■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(9)
ゴトゴト言う振動で目が覚めた。
空は夕日で赤く染まっている。
「ここは……?」
「まだ2層や、もうすぐ3層の階段やで。」
荷物を二つと見慣れない大剣を担ぐ喜久彦が答える。
「気が付いて良かった……ホントに。」
頭の上の方から姫宮さん声が聞こえる。
担架に固定されている上に体のだるさで起き上がれない。
「出血とMP切れで昏倒してたのよ。まだ動かないで。」
茂子さんも荷物を二つ背負ってる。
「茂子ちゃんがテントと予備のジャージで担架作ったんですよ。」
視線を足元やると、茶色の車輪が回っているのが見えた。
「車輪は洗面器と同じ方法で作ったわ。」
「あれから……何があった?」
そうだ何故すぐに援護に来なかった?
「タケちゃんが吶喊したあとな……横沸きで緑小鬼4匹とフィールドボスのでっかい緑小鬼が沸いてん。」
「仕方なかったんです。あれを引き連れて行く訳には……。」
「だからフィールドボス……酋長緑小鬼の殲滅を優先したわ。これは私の提案。急いだのだけど援護遅くなってごめんなさい。」
「『暗黒霧』を連発したん見て、何か緊急事態が起きたのは解ってたんや。でも援護しようにも黒い霧が邪魔でな。」
「霧の中に館林君が倒れてるって考えてたの、だから魔法が撃てなかった。本当にごめんなさい。」
「わかった。今回は俺のミスだ。魔法の選択も間違ってたし回復薬もキャンプに忘れた。」
「でも私がすぐに起きてたら……。」
「いいんだ。矢が靴とジャージの隙間に当ったり、ボス横湧きは確かに運がなかった。とは言え、今までがうまく行き過ぎて俺も増長してた。」
「すまん、わいもフォローしたると大口叩いたのにな。」
「フィールドボスを3分くらいで殲滅したんだろ? すごい無茶したな。おかげでこうやって死に戻りせずに済んでる。それでいいじゃないか?」
「それじゃ、私達が納得できないわ。」
「むしろこうやってお荷物になってるのに置き去りにしなくて感謝してる。」
「やったら今は寝て回復しとき。3層入ってすぐの袋小路でキャンプ張る。見張りもわいらで回すから明日は動けるようになっとくれや。」
「ああ、任せた。着いたら起こしてくれ。」
大剣は2層ボス『酋長緑小鬼』のドロップ。他は剥ぎ取りも含めて諦めました。
MP枯渇は昏倒するまで我慢するのが一番不味いのですが、その次はトイレの後始末に必要な『浄化』すらしばらく使えないのがネックです。




