■高校1年 8月第1週 迷宮5層 再び(6)
迷宮探索で日が落ちる前に0層に戻れたのは初めてだ。
伊勢崎先生のメディカルチェックを受けて簡単に報告。
素材は『迷宮大猪』の肉は学食に卸す、皮は工作室に回してひとまずなめして貰う。残りの素材は学校に販売。
行列に並ぶことなく事務手続きがすぐ終わった。
「いつもこれくらいに戻れればいいんですけどねー。」
「3層分移動となるとそうは行かないよな。」
「マップファイル見る限り距離があるから、どうしても時間がかかるわ。時間短縮は6層でなるべく戦闘せずに行くくらいしかないわ。」
「秋分の改築に期待と言いたい所やけど。その頃には9層に行きたくなっとるやろな。」
風呂や夕飯にはまだ早いので、0層の休憩所に集めて少し話すことにした。
それぞれの前には休憩所据付の自販機で買った飲み物が並ぶ。
「まずはお疲れ様でした。」
「「お疲れ様。」」
「おつかれさん。」
ペットボトルと缶ジュースで軽く乾杯を交わす。
冷たい緑茶を一口含む。迷宮内でも無理すれば作れなくは無いが、地上に戻って来た事を実感できる一口だ。
「さて、本格的な打ち上げや反省会は明日に回すとして、次はどうする?
疲労や負傷的には次の週末も迷宮探索イケると思うと思うけれど。
俺はレポートも溜まってれば夏休みの課題もあるから、体調を万全にするために休むのがいいと思う。
7層突破に挑むのなら7層の間引きを待つ意味でも、一週休んでからにしたい。
今回のように5・6層でコボルトに慣れると言う手もある。」
「5・6層で実地訓練の場合、6層からの帰りはどうするの? 3時間でボス部屋閉じるわよ。」
「日曜朝までに5層ボス部屋出口まで戻って待てばええんや。午前中くらいに誰か一回くらいは倒してくれるやろ。」
「行き当たりばったり過ぎるわ……。」
「そこは出発情報を事前チェックで何とかなるやろ。」
「私はお休みにしたいです。討伐ノルマは10月分まで達成してしまいました。金銭的にも余裕があります。
もちろん皆で迷宮探索するのは楽しいのですが、目的は達成できているのです。」
「目標か……俺も食えて勉強できてその為に迷宮探索で稼げればいいと思っていた。けれど『もっと強くなりたい』『迷宮の先に進みたい』って欲も出てきたんだよな。」
「私も剛志と同じだわ。剛志が『迷宮大猪』戦で死に掛けたけれど、私が強ければ横から魔法撃ってどうにかできたと思うのよ。
あとは上級生の戦闘を見てしまった。あの人達ならば一昨日の救援も『アンモニア水』なんて使わずに、正面から『犬面人』を撃退できてたわ。」
「ワイは普通に強うなりたいわ。最強とか学園トップとか面倒な称号は要らんけど。迷宮の先に進むには必要なものやからな。討伐ノルマとか銭とかは二の次や。
それで話を予定に戻すんやけど、『化物との会話』を優ちゃん先生に相談するまでは何とも言えんとちゃうか?」
「ああ、それがあったな。それなら無難に休みにするしかないか…。夏休みの課題消化と自主練って事でいいか?」
「賛成です。報告書も2回分残ってますからね。」
「上級生の戦闘見て試したいことも増えたから、それで良いわ。」
「相談の方、早う片付けや。」
それからは食堂に『迷宮大猪』の肉を卸したおまけで作って貰える特別料理の話になった。
何でも10kg以上卸すと、卸した材料を使う料理をリクエストに応じて作って貰えるらしい。被らないように話し合った結果、『ヒレカツ』『豚まん』『ポークジンジャー』『カツサンド(持ち帰り用)』になった。来週の予定よりこっちの方が揉めたのは言うまでもない。




