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電脳戦場の白血病魔  作者: 仙葉康大
第三章 祭り
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第二十話 「エリアA」

 エリア中央のオアシスに行くまでに病魔を六体倒した。どの病魔も一蹴りで充分だった。どう考えても俺がエリアSSに行けないのはおかしい。


「S以上に行くには、実力を示さないといけないみたいです」


 流架は俺と話しながらも、スナイパーライフルで遠くの病魔を撃っている。服は上下とも黒革で、武器は依然と変わらず銃のみだ。


「ランクSに行くには何体倒せばいいんだよ?」

「目安は五十体です。どちらが早くSに行けるか勝負しましょう」

「お前、俺の成長を知らないだろ? 勝負になんねえと思うぜ」

「同じく鉄也さんだって僕の成長を知らないでしょう?」


 チビの流架が下から押し上げるように俺を見て来る。


「ちなみに今何体倒した?」

「設定をいじれば病魔撃破数が頭の上に表示されるはずです」


 俺は言われるまま設定をいじった。流架の頭の上に5が出た。


「今のところ俺が優勢だな」

「今だけですよ」


 流架の数字が6になる。遠距離の攻撃ができる分、流架の方が有利かもしれない。俺は走り出した。


 他のアバターの撃破数を見ると、すでに三十を超えている者もいた。世界は広い。強い奴がいくらでもいる。


 病魔と交戦するたび、俺は一撃で勝負を決めた。時間をかけたくなかったし、かけようもなかった。敵の

動きは緩慢、体表は薄弱。負ける要素がなかったのだ。三十分しない内に俺は四十五体目を倒した。


 足を止めてまんじゅうを食べていると、前と左右に病魔が見えた。マンモス、チーター、クジラ、オオカミ、巨大イカが俺との距離を詰めて来る。後ろにも敵はいた。コブラ、アナコンダなどの蛇が五匹。全部で十体か。五体余計だが、ちょうどいい。一度に十体の敵と戦うのが、俺の日常だ。


 動きの鈍いマンモスから仕留めようとしたが、チーターとオオカミが左右から挟撃して来た。俺はかがみ、チーターとオオカミを衝突させ、怯んでいる隙に右と左の拳でそれぞれの頭部を破壊する。


 巨大イカが墨を吐いた。攻撃範囲が広く回避できない。オオカミとチーターの死骸を盾にする。背後から殺気がしたので、とりあえず蹴りを繰り出すと、蛇が三匹吹っ飛んだ。足元に影が落ちる。上にマンモスの足があった。俺は両手でマンモスの足を押し返し、横転させる。蹴りで長い牙を折り、それをマンモスの体に突き立てる。イカが再度墨を吐きそうだったので、マンモスのもう一本ある牙を折って、イカにぶん投げる。牙はイカの体の真ん中を貫いた。


 砂漠が波のようにうねり始めた。クジラが砂を飲み込んでいるのだ。どさくさに紛れて攻撃してくる蛇二匹を捕まえて引きちぎる。が、クジラの吸引力は凄まじく、俺はすでにクジラの口の中にいた。打開策は一つしか思いつかない。足にありったけの力を込め、飛ぶ。


 クジラの頭を突き破って外に出た俺は、頭部から尾にかけて打撃を与えていった。クジラの体が潰れたトマトみたいになった。


 周りを見渡すと、色とりどりのまんじゅうが十個落ちていた。食べながら回収する。


「エリアAでの撃破数が五十を超えました。エリアSでの戦闘を許可します」


 AIが言った。


「初めから許可しとけボケ」


 俺は流架にチャットを繋いだ。


「戦闘許可が下りたぞ。お前は?」

「えっ? もうですか? 僕はまだ二十五体しか倒せてません。どうやったんです?」

「祭りが終わったら教えてやるよ。じゃ、俺は一足先に行かせてもらうぜ。お前も早く来いよ」


 通信を切り、エリアSに行こうとしたら、現実世界から声がした。


「休憩、取らないと駄目って言ったでしょ」


 ヘルメットがはぎ取られる。おっさんがいた。


「一時間につき十分の休憩」

「開会式が長かったんだよ。戦闘自体は一時間もやってない」

「駄目。電脳世界にいるだけでも負担になるんだから」

「わーったよ」


 俺は水を飲み、一息つく。おっさんがいなくなったらすぐに再開するつもりだったが、おっさんは出て行かなかった。


「初菜の様子見てきたら?」

「その手には乗らないよ。僕が行ったらやるつもりでしょ?」


 流石お医者様。俺の考えぐらい見抜いているようだ。


「でも実際、初菜も危ないと思うぜ。あいつ、自分が倒れるまで無茶しそうだからな。やっぱ俺も行くから、様子見に行こうぜ」


 おっさんが口を丸めて俺を見る。


「心配してるんだ」

「ちげえよ。俺が休んでいる間に初菜が強くなったら嫌なだけだ」


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