■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(8)
剣緑小鬼2匹との攻防は、決定打に欠ける打ち合いになっていた。
元々は加護の『身体能力強化』で俺の方が圧倒的に有利。しかし左足首の負傷で機動力が殺された上に、足の踏ん張りが効かず力が入らない。動き回ったのもあって痛みも酷くなり踏み込みや蹴りも難しい。棍棒から腕力だけで放つ振りと突きでは緑小鬼に致命傷が入らない。一方剣緑小鬼の持つ剣では、ジャージの上から突いたり斬り付けても俺には軽い打撲ダメージにしかならない。
こちらが有利に見えるが見通しは真っ暗だ。『暗黒霧』の効果時間はもうすぐ切れる。それで無傷の緑小鬼が最低二匹追加されれば集中攻撃に耐えられない。味方の増援は黒い霧の向こう側なのか、まだ視界にすら入ってない。
そして無常にも剣緑小鬼を倒せないまま、時間切れで黒い霧が晴れる。
目の前で剣を振るう剣緑小鬼が2匹。
霧があった場所にまだ倒れている緑小鬼が2匹。無事な杖緑小鬼が2匹、弓緑小鬼が1匹。
その向こうに紫の返り血を浴びた喜久彦、その後方に魔弾を浮かべ魔法発射待機状態の茂子さんと姫宮さん。
「タケ! 伏せろ!!!」
風魔法で増幅したのか喜久彦の叫び声が大音量で響く。緑小鬼全員の注意が喜久彦に向いた。その隙に俺は倒れるように左へダイブ。発射される二人の攻撃魔法。
転がって剣緑小鬼から距離を取り射線を外し『フォースシールド』を構えて流れ弾と衝撃に備える。
姫宮さんの光の矢4発が弾が間近の剣緑小鬼が2匹の頭部と胸を射抜き、茂子さんの炎弾5発が逃げ出す緑小鬼にも追尾して無慈悲な爆炎を撒き散らした。
◇◇◇◇◇
朦朧とした意識の中声が聞こえる。
「タケ! タケ! くそっ、間に合わんかったかっ!!」
「落ち着いて、出血とMP切れで動けないだけよ。」
「先に体力とMPの回復薬を体にかけます。茂子ちゃんは矢を抜く準備をお願い。」
温い液体が二回にかけられるのを感じた。平行して左足の靴が脱がされ靴下が切られ外気に触れる。
「『浄化』、矢を抜くわよ。」
「『ヒール!』」
左足から矢が抜かれ痛みが走る、すぐに回復魔法特有のじんわりとした暖かさに変わる。
「ワイは何したらええ?」
「キャンプ撤収と荷物をここまでお願い。レイドボスとここの剥ぎ取りは、間に合わないから諦めて。」
「……。」
「姫宮さんは『ヒール』継続中で動けない。私と喜久彦では喜久彦の方が足が速くて腕力もあるわ。浄化かけてあげるから。『浄化』。」
「しゃーないなー。」
そこで意識が完全に途絶えた。




