■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(5)
「いょう、思ったより遅かったな。」
夜営予定地の袋小路は、1年生の先発のパーティに占有されていた。
「色々と不備が起きて出発が遅れただけだ。今日はここで夜営かい?」
「そうだ。」
俺達に気づいて、テントの中からにやけた顔を出す。5人パーティそれも全員男か。
「そうか仕方ないな。ちなみにボスは殺ったのか?」
「まだだ、どうせなら万全を期したい。朝一でやるさ。」
「色々聞いて悪かったな。俺達は他を探して夜営するよ。」
「こっちこそ悪いな。」
「お互い様ってことや。」
通路を曲がり、声が届かない距離まで引き返す。
「予定が狂ったわね。」
「もっと先行してるかと思ってました。」
「今までの戦闘で怪我はしてないと思うが、眠気、疲労、MPなどはどうかな? ボス行けそうか?」
「問題ないわ。」
「わいも昼寝してたから、超余裕や。」
「私も大丈夫です。」
「それじゃボスに行く。確かボス部屋と階段の間に怪物の出ない小部屋がある。ボス戦後負傷やMP切れで移動が難しい場合、そこで夜営しよう。」
「なんやそんな便利なとこあるなら、最初からそこでええやん。」
「あいつらがそっちを使ってるか、その先に進んでると見てたのよ。」
「必ず通る道で、普段は人通りも多いからセオリーからは外れる。最悪の事態を考えるとなるべくここは使いたくない。」
「「「最悪の事態……?」」」
「言いづらい事だが相手は5人で全員男、こっちは4人で人数が少ない。おまけに負傷やMP切れで圧倒的有利と相手に解ったら、襲ってくる可能性がある。」
頬を染めてる奴がいた、低い確率ではないだろう。
「外じゃ強姦は確実に何年か食らうだろうが、|ここ(迷宮)はどうなるか解らんってことやな。PKはカウントされるって話だが、その手前は何所までセーフか聞いとくんやったな。」
ゲームの場合、殺すまでは誤射扱いだったり、一発当てた時点でアウトだったり色々だ。
「監視カメラも無い。迷宮のシステム、『浄化』や回復魔法を悪用すれば証拠隠滅されて科学的に立証するのは無理だろう。申告するにも弱みを握られれば難しくなる。
……自分でも考えすぎと思う。でも俺は人の悪意や豹変を見てきたし、特にテントに居たニヤついた連中を信じる気にはなれない。」
「「……。」」
「かなり戻ることになるけど、別の袋小路で夜営するって手もあるで。」
「悪いけれど、姫宮さんと茂子さんの二人で決めてくれないか?」
「……ボスは何でしたでしょうか?」
「緑小鬼の上位種が人数分。武器や攻撃方法はこっちに合わせてくる。」
マップファイルを確認しながら答える。
「可能なら突破してフィールド階層に逃げるのが一番ね。初見殺しや変異種、それどフィールド階層の夜間移動が怖いけれど。」
「ボスを突破してフィールド階層に逃げましょう。『応急手当』や私の『ヒール』もあります。防具性能で無敵モードって佐野先生言ってたじゃないですか。補助魔法でも守ります。」
「うちらも覚悟決めるか。」
「すまん。何があっても二人は絶対守る。もしもの時は俺を見捨ててでも逃げてくれ。」
ボス部屋は青い扉で閉ざされてる。しかし手を触れるとズズズズと石を擦る音を立てて観音開きした。
「行くぞ。」
「ちょっと待ってください。『プロテクション!』『ブレッシング!』」
「わいも何かあったかな。『風加速!』」
「気休め程度だが『力強化』『水耐性!』」
「じゃあ私も『炎耐性!』」
支援魔法をかけあって突入。部屋は20m四方で壁の松明でかなり明るい。高さは10mで通路と一緒だ。
最初の一人が入場して120秒、ボス部屋入口が閉ざされ黒い靄からボスが出現する。
緑小鬼ではあるが二回り大きく1m以上ある。しかも腰布一枚ではない。ローブと杖が2人、皮鎧を着たのが2人。皮鎧の武器はそれぞれ剣とメイス。色からすると銅製のようだ。
「鎧は足止めして、杖から潰そう!」
「せやね。」
目の前にいる棍棒緑小鬼にけん制から武器を強く打って弾く。その隙に膝を棍棒で殴り皿を割って転倒させた。喜久彦の方も剣緑小鬼の足に剣鉈で斬り付けて足止めに成功したようだ。
動けない緑小鬼を放置して、姫宮さんと茂子が小魔法を撃ち合ってる杖緑小鬼二匹の横に回りこむ。それぞれ走る勢いをこめた一撃を首にお見舞いした。
「「あと二つ。」」
転倒した剣緑小鬼がモゾモゾ起き上がったが、既に手遅れである。
「……『石柱 !』」
「『フォースエッジ!』」
茂子さんが掛け声と共に地面に杖を突くと剣緑小鬼の足元から石の杭が現れモズの速贄のように貫く。
一方姫宮さんは、2匹の杖緑小鬼の首が折れるのを確認してから、自分から近い方の棍棒緑小鬼に駆け寄り肉薄。杖の先端から生えた力属性の刃でゴブリンの鎧ごと胸を刺し貫いた。
「MPが減った以外は、何とか無事だったな。」
「案ずるより生むが安し。」
「変異種引いたら強さ1.5倍だから、杖緑小鬼に苦戦してたかもしれませんね。」
「武器も防具もサイズ違いすぎて使えそうも無い。邪魔やし置いてくしかないで。」
「四○元ポ○ットが欲しいわ。」
「仕方ない、剥ぎ取りだけして先を急ごう。」




