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■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(16)

ボス部屋での剥ぎ取りを終えて4層への階段を下りる。

時間は20時20分。手続きに時間かかるから、学食の21時ラストオーダーには間に合わないか……。


「耳輪とか仮面とか、剥ぎ取りで欲しいものあるか?」


「わいは『酋長緑小鬼(ゴブリンチーフ)の大剣』貰うからええで。」


「私はないですね。」


「私もいい。仮面や耳輪が攻撃魔法強化でも、あれを着けるのはちょっと遠慮したいわ。」


「杖はひとまず鑑定に出して保留でいいか? 喜久彦の大剣も、まだ未鑑定だからまとめて出すぞ。」


「わかった、でももうちょっと持たせてくれや。」


「あとは素材を学園に売って均等割りだな。これは査定に時間かかるから、それまでに使った回復薬を経費扱いにするので数を申請してくれ。」


この辺はMMORPGでのパーティの清算のノリだ。リアルで清算することになるとは思わなかった。




「そんなのいいのに……。」


「他のメンバーに使う場合……今回で言うなら静華さんが俺に使った分とかあるからな。」


「こういう部分をしっかりするのは、金銭トラブルを避けて長く付き合うコツなのよ。」


「そう言うことならお願いします。」


「喜久彦も頼むな。」


「……。」


まだ(おとこ)印の飲まされたのを根に持ってるのか。


「わかった、喜久彦には残ってる漢印(やつ)を物納で。」


「なんでや!」


「嫌ならメモでいいから数書いて出してくれ。

……そうなると問題はこいつをどうするか、だな。」


お見舞いとしてチーム薔○族(仮)から貰った回復薬残り9本。




「彼らは死に戻りしてるはずなので見舞いとして渡すか、後は使ったことにしてダンジョンに消化させるくらいしか無さそうですね。」


「どっちも禍根を残しそうだわ。」


「……MP回復3本足して、4人で3本ずつお見舞いって事にしとくか。」


「しゃーない。それでええわ。」


「伊勢崎先生に頼めば顔合わせずに済むはずです。そうしましょ。」


届けようにも名前は知らない。金曜に迷宮(ダンジョン)入りした1年の別パーティって言えば、優ちゃん先生なら解ってくれるだろう。




話している間に、4層についた。


「事前に知ってはいたけれど、狭いな。」


「ほんと、何も無いわね。」


壁際に転送魔法陣と飲用可能な噴水があるだけで、4層入口から5層への出口が見えるくらいに狭い。


「こう言うんは安全地帯として活用できる場所に欲しいわ。」


「見るものも無いですし、帰りましょう。」


「ああ。」


転送魔法陣に全員乗り込んだのを確認して、魔力を込めて壁の脱出ボタンを押す。

一瞬の浮遊感が終わり、周囲の景色が変わった事で転送が終わったのに気付いた。


「さぁ、もう一踏ん張りだ。」




最後の転送魔法陣から0層への階段もこれから何するかの話で持ちきりだった。

そして20時30分0階に帰還を果たした。




優ちゃん先生が迎えてくれる。


「おかえりなさい。」


「「「「ただいま戻りました。」」」」


「初迷宮(ダンジョン)はどうでしたか?」


「思った以上に辛かったですね。」


「MP管理が大変だったわ。」


「数の暴力がきっついわー。」


「でも楽しかったですよ。」


「詳細は報告書(レポート)で聞きます、提出期限は1週間ね。

それからちょっとメディカルチェックしますよ。まず姫宮ちゃんから。」


優ちゃん先生が静華に手をかざすと、静華を囲むように2つの緑色の光のリングが現れた。

上下に激しく往復してスキャンする。


「姫宮ちゃんは、魔法回路に負荷かけた形跡があるだけで正常だね。2、3日休めば元に戻るので、その間は自主練も休んでね。」


「はい。」


「次は寺前ちゃんね。」


同じように光のリングでスキャンする。


「んー。寺前ちゃんは魔法回路オーバーヒート一歩手前ってところだね。

3層ボス戦で苦戦したかな? 姫宮ちゃんより状況は良くないけれど。これも休めば戻るので、1週間は休むように。」


「ええ、ボス変異種(レアボス)だった上に護衛も12匹で多かったわ。」


さらに喜久彦。


「杉戸君は細かい負傷と火傷だけだね。


ちょっち血が足りてないので鉄分大目でしっかり食べること。」


最後は俺。

「館林君は……無茶しすぎ。魔法回路に過負荷かけた形跡もあるし、血も全然足りてないわ。1週間は絶対安静ね。さらにもう一週間は休まないと駄目よ。」


「それって、やっぱり……。」


「ええ、2週間迷宮(ダンジョン)出禁です。

しっかり養生すること。先生ここで見張ってますからね。」


つまり同じパーティの他の3人も連座で迷宮(ダンジョン)に入れない事になる。


「そりゃないわー。」


「討伐ノルマは達成してるから無理に入らなくていいのよ。」


「そうですよ、杉戸君だけ魔法を使ったり体動かす制限付けられてないんですよ?

いっぱい訓練できるじゃないですかー。」


「俺は清算とか事後処理の事務仕事あるから1週間はいいけれど、2週間動けないのは辛いな。

夏休みの課題やるくらいしか思いつかない。」


金のかからない暇つぶしと言うと夏休みの課題とネットゲームか?

プールもあるけれど金はかかるしレジャープールではなく、ジムのガチ水泳だからなぁ。


「はいはーい。あとが(つか)えてるから移動しましょうねー。」




喜久彦たちは移動を始めたが、俺は一人残った。


「すいません先生、一つ聞きたいことがあるのですが?」


「なにかなー?」


「金曜日に俺達の前に出発した1年生のパーティで、男5人のパーティなんですが死に戻ってますか?」


「ええ、キミ達が戻ってくる1時間前くらいに……残念ながら。」


「そうですか、やっぱり……。」


「ちなみに、他にも1パーティが3層ボス変異種(レアボス)の犠牲になってるわ。

キミ達が倒したのはボス変異種(レアボス)で1.5倍、人間を何人も倒して進化した異名持ち(ネームド)でさらに2倍。合わせて通常の3倍は強かったのよ。だからそれを倒して戦闘不能者無しで帰って来た事は誇っていいわ。」


「はい。」


やっぱりあれ訓練なし加護無しじゃ絶対倒せない奴なのか。


「それじゃ素材売却とかの事務手続きが色々残ってるけど、チャッチャと片付けてゆーっくり休んでね。」


「ありがとうございます。それでは。」


「またねー。」




「おーい、タケ早く来いよー。」


喜久彦だけでなく静華も茂子もこっちを向いて待ってくれた。


「すぐ行く。」


走ろうかと思ったが、絶対安静を思い出して少し早歩きで追いかけることにした。

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