■高校1年 8月第1週 迷宮5層(1)
夏休みと言っても学園は軟禁状態だ。平日は習慣的に訓練する事も多く、週末には迷宮に出入りする。食事は食堂が多い。いつも顔を突き合わせてる連中と普段と同じ空間にいるので休んだと言う感覚はあまりない。もっとも外の世界でも課外授業や塾に追われて休みが少ないと言う話なので、その辺は変わらないのかもしれない。
◇◇◇◇◇
7月第4の週末の迷宮入りは、というと無事に4層まで到達した。
倒せたボスは1層と3層のみだったが、安定性が増して倒れるほどの負傷がなかった点で大成功だった。
そして8月1日に登校日を迎えた。
なぜ登校日なんかあるのか? それは8月に迷宮が8層まで開放されるので説明会を行うためだ。
「佐野先生ー。学内ネットに動画上げて『勝手に見ろ』では駄目なんすかー?」
「学内ネットが構築された当初はそうだったんだけどな。どうしても見ない奴がいるから、全員集めて強制的に見せる事になった。
映像見て、説明聞いて帰るだけだ。11時には終わるから我慢してくれ。」
1~3層は緑小鬼がメインだったが、5~7層は犬面人の巣窟らしい。
弓と短剣メインの所謂スカウト型で緑小鬼に比べると知能が高く機敏という話だが……特に6層フィールドマップの『黄土犬面人』がヤバい。通称:『柴犬面人』と呼ばれるだけあって、柴犬を直立歩行にしたような感じで愛嬌溢れる顔をしている。幸いにも非好戦的なのでこちらから仕掛けない限り交戦が無い。他の色の『犬面人』は、好戦的で襲い掛かってくる。
「さて、質問はあるか?」
「弓多目って事は、盾も考えた方がいいですか?」
「そうだな、7層ボスも弓持ちだからあったほうがいいだろう。後衛も守りやすくなる。魔法で作るか持って行くかは好みの問題だ。」
「他に注意することはあらへんか?」
「5層ボス『迷宮大猪』対策で槍とかの長柄武器があったほうが闘いやすいな。あとは6層フィールドの湖で大きいマスが釣れるくらいか?」
「マスですか……串刺して塩焼きとかいいですねー。」
「『迷宮猪』もバーベキューに最適だ。2層に比べると6層は高原風の気候でキャンプに持って来いなんだが、物騒なのと匂いで『犬面人』が寄ってくるから現地調理は程ほどにな。」
姫宮さんは目を輝かせてやる気満々だ。そういや購買に折り畳みの竿だけでなく練り餌まで売ってた気がする。それより盾と槍か……。
「終わったら購買に行くけれど、静華さんも一緒に行くかい?」
「はいっ! お供しますっ!」
前に比べると表情豊かになった気がするのは気のせいだろうか? それとも俺が良く見るようになって気が付くようになっただけ?
「私も行くわよ。索敵用の双眼鏡が欲しいわ。」
「ワイも釣具を見ておこか。」
結局登校日のHRが終わり放課後になると、4人で購買に行く事になった。
それと本当についでのついでと言う形で、俺達の『初迷宮で3層分のボスを倒し、うちボス変異種も1匹倒した。』という記録は正式に参考記録になった事も通達された。
◇◇◇◇◇
俺は盾と量産品の木槍を買った。
盾はサイズは80×50cmくらい。防御力は普通の拳銃以上ライフル未満。某国警察に使われてるとかで、透明部分が多いのと軽さと安さが売りだ。欠点は魔力や気で包んでの『装備強化』ができないのと、樹脂製なので対魔法に弱いらしい。それでも、しばらく通う5~8層では問題ない。
木槍の方は150cm超えの穂先まで木製の練習用の槍。唯の棒よりは突いたり叩き斬る事ができて、投擲槍として投げやすくなっている。
出発までの数日は盾を持ったままでの棍棒の素振りと槍に慣れるのに費やした。
茂子さんは双眼鏡と防犯グッズを見て何か色々と買い込んだらしい。静華さんは調理用品だ。その後は二人は図書室などでの情報収集を中心に過ごした。
喜久彦は釣具を買った。あとは大剣の練習と釣り場のポイントを調べて回っていた。
◇◇◇◇◇
そして金曜日20時。今回はくじ引きの結果、4番目で20:30出発なことを告げられた。
「そうそう1番は引けないですよねー。」
「もうちょい早う解ると、楽なんやけどなぁ。」
「希望出発時間の1時間前まで書類受け付けて、そこからランダムに決めるから仕方ないわ。」
「遅刻が出たら早く出れるのはいいけれど、こうやって待ち続けるのは面倒だな。」
「はいはーい。ボヤかない、ボヤかない。
もうちょっとかかるから、暇ならマップファイルで敵の確認しといてね。」
伊勢崎先生に注意されて予習を始める。
●5層
茶犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長100cm前後。
