第十話 雨の中の独白
いい子だったな・・・。
俺は麻衣を寝かしつけた後、再び傘を差して歩いている。もうこの家に戻ってくることはないだろう。頭の中ではさっきまでの麻衣とのことを考えていた。自分の娘もあんな子に育ってほしいとつくづく思う。
しかし、我ながら臭いセリフを咄嗟に思いついたものだ。自分をほめてやりたいよ。彼女の心を動かすことが出来るか心配だったが、上手くいってよかった。早百合さんに家の構造を教えてもらったことや、俺も紅茶が趣味だったことが父親だと思わせるきっかけになったのかな。
それにしても、雨の中を走って追いかけてきたのには驚かされた。彼女の紅茶にだけ睡眠薬を入れておいたのに、まさか自分を追ってくとはね・・・。それだけ父を想ってくれたのだろうか。
驚いたと言えば、アルバムだ。早百合さんの助言でアルバムを見つけるように誘導したんだが、まさか自分の顔が写っているとは思わず、本当に驚いた。きっと俺の写真と合成したんだろうけど、あそこまでやる早百合さんには感心したよ。むしろあれだけで父親だと信じさせられたんじゃないかな。
俺は早百合さんから「娘を元気付けてあげて下さい」と言われて雇われた。そのアルバイトが無事に終わり、後は給料を貰いに行くだけだ。
いつの間にか雨は止んで、雲がうっすらとし明るくなっていた。
さてそろそろ時間だ。雨も上がったことだし、神様のもとに帰りますか。早百合さんという女神様のもとに。




