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電脳戦場の白血病魔  作者: 仙葉康大
第一章 戦場にて一人
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第一話 「メロンパン女」

 葉ノ池市民病院の屋上にて、ヤクルトを飲み干す。空になった容器をそこらへ投げ捨て、空を仰ぐ。雲はなく、薄い青が彼方まで続いている。


 急性リンパ性白血病の宣告を受けてから三日が経っていた。正直、まだ気持ちが追いついていない。体も別に異常ないし、誤診じゃね、と思ってしまう。


 医学は日に日に進歩しているが、白血病の完治は今でも難しいらしい。二千五十年から導入された何とかかんとかシステムをもってしても、完治成功例は少ない。つまり、限りなく万事休す。


 ため息をついていると、市の中心に位置する時計塔から三時を告げる鐘の音が聞こえてきた。すると、屋上に一人の女が現れた。片手にメロンパンを持っていて、ベンチに座り、食べ始めた。俺が見ていることに気づくと、眉間に皺を寄せた。俺は、女になめられてたまるか、と思い、睨みつけた。女は俺から視線を外さず、メロンパンをかじっている。


 ガンを飛ばされたからには、反撃しなくてはならない。とりあえず、あのパン、カツアゲするか。俺は近づき、「おい」と声をかけた。


「そのメロンパン、よこせよ」


 女は黙っているが、目には敵意が見て取れる。鼻は細く、唇は色が薄い。長い黒髪は胸の辺りまで伸びている。


「そんなにメロンパンが大事か? カロリー高いからデブるぞ」

「余計なお世話。あと、話しかけないで」


 あとは何を言っても、無視だった。女はメロンパンを食べ終わると、包み紙を四つ折りにしてポケットに

しまい、屋上を去った。女でなければ、暴力で屈服させてやったのに。くそっ。


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