■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(12)
「どないや調子は?」
「回復薬飲んでマシになったけれど、血やMPが足りてなくてダルさは相変わらずだ。喜久彦は?」
「細かい傷ばかりや、こんなん唾付けときゃ治る。って言いたいところやけど『ヒール』してもらわなヤバかったわ。わいも真面目に『ヒール』覚えにいこかな。」
「女子二人も休ませないと、MP周りがキツそうだな。」
「まだ大丈夫よ。」
「私も平気です。」
「今20時前やろ。いっそ明日12時まで休んだらどうや? これなら交代で8時間寝れる。ここは昼夜変化無しでこの明るさやから先発も後発も関係ないで。」
「それで行こう。明日は3層一気に抜ける。8時間寝ても俺もキクも明日昼までに本調子まで回復しないだろう。そうなると二人の魔法が頼りだ。だがらゆっくり休んで欲しい。」
「そこまで言うなら、仕方ないです。」
「なら男子二人もしっかり食べてゆっくり休んでキッチリ快調することね。」
各自持ち寄りで夕飯にした。俺は回復薬二本と気持ち多めに食事を取った。よく考えたら朝にコーヒー飲んでエナジーバー一本食べて、夕方にもう一本食べただけだ、そりゃ腹も空く。
グーパーで夜営組みを決め。今回は姫宮さんとで先行になった。
「後攻と代わるか?」
「いや俺は昼間寝てたから、先に休んでくれ。」
「わかったわ。静華も見張りお願い。」
「はいっ! 任せてください。」
◇◇◇◇◇
袋小路の隅にテントを設置したおかげで死角をかなり潰せた。
姫宮さんに頼んでテントから離れた場所に『灯火』を打ち上げて貰い視界も確保した。
1日目もこうだったら本当に楽で、あんな失態犯さなかったのに。
周囲を警戒してると結構な確率で姫宮さんと目が合う。気まずい……。
「あの……良かったらどうぞ? 甘い物はMP回復にもいいんですよ。」
紙コップに入れられたココアが甘い香りの湯気を上げる。何かやってるとは思ったがお湯沸かしていたのか。
今思えば、今朝茂子さんがココア勧めて来たのも同じ理由だったのかもしれないな。
「ありがとう。」
「いえいえー。朝は本当にごめんなさい。それと色々と気を使ってくれて、ありがとう。」
「色々?」
「朝のこととか、夕方気が付いたときとか、さっきの夜営の時間決めとかです。」
「そんなつもりは全然無い。朝だって良いタイミングで倒してくれて『ヒール』もかけ続けてくれた。
意識は朦朧としてて反応はできなかったけれど覚えてる。夕方は担架引いてくれて、夜の戦闘も攻撃魔法撃って喜久彦に『ヒール』かけて助けてくれた。」
一息ついてココアを口に含んだ。ミルク多目の優しい味で嫌いではない。
「でも……。」
「それに俺が気絶してる間も何回か戦闘しただろう?」
「はい。5体前後を3回ですね。」
「なら、尚更夜は休まなきゃMP回復しないと。改めて『守ってくれてありがとう。』」
「それでは私の気持ちが……。」
「だったら、静華さんって名前で呼んでいいか?」
良い方法が浮かばない、完全に喜久彦のまねだ。
「それじゃむしろご褒美じゃないですかっ!」
「前から茂子さんと優ちゃん先生が名前なのに、姫宮さんだけ苗字呼びなのが気になっていたんだ。
代わりに俺の方も名前でいい。」
「呼び捨ては恥ずかしいので剛志さん? 剛志君?」
「ああ、そんな感じで……!!」
『頼む』と言いかけたときに異変に気づいた。
「??。」
「黒い靄が3つ。距離15m。この数なら起こさなくて大丈夫だな。」
「もう、折角……だったのに。」
「出現と常時に攻撃でいいか?」
「はいっ。剛志……君っ。」
俺はココアを飲み干し、急いでテントを離れ化物出現中の黒い靄の側面――壁側に回りこんで棍棒を構えて待機した。
これなら射線の心配はない。十字砲火って奴だ。
姫宮さんの方に目をやると頷いてくれた。準備OKのサインだろう。既に光の魔弾を浮かべ発射体制に入っている。
黒い靄が実体化した瞬間に、俺は駆け寄ってフォアハンドで緑小鬼の首をへし折った。




