特殊なヘルメットも持たない流架がランクSの病魔を二体も倒している?


「お前、化物だな」

「なんですか。いきなり人を化物呼ばわりしないでください。失礼ですよ。ってあれ、やばくないですか?」


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