短剣・槍・弓のいずれかで武装して粗悪な皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。 素材:ピアス・尻尾
迷宮小猪:小型の猪。迷宮外の同サイズの猪より弱い。
体長30cm。
肉質は柔らかく脂身が少ないが、小さいので食べる場所が少ない。
非交戦的。 素材:肉
5層ボス
迷宮大猪:も○○け姫に出てきたような大型の猪。
体長3m前後。
迷宮外に出れば確実に死者が出るレベルだが加護を受けた君たちの敵ではない。
もちろん3mの地上産猪を想定した強さよりはかなり弱い。
発達した筋肉は旨みの塊。脂も乗っている。
体当たりだけは良く見て避ける事。 素材:肉・毛皮・牙
●6層
茶犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長100cm前後。
短剣・槍・弓のいずれかで武装して粗悪な皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。 素材:ピアス・尻尾
黄土犬面人:通称、柴コボルト。柴犬の顔を持つ亜人。
身長100cm前後。
小刀・槍・弓のいずれかで武装して皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。
非交戦的。 素材:チョーカー・尻尾
白犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長120cm前後。
短剣・槍・弓のいずれかで武装して皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。
6層では数が少な目。 素材:ネックレス・尻尾
※茶・柴・白は同族ではなく戦争状態でよく交戦している。
迷宮猪:普通サイズの猪。迷宮外の同サイズの猪より弱い。
体長1mほど。
闘う場合は一撃で倒すか、体当たりを良く見て避ける事。
肉は小猪・大猪の中間と言うところ。
評価は大小普と分かれる所だが、産地が遠いのでもっぱら現地調理で消費される。
非交戦的。素材:肉・毛皮
6層ボス
酋長黄土犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長250cm前後。薙刀持ち、
立派な皮鎧を身に着けている。緑小鬼に比べると知能が高く機敏。
非交戦的。素材:鉢金・チョーカー・尻尾
護衛
黄土犬面人:通称、柴コボルト。柴犬の顔を持つ亜人。
身長100cm前後。
小刀・槍・弓のいずれかで武装して皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。
非交戦的。素材:チョーカー・尻尾
●7層
白犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長110cm前後。
短剣・槍・弓のいずれかで武装して皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。素材:ネックレス・尻尾
迷宮猪:普通サイズの猪。迷宮外の同サイズの猪より弱い。
体長1mほど。
闘う場合は一撃で倒すか、体当たりを良く見て避ける事。
肉は小猪・大猪の中間と言うところ。
評価は大小普と分かれる所だが、産地が遠いのでもっぱら現地調理で消費される。
非交戦的。素材:肉・毛皮
7層ボス
酋長白犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長250cm前後。
短剣とボウガン持ち、立派な皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。素材:ネックレス・尻尾・ボウガン
護衛
白犬面人:犬の顔を持つ亜人。
身長110cm前後。
短剣・槍・弓のいずれかで武装して皮鎧を身に着けている。
緑小鬼に比べると知能が高く機敏。素材:ネックレス・尻尾
その昔都市伝説で人の顔をした犬の『人面犬』と言うのが流行ったらしいが、その逆で犬の顔をした亜人がコボルトだ。全身に毛が生えていてケモナー大喜び。映像で見た感じではアニメの名○偵ホ○ムズのワトソン君からヒゲを取った様な感じだった。
「何度見ても、緑小鬼が犬面人に変わっただけだよな。」
「緑小鬼同様に犬面人もゲームでは雑魚敵や。特撮物で言う戦闘員みたいなもんやからなぁ。」
「可愛いと思いません? 特に柴コボルト! 飼ったりできないのかな?」
「犬としての特性にも気をつけた方が良いわよ。」
この時俺はその意味に気が付いていなかった。




