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■高校1年 8月第1週 迷宮5層 再び(5)

6層移動中に『化物への【ヒール】【回復薬】使用』と『会話』の事を秘密にする事を話した。


「知らせれば、『柴犬面人(しばコボルト)』と人間の戦闘を減らせるのではないでしょうか?」


「私が知る限り、『会話』も『ヒール』も情報がないのよ。不自然とは思わない?」


(モンスターを使った)PK(プレイヤーキラー)で、敵に『回復魔法』や『支援魔法(バフ)』かけるって方法もあるんや。今回はワイ()以外の人が関わってないからええけど、見た人がどう取るかも考えんと。」


「優ちゃん先生が一人の時に聞いてみようと思う。俺が一人でやった事にするとして、口裏合わせが必要になるな。今日中に考えて置くから喜久彦頼むな。」


「水臭いと言いたい所やが、軍隊で言う『利敵行為』とかに取られた場合の保険やな。任されたわ。」


「だったら最初に『ヒール』した私がやればいいのではないでしょうか?」


「その場合はどの道、剛志の監督責任も問われることになるわ。」


「納得いかないなら『命令』もしくは『普段命令してる対価』と考えてくれ。」


(なん)かあった場合、これが一番被害が少ないんや。解ったってや。」


まだ静華さんは不満気な顔をしてるが、こればかりは仕方ないよな。お偉いさんは責任取るのが仕事って言うし、彼女を独房に入れるとか考えたくない。罰金的な処罰以外に何されるか解らないってのも不安だ。短時間の処罰と言うことであれば『ヒール』で回復ながらのOHANASHIの可能性もある。考える程に悪い予想にエスカレートする。




「はいはい、この話は止め止め。お昼の焼肉と帰ってから何食べるか考えよう。」


「ううーっ。まるで私が食べ物の事しか考えてないみたいじゃないですかー?」


「静華はおいしい物食べて笑っていたほうが可愛いのだからいいのよ。」


「女の子は笑ってるのが一番や。せやなぁ、学食のおばちゃんに大猪肉卸したら何作って貰おか?」


「剛志は、やっぱりよく食べてるソースカツ丼かしら?」


「そうだな、(とん)テキや豚しょうが焼き、普通のトンカツ定食もいいけれどやっぱソースカツ丼だな。叉焼(チャーシュー)や煮豚も捨てがたい。」


「圧力鍋があれば、煮豚は何とか作れそうですねー。調理室にあったでしょうか?」


「でっかい豚まんや鍋物とかもええで。」


「冬だったらそれもいいなー。」


「夏にクーラーの効いた部屋で食べるんが、ええんやないか?」


「またコタツでアイス以上の無駄なことを……。」


「でも野営する時に鍋は良いかもな。茂子さん、土魔法で土鍋いけるでしょ?」


「洗面器を厚めにすれば、作れなくはないわ。」


「それなら、カセットコンロと具だけ持ち込めばできますねー。今度やりましょう。」


なんとかいつもの空気に戻った……か? 時間はまだ大丈夫。ようやく6層入口まで戻ってきた。



◇◇◇◇◇



6層入口から階段を上り5層ボス部屋に向かう。


「なんか煙くないか?」


「迷宮層の夜営で焼肉パーティは止めたほうがよさそうね。」


「ボス部屋は安全地帯やけど、他でやったら化物がえらく寄って来そうやな。」


「そういう意味で帰りの護衛だったのでしょうか?」


お裾分けのお礼が先か、焼肉パーティが先かと言われれば、お裾分けなんだが……。

まさか一酸化炭素中毒にはなってないよな?




「「「「ただいま戻りました。」」」」


煙も凄かったが、バーベキューコンロとか七厘とか道具もすげぇ。


「おう、お帰り。昼飯は食ったか?」


韮川さん?が出迎えてくれた。




「いえまだです。『犬面人(コボルト)』同士の戦闘に介入したりで、食べ損ねました。」


「『柴犬面人(しばコボルト)』にでも加勢したかな? 可愛い顔してても、あれも化物だから程ほどにね。」


「でも、おかげでかなり稼げたで。」


「ま、ま、堅い話は抜きにして()くいうちに食うてんか?」


上級生からまだ湯気を上げる紙皿が俺達に配られる。

ばら肉と野菜が少々、それと白ご飯のワンプレートだ。


「「ありがとうございます。」」


「おおきに。」


「ありがと。」


「ボス復活(リポップ)まであと1時間切ってるからな。急いで食ってくれよ。」


「おい、ちったぁ気ぃ利かせて場所空けやがれ。」


「積る話は後回しよ。私達は撤収準備っ!」


「「「おぅ!」」」


先輩方が撤収の準備、焼肉パーティの片付けを始めた。

俺達が6層見物に行ってる間に人数が増えて、今は6パーティ。うち2パーティが残って次の『迷宮大猪』に挑むそうだ。人数が増えたのもあって(みんな)空けて貰った場所に固まって座って食べ始める。


肉はバラ肉、味付けは塩コショウのみで噛み締めるたびに肉汁と脂の旨みが広がる。5mmのほどの厚さだったが、バラ肉特有の柔らかさで簡単に噛み切れる。脂多目の部位だが網焼きでしっかり脂が落してあって気にならない。ついつい飯が進み、あっという間に白飯が終わってしまった。


「すまねぇな。こっちも日帰り予定だったから、飯も野菜も分けられるのはそれだけなんだ。」


「あ、いえ。帰ったらゆっくり食べますから。それよりこんなに美味しい昼飯、ありがとうございます。」


「こっちこそ旨い肉のお裾分けありがとな。そういや迷宮猪肉は初めてだったか?」


「昨日の夜に小猪を焼いて食べてみました、でも火力不足で味見程度に食べるのが精一杯でしたよー。味は大猪の方が上な気がします。」


「私は柔らかい小猪の方が好みだわ。」


「ワイは断然大猪やな。脂もしっかり乗っててサイコーや。」


「そこは中猪も含めて好みが分かれるところだな。」




「ところで館林ちゃん? 迷宮大猪はどうやって倒したのかな?」


「ワシも気になってたぞ。」


「傷が一箇所しかなくて不思議やったんよ。」


「あれは……ただのマグレですよ。出現直後に俺に突っ込んできたので『武器強化』した木槍を眉間に突き刺しました。あとは壁まで押し切られて、大猪が自分で木槍の石突を壁にぶつけて押し込んだだけです。壁と大猪に挟まれて死に掛けたので、もう一回やれと言われてもちょっとできないです。」


あれ以上木槍の貫通力が高くても、大猪が強くても駄目だったかもしれない。




「ええーっ! できないのー? 迷宮大猪の一枚皮欲しいのに。」


「その方法はちょっと真似できないな。逃げて槍から手を離せば、その瞬間に『武器強化』が切れて槍が折られて一気に潰される。」


「かと言って『オーラ斬り』を使えば、皮の損傷が酷くなって価値が下がってしまいますね。」




あとは食事中も帰り道も、初迷宮(ダンジョン)の事とか、魔法習得状況とか根掘り葉掘り聞かれた。

こちらも戦闘を見てもらってアドバイス貰ったり、アイテム泥棒(ルート)とか聞きたいことを聞けた。余禄だが喜久彦が空気を読まず地雷を踏み抜いたおかげで、上級生が1年生目当てでここに居る事情も知った。


5層入口前で解散して先に上がらせて貰う。上級生は1年とはちょっと一緒になっただけと言うアピールの為に少し時間空けてから戻るそうだ。

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