表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/58

■高校1年 7月第2~4週 初ダンジョン(17)

ダンジョンから帰ってきて地上での食事と風呂とベッドに恋焦がれているものの、リーダーの俺にはまだやることが残っていた。素材を買取に引き渡す所だけは3人に付き合ってもらったが、解散することにした。


「なぁ、手続き付き合わんでもええのんか?」


「ああ残りは鑑定と俺が自筆しないと駄目な書類と、例のお見舞いだけだ。お見舞いだけでも喜久彦代わってくれるか?」


「それだけは堪忍な。」


「だったら代わりに、俺の荷物(これ) を部屋に入れておいてくれ。」


「任されたで。」


「それじゃあ仕方ないですね。ところで明日にでも打ち上げとかやりませんか?」


「昼以降ならぜひ。静華さんと茂子さんに任せるよ。」


「わかったわ。準備できたらメールで呼び出す。」


「それじゃ。みんなおつかれさま。」


「「「おつかれ(さまでした。)」」」


「おやすみ。」




大剣と水晶球付き杖の鑑定用のタグが二枚、ボス討伐の有無と出発帰還時間を書いた簡易版の報告書(レポート)……などなど、日曜22時制限時間前の帰還ラッシュに巻き込まれ窓口に並ばされて1時間ほどかかってしまった。

さらに例の回復薬を『浄化』で印を消した上3個足して優ちゃん先生に言付けるのに22時過ぎまで待つことに。

3人を先に帰して大正解だ。

手続きを終えた俺は何も食べずに自室にもどり『浄化』だけかけて、着替えもせずにベッドに突っ伏した。



◇◇◇◇◇



翌日、昼近くに起きると喜久彦から悪いニュースが届いた。

迷宮(ダンジョン)で4層到達というのはレアらしいのだが、3層分のボスを全部倒してと言うのはさらにレアで、ボス変異種(レアボス)まで倒したと言うのは『学園史上初』だと言う。


「ええニュースとちゃうんか?」


「ああ、現実(リアル) で妬みと悪意の『仄暗い水の底』に浸かる事になってしまった。」


「なんでや?」


「喜久彦もリーダー決めの時に言ったろ『矢面に立ちたくない』って。追試組が今週末以降に初迷宮(ダンジョン)で入る。そこで『3層分のボスを全部倒して、ボス変異種(レアボス)を2体以上倒す』なんて記録更新でもしない限り、俺達は1年の筆頭パーティになってしまう。」


「学年上位5位でも厄介なのに、1位とかあかん。」


「そこは『理由はどうあれ、出かけに優ちゃん先生の支援魔法を貰ったから』と言い逃れしてれば角も立たない。

運がよければ公式記録から抹消か……参考記録扱いくらいにできるかもしれない。

ただこれよりもっと厄介な事がある。」


「なんやその厄介事って?」


「『夜営訓練』が終わった後からパーティが解散変更できるようになっている。

今は夏休みで顔を合わせず逃げられるけれど、二学期入ったらそうも行かない。」


『夜営訓練』で追試になったパーティは責任押し付け合いの仲間割れの可能性がある。さらにこれから夏休み中の迷宮(ダンジョン)入りが上手く行かなければ、もっと酷いことになるだろう。


「パーティは4~6人や。なるほど確かにうちの残り2枠に入ろうと売り込みが殺到したり、逆に引き抜き勧誘も起こるんやろな。」


「しかも断れば、少なからず恨まれる。普通科の学園生活にまで支障が出るかもしれない。」




「で、それを二人に話すんか?」


「折角の打ち上げに水を射したくないから今日は止めとくよ。豹変して近づいて来る奴とかなしで、杞憂に終わればそれで済む。」


「それにしても、タケちゃんは苦労性やな。」


右手を突き出して見せる。


「事故の前後で世界が変わって痛い目に合ってるからな。慎重にもなるさ。」


俺が二日目に倒れた時以上のもっと酷い失敗をやらかしたらどうなるか不安と言う、部分は言葉にせず飲み込んだ。




喜久彦に打ち上げの呼び出しがあったら遅れると伝言を頼んで、大浴場に行き4日ぶりの風呂に入った。『浄化』で清潔は保たれているとは言え気分の問題だ。文字通りの迷宮(ダンジョン)の垢を落とし洗い流す。熱めの湯の中で手足を伸ばすのは凝り固まった筋肉を解すようで心地よい。最後に水シャワーで締る。風呂から上がり、私服に着替えてやっと人心地ついた。




部屋に戻ると、喜久彦の置手紙があった。

『打ち上げ会場は食堂、先に行っている。11:45』

喜久彦が出たのは5分前か、急ごう。駆け出したい気持ちを抑えて食堂に向かった。



◇◇◇◇◇



それからの2週間は飛ぶように過ぎた。


そして7月の第4金曜日20時、俺達は再び迷宮(ダンジョン)0階の迷宮(ダンジョン)入口に立っていた。


「忘れ物はないよな。」


「武器も新調したし、準備OKや。」


喜久彦は片手両手持ち両用(バスタードソード)な大振りの木剣を持って笑う。

酋長緑小鬼(ゴブリンチーフ)の大剣』はと言うと、内部に細かい亀裂が入っていて修復不可の鑑定結果だった。恐らく最後の挟撃が原因だろう。今は喜久彦が寮の自室に飾っている。


「問題ないわ。」


茂子さんも水晶球の杖を大切そうに抱えてる。


「私も大丈夫です。」


静華さんはサイドポーチの回復薬を確認して答えた。


「伊勢崎先生、準備完了、出発できます。」


「はいはーい。今回は佐野先生の邪魔がありません。

仕切り直しの初迷宮(ダンジョン)だと思ってください。

できればまた3層分のボス全部倒して来てね。」


「無茶言わんといてください。ただでさえ混戦で取り合いなんやから。」


既に1年生の『夜営訓練』の追試は全員終わっている。

今日明日で1年全部のパーティが迷宮(ダンジョン)に入る予定だ。


「でも狙えなくはないわ。」


「そうですね。3層ボスだけでも倒して、ドロップ杖が欲しいです。」


「さっきの言葉とは矛盾するけれど、館林君は病み上がりでもあるから無茶せず慎重にね。」


「はいっ。」


「それじゃ「「「行ってきます。」」」」


「行ってらっしゃい。」


伊勢崎先生に見送られて俺達は迷宮(ダンジョン)へと出発した。




「……吹っ切れた、かな?結果的にはおーらいだね。」


背中を見送る伊勢崎先生は小さくつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