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「―――これが、ネールの身体()を借りている経緯だ」

「呪いだなんて…そんな……」


 パーシバルとネールの事情を知ったアスレイ。

 彼はパーシバルが他人の身体を借りて生き永らえていることよりも、パーシバルが受けた呪いについて驚きを隠せなかった。

 天才魔槍士でさえも敵わない禁術以上の魔術―――呪術。

 ネールが助けていなければ、今頃パーシバルは消滅していた。

 しかし、彼女(ネール)の身に危険が及べば、命を落としてしまったら。パーシバルも一瞬にして消滅してしまう。

 ミリアのようにいなくなってしまう。

 そう考えてしまうと、アスレイは余りの衝撃から言葉を失いそうになる。





「もしや…魔槍士様ではないですか!?」


 と、そんな二人の後方から、突然声が聞こえてきた。

 アスレイが振り返ったその先には、ランプを持った衛兵たちの姿があった。


「その出で立ちは噂で聞いた通り…間違いない。まさかこのような場所でお会いできるとは!」

「今回の行方不明者が出ていた騒動も犯人は山賊であったと進言し、尚且つその山賊たちまで退治して下さったそうで!」

「ご報告にあった山賊のアジトで捉えられた者たちは全員無事に保護してあります!」

「しかし一体なぜティルダ様がそのような賊に加担を…」


 衛兵たちは近付いてくるなり、各々が事の真相を興奮気味にパーシバルへ語っていく。

 どうやら今回の騒動―――もとい事件は天才魔槍士である彼が全て解決したと思っているようだった。

 天才魔槍士と共にこの真相に立ち会った人物がいた事実には、全く気付く様子もない。

 否、立ち会ったアスレイ自身、今回の件はパーシバルがいたからこそ解決出来たと認めていた。証拠品をアスレイに渡したことも、この場で起こった戦いも、全てパーシバルの助力がなければ―――アスレイ一人ではどうにもならなかった。


(あのときは意気込んでこそいたけど…結局、俺がいる必要ってあったのかな……なんて、流石に考えちゃうよな…まあ解ってはいたことだけど)


 そんな取り越し苦労だった結果にアスレイは人知れず肩を落とす。

 と、そのときだ。


「―――君がいるからこそ救われる者もいる。それを忘れるな」

「え…?」


 衛兵たちに同行するべくその場を去ろうとしていたパーシバルが、去り際にそう呟いた。

 アスレイの肩にそっと触れ残していった言葉に、アスレイは思わず顔を上げる。

 それはどういう意味か。そう尋ねようと急ぎ声を掛けようとしたものの、既にパーシバルは立ち去った後だった。

 そんな、呆然としていたアスレイの真下から、突如彼女の声が聞こえてきた。





「ははは…ホント、アンタってバカだよね」


 視線を下した先には、うつ伏せに倒れたままのレンナがいた。拘束され動けない彼女は、唯一動かせるその口で悪態をつく。


「散々首突っ込んでおきながら、何の活躍もなし。いざ解決したら手柄は天才魔槍士様に全部持ってかれて。ホント、バカ丸出しじゃん?」


 レンナの言っていることは何一つ間違っていない。

 結果だけを見てしまえばアスレイの行為など、さぞかし自分勝手で情けないものだろう。

 言い返す言葉も浮かばず、アスレイは俯いたまま黙り込む。


「つまり、アンタがどうこうしなくたって事件は解決したし、こうして首を突っ込まなければ天才魔槍士はアンタなんかに秘密を語ることもなかったでしょうね?」


 嘲るように笑い、レンナは「バカ」という単語を繰り返す。

 それは、これまで見たきたどんな彼女の姿とも違う。思わず目を背けてしまいたくなるような品のない、彼女らしくない姿。

 だからこそ。彼女が嘲笑うほどに、悪態を浴びせるほどに。アスレイはやるせない感情ばかりが募っていく。


「…確かに俺は何の活躍もしていないよ。迷惑なだけだったかもしれない…それでも。この結末に後悔はしていないし、この場にいて良かったと思っているよ」

「フン、強がり言って、これだからバカガキは―――」

「だって、此処に居たから会いたかった魔槍士に出会えた。それにレンナの暴走を止めることも出来たからさ」


 直後、レンナの口が止まる。

 彼女は驚いたような睨みつけるような、そんな複雑な顔をアスレイに向けた。


「は…?」

「俺は今でもレンナは良い人だったって信じたい。だからレンナがこれ以上罪を重ねないよう止められたのなら…それで俺が利用されるくらい、むしろ大歓迎だよ」


 そう言って微笑みかけるアスレイ。

 と、彼女は突如大声を張り上げ否定する。


「違うッ!!」


 その怒声は周辺に響き渡り、近くにいた衛兵たちが驚いてアスレイたちを見てしまう程であった。





「もしかして、あそこで拘束されているのが例の『黄昏誘う魔女』か…?」


 事件の粗方の事情を聞いていた衛兵たちは、彼女の姿を見るなり噂と正体の差に動揺を隠せず、どよめく。

 が、激しい剣幕で怒鳴る魔女に異常さと恐怖を感じた男たちは、即刻彼女を連行するべく駆けようとする。

 しかしそんな彼らの行く手を遮るようにパーシバルが立ち、その腕を伸ばして彼らを制止した。







    

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