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「だがな…」


 しかし。ネールの言い分を聞いたうえでも、何処か言い渋った様子を見せるケビン。

 何故ケビンがそうも食い下がろうとするのか。その理由をネールは既に察していた。


「お前は彼に何も告げず、去ったことを言いたいんだろう…?」

「…まあな」


 彼とは、アスレイのことだ。

 結局アスレイとはあの会話の後、会えずじまいとなっていた。

 事件の説明やその立ち会いに事後処理と、何かと多忙だったためではあるのだが。()()()()()()()()()()()()とも言えた。

 人伝に頼んだおいた事件被害者(ファリナ)への面会許可証の方も、喜んで受け取ってくれたと衛兵から聞いた。


「彼については案ずる必要もない」


 ネールは爽やかな笑みを浮かべながらそう言う。

 彼女には確信があった。

 案じずともアスレイならば絶対に次はこう来ると予想が出来ていた。

 と、ネールは突如、その歩みを止める。


「おーいッ!!」


 予想通り、噂をしていた()がやって来たからだ。







「ま、待って…!」


 その声と共に坂の向こうから姿を見せたのは、先ほどから二人が噂をしていたアスレイ本人であった。

 急いで追いかけてきたのだろう彼は二人のもとへ辿り着くなり息を切らし、肩を大きく揺らす。


「こんな、とこまで…来てる、なんて……早いって二人共…!!」

「待っていろ、とは言われていなかったからな」


 ハアハアと呼吸を荒くするアスレイを後目に、ネールは平静とも冷淡とも取れる様子でもっともな一言を返す。

 一方でケビンは目を大きく見開き、アスレイを見つめていた。


「よくこの道を通るとわかったな」


 彼がそう驚くのも当然だ。

 一言も告げずに町を出たこともそうだが、ネールたちはアスレイに行く先さえも教えてはいなかった。

 するとアスレイは額の汗を服袖で拭いながら言った。


「ほら、人目を避けて旅してるみたいだし…あの騒動後から考えると早朝に町を出ちゃうかなって思って。だったらあんまり人が通らなそうなこの道を進むんじゃないかなって思ったんだ…まあ結構運任せでもあったけど」


 ケビンはアスレイの言葉を聞き、半ば呆れた顔で軽いため息をつく。

 が、それはアスレイに対してではなく。

 彼の隣に立つネール―――パーシバルに対してだった。




 今になってようやく、ケビンはパーシバルの言葉の意図を理解した。

 アスレイは自身の予測と第六感を信じてここまで追いかけてきたと思っているが、それは違う。

 正しくは『アスレイならこう予測し、この道を追いかけてくる』と、パーシバルは推測したうえで、あえてこの道を選び進んでいたのだ。

 でなければアスレイがこうして追いつくことなど、出来やしなかっただろう。

 パーシバルならばアスレイの追走を振り払うことさえ、造作もないはずなのだから。


(とは言え本当に此処まで追いつくのか本気半分で試したというところか…やれやれ、驚き半分呆れ半分だな)


 その素直ではないやり口に、ケビンの心中は突っ込まずにはいられない。




 では何故、そうしてまでパーシバルはアスレイを試したかったのか。

 此処まで追いかけさせたかったのか。

 ケビンの中でその答えの予測はついている。

 が、パーシバルの性格をよく知るケビンには、その予測はとても想像し難いものだった。


(…そもそも追いかけてきたアスレイはアスレイで、どうするつもりで此処に来たんだ…?)


 と、考えたもののアスレイの思惑についても、ケビンは何となく予想はついていた。

 がしかし。

 仮に結論は出ているとしても、全ての判断―――この道のりを選ぶにしても―――はパーシバルに一任している。

 それ故、ケビンは事の顛末を見守る事しか出来ず。固唾を飲み、ただただ二人の動向を静観するだけであった。







「一体何の用だ…?」


 そう尋ねるネールだが、彼女も何故アスレイが追いかけてきたのか予測は出来ていた。

 ただ、アスレイが第一声に何を言うのか。語るのか。ネールはその言動に興味があった。

 と、アスレイは二人に向かって深々と頭を下げて見せ、叫んだ。


「お願いします、俺を弟子にしてくださいッ!!」


 直後。ケビンとネールの二人は目を丸くさせ、思わず互いを見合う。


「戦いを挑む…んじゃなかったのか?」


 そう尋ねてしまうケビン。

 これまでの経緯を考えれば当然戦いを挑んでくるだろうと、ケビンだけでなくネールも思っていた。

 何せ『天才魔槍士と会って戦いを挑んで勝利する』というのがアスレイの夢であり、目標だと聞いていたからだ。

 仮に挑むことへ狼狽してしまったのだとしても、アスレイの性格ならばせめてと、旅の同行を要望してくるだろうと踏んでいた。

 だがそうではなく、まさか弟子入りを志願してくるとは。

 大きく予想が外れてしまった二人は揃って、珍しく驚いた顔を見せていた。





「確かに天才魔槍士には戦いを挑むつもりなんだけどさ…」


 アスレイはそう言と照れ臭いのか頬を掻き、苦笑を浮かべながら話す。


「昨晩の戦いを見て実感したんだ。俺じゃあまだ天才魔槍士には勝てないって」


 戦闘技術や実力もそうであるが、何よりアスレイに不足しているもの。

 それは魔術だ。と、彼はそう思い至ったわけだ。


「魔道具や魔術の知識を身につけて俺も魔道士になれたら、天才魔槍士に追いつく可能性だってある」

「だからそれらを学ぶために、天才魔槍士に弟子入りを志願した、と…」

「そう言うこと。史上最強と謳われる相手から教われて、『魔槍士』の戦い方も学べるし、それで『魔道士』になれるんだったら一石三鳥だろ?」


 ケビンの言葉に満面の笑みを見せ、どこか得意げに頷き答えるアスレイ。

 だがその直後、ネールは声を上げて笑い出した。







   

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