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 その右手に召喚した愛用の槍を構え、パーシバルは迫り来る傀儡たちを睨む。

 と、敵が彼の間合いに入るよりもかなり手前の状況で、パーシバルは槍を振るった。

 横一線に薙ぎ払われる槍。当然その刃先は傀儡たちに届かず空振りとなる。

 だがその刹那。薙いだ槍の刃より烈風が放たれた。

 目に見えぬ風の刃は一瞬にして傀儡たちを通り過ぎ、その身体を切り刻んだ。

 石のように堅かったはずの傀儡たちはいとも容易く微塵に刻まれた。その破片はただの土塊として次々と地面に崩れ落ちていく。

 恐ろしくも呆気ないとしか言いようのない、たった一薙ぎで勝敗は決した。


「凄い…」


 何十といたはずの傀儡たちを一瞬にして倒したその姿に、アスレイは人知れず感嘆の言葉を呟いた。




 と、その直後だ。


「きゃあっ!!」


 アスレイたちの後方からユリの悲鳴が聞こえてきた。

 アスレイとケビンが急ぎ振り返ると、そこではまた新たな傀儡たちが地面から姿を現していた。

 傀儡たちは大地から召喚されるなり直ぐ様、ユリやアスレイ、ケビンたちを狙う。


「天下の魔槍士様に対してバカみたいに男たち全員ぶつけるわけないでしょ? 何人かは地面に戻してアスレイたちにし向けてたってわけよ」


 口角を吊り上げ強気にそう語るレンナ。

 よく見るとその中にはカズマの姿もあった。恐らくユリやアスレイの動揺を誘うべく敢えて配置したのだろうとケビンは瞬時に推察する。

 事実、ユリはカズマの姿に怯えきってしまい震えた声で「ごめんなさい」と謝罪を繰り返すのみ。アスレイも完全に回復し終えてはいないため動けないでいる。


(本来ならばこんな相手俺でも造作もないが…副作用《動けないこと》を知られたのがまずかったな)


 ケビンが冷静にそう考えている間にも傀儡たちは剣を掲げ迫り来る。

 流石に焦りを抱きアスレイはケビンの方へ視線を向けて叫んだ。


「ケビン! もう禁術中断して良いからユリさんを連れて逃げてくれ!」

「無理だ。前にも言ったが副作用で瓶の水が完全に無くなるまで動けないし止められない」

「それってつまりこのまま垂れ流しっぱなし―――」

「その言い方は良くないぞ!」


 と、二人が言い合っている間にも傀儡はケビンの背後、そしてユリの目の前に辿り着く。

 一刻を争う状況なのだが、しかし。何故かパーシバルに動揺する様子はない。


「どう? 助けようにもアンタの位置からじゃ仲間ごと傀儡たちをやっちゃうもんね。何も出来ないでしょ? ふふ…さすが私!」


 自画自賛をし、高らかと笑うレンナ。

 するとパーシバルは背後の光景―――アスレイたちの状況を一瞥することさえなく言った。


「傭兵カズマの姿が見えなくなった時点でこの状況は予測していた」


 そう言うとパーシバルはゆらりと槍を上下に回転させる。

 予想外な一言にレンナは一瞬目を丸くさせ、それから直ぐに顔を真っ赤にさせて叫んだ。


「ま、負け惜しみ…を!!」


 レンナは激高に顔を歪めながらその手を掲げ、傀儡たちに合図を送る。

 と、今度はパーシバルの足下から数人の傀儡が姿を現した。傀儡たちは出現するなりパーシバルへ目掛け剣を振りかざす。


「ケビン、後ろ…ッ!!」


 ケビンの背後で傀儡の刃がギラリと輝き、躊躇なくケビンへ振り下される。

 思わず、アスレイは悲鳴を上げた。






 だが、しかし。


「―――傀儡は既に地へと還した」


 その台詞とほぼ同時に、傀儡の男たちは一瞬にして一斉に切り刻まれる。

 それはまさに先ほどと同じ光景―――無数の烈風によって攻撃されたようであった。 

 だがその一撃より驚くべきは、その烈風はアスレイたちを一切傷つけていないということだ。

 風の刃が舞ったという感覚どころか、風の揺らめきさえもアスレイには感じ取れなかった。


「な、何が…どうなったんだ?」


 無事である自分の両手足とケビンを見つめ、アスレイは困惑顔で呟く。





「な、なんで…あたしの傀儡たちが…!」


 アスレイと同様にレンナもまた、不可能なはずの状況が打破され開いた口が塞がらないでいた。

 が、アスレイとは違い彼女はある一つの可能性に気付く。青ざめた顔でレンナはパーシバルをを睨みつけた。


「まさかまさか……二種類の魔術を、同時に発動させたってこと…!?」








「―――原理として魔術の二種類同時発動は可能と言えば可能だ。が、それには単純に言えば手練れの魔術士二人分の魔力が必要となる。だからこそ…ある意味で禁術よりも難関な御業なんだ、これは」


 何事もなかったかのように禁術を続けながら、平静な声でケビンはそう語る。

 つまり、パーシバルはあの瞬間―――槍を回転させていたあの瞬間に、傀儡を切り刻む『攻撃の烈風』とアスレイたちを守護する『鉄壁の防風』という二つの魔術を発動させていたのだ。


「いや…同時に発動、というのは少しばかり違ったか。なにせパーシバル(アイツ)はこの場に来たときからずっと『鉄壁の防風』を発動させ続けているのだからな」


 魔道具を用いているのならば並みの魔道士でも可能だろうが、魔術のみでは早々出来るものじゃない。

 そんなケビンの説明を聞き、アスレイは静かに息を吞んだ。 

 






    

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