■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(11)
「喜久彦、遅いな。」
偵察に飛び出してから10分が経過している。マップファイルで見ると往復で400m、いくらなんでもおかしい。
「これはさすがに様子見に行かないと不味いかも。」
「行きましょう、館林君は……ここで待ってて。」
「魔法は駄目だが、体は動く。こんな時に怪我だ病気だって言ってる場合じゃないだろ。」
「話してる時間が惜しいわ。準備して行くわよ。」
棍棒と回復薬入りのサイドボーチを身につけ。ドロップの大剣を杖にして進む。
100mほど進むと交戦音が聞こえてきた。喜久彦の声も聞こえる……曲がり角の先だ。
「私が前衛で出ます。茂子ちゃんは援護攻撃を。館林君は後方警戒をお願いします。」
「それじゃ駄目だ。俺が前に出る。姫宮さんは唯一『ヒール』使えるんだ。温存して喜久彦も助けてやってくれ。」
「それしかないわね。最初に飛び出すと同時に矢か弾系攻撃魔法で不意打ち速射攻撃。その後は剛志が前衛。私と静華で支援攻撃。いいわね?」
「了解。」
「はいっ。」
「いくわよ、3、2、1、今。」
「『炎の矢!』」
「『力の弾!』」
立っている緑小鬼が5。床には倒れてる緑小鬼が3、折れた木剣が1本。それぞれの魔弾が緑小鬼を貫き倒した。残りは3。仲間が倒されたのを見て、槍緑小鬼の2匹が槍を構えてこちらに向かってくる。
「任せろ。」
大剣を両手持ちで左に構えて駆け出す。
「ここだぁぁぁぁ!」
左下から右中段への一閃、狙うは槍の柄だ。二本とも穂先を斬り飛ばし槍を棒切れに変える。
直に、もう一歩踏み込んで右上から左下に振り下ろした。
「「ギギャー。」」
一匹目は首を飛ばしたが、二匹目は刃の侵入角度が悪かったのか腕とアバラを折りつつ背骨で止まった。
紫色の返り血を浴びる。当てる角度が難しい、使えば切れ味は落ちる。これだから剣は……。
「キク! まだ生きてるか?」
「おう、こいつは俺の獲物や。手ぇ出すな。」
木剣は折れて足元に転がり、持っている剣鉈も先がちょっと欠けてる。
「そんなの知らないわ。『石礫 モード:WT』」
大タライ(WashTub)が放物線で飛んだ!はるか頭上で大暴投か!?と思ったが慣性の法則を無視して垂直落下して剣緑小鬼の頭を直撃! 頭がタライを突き抜けエリザベスカラー状態の緑小鬼はゆっくりと倒れた。
「ほら役に立った。」
「なんでや! 甚振ってくれた礼もできてないのに。」
「これ以上負傷者を増やさない為ですよ。『浄化』……『ヒール!』」
追いついた姫宮さんが喜久彦に駆け寄って治療を始める。
「俺の時より緑小鬼多いじゃないか、頑張ったな。剣の代わりは、汚してしまったがこれ使ったらいい。」
酋長緑小鬼の大剣を渡す。
「荷物取りに行くわ。剛志はまだ動けるよね?」
「ああ、ちょっと行ってくる。」
3層入口まで戻る事にした。
◇◇◇◇◇
俺は担架に4人分の荷物を載せて引いている。
茂子さんは後方で殿中だ。この先200mは横湧きが起きなければ敵はいない。
「これ便利だな。」
「問題は階段ね。階段の上り下りが何とかなるなら荷車持込ってのも悪くないわ。」
「車椅子を階段で上げ下げする奴は、確かキャタピラだったな。」
「ハーフトラック方式にして水に浮くようにすれば階段も沼地でも安全そうだわ。」
「そこまで行くと動力付けたくなるなー。」
「電子機器はアウトでも、モーターやバッテリーは動くのよ。」
「やめとこう、あんまり金かけて擱座でもしたら目も当てられない。」
「そうね。無動力で積載も150kgくらいで進めるわ。」
そんな冗談なのか本気なのか解らない話をしながら合流。
喜久彦と姫宮さんは既に治療と素材剥ぎ取りを終えていて、野営の準備を始めることになった。




