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■高校1年 7月第2週 初ダンジョン(2)

佐野先生が去った後、気恥ずかしくなって食堂から離脱した。

部屋に戻り、水で顔を洗い、顔と頭をを冷やす。タオルで拭いて、冷蔵庫の缶コーヒーをゆっくりと飲んだ。



時間はやっと17時。

それにしても俺は姫宮さんと茂子に一体どんな顔して合えばいいんだ? 好きか嫌いかって言えば好きだ。女性の好感度で言えば、この二人と優ちゃん先生がぶっちぎりの世界レコードでメダル台を占めるだろう。話す機会も多ければ訓練で一緒になることも多い。というか他の女性との繋がりが希薄すぎて、大家のおばちゃんという例外を除けば、普通科授業の女教師でさえ普通/無関心にカテゴライズされている。


そもそも好きだからってどうすりゃいいんだ?

友人関係すら無くすリスクを犯して、告白するのか?

両思いだったら? キスして抱きしめてその先は? リビドーに任せて突っ走るのか?

話して楽しい、一緒に居たいのままでは駄目なのか?


それと喜久彦だ。あいつはあんな調子だから顔も広い。数あるグループから姫宮さんと茂子を俺に紹介したのは、喜久彦の方でもどちらかに好意を持っていると考えるのが道理だろう。

そうなると告白するリスクが跳ね上がる。

もし喜久彦と同じ()好きになっていたら? 中世よろしく決闘でもして奪い合うのか?


多分こんな時は優ちゃん先生に相談するのがベストだろう。しかし今は地下0階に治療要員として詰める準備中のはずだ。


おまけに『加護なしの普通の高校生でも行ける』との煽りと、初見の二泊三日で4層まで行きたいと言う欲と、今更ながら『酷いミスをすればやられる』という迷宮(ダンジョン)への恐怖も出てきた。


もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。



◇◇◇◇◇



「タケー、タケちゃんー?」


「んあ、なんだキクか。」


考えているうちに寝落ちてたらしい。


「もう19時30分やで、そろそろ0階行こか……って言いたいところやけど。なんやさっきとはえらい違うな。」


「なんかもう……いっぱいいっぱいで、どうしたらいいか解らん。」


「他にも色々あるんやろうけど、メインは静華ちゃんと茂子ちゃんの事やな……あの脳筋馬鹿、余計なことしくさって。」


「……。」


「なぁ、それはここで座っていれば解決することなんか?」


「いや、駄目だろうな。」


「だったら片付けられる物から、迷宮(ダンジョン)の事から片そうやないか。大丈夫やって、お前がしくっても、わいがフォローしたる。初迷宮(ダンジョン)で4層到着ってのは滅多に無いらしいから、ええとこ見せれば一石二鳥や。」


「ああ。」


やっぱこいつには敵わないよな……。

俺はやっと重い腰を上げて、地下0階に向かうことにした。




階段で寮の一階ロビーに降りた。


「荷物はもう預けてあるんやろ。」


「夕方食堂に行く前に0階で預けてある。」


「ほなら、ちょぉ先行っててくれへん?」


寮のコンビニを指す。


「一緒に行こうか?」


「すぐ追いつくから行っててくれや。」


「よく解らないが先行ってるぞ。」



◇◇◇◇◇



重い足取りで迷宮(ダンジョン)入口のある、地下練習場の迷宮(ダンジョン)0階に向かう。


「おーい。」


キクの声だ、全力疾走に近い速さで追いついた。




「はぁはぁ、思ったより進んでどらんな。時間もあるしどうせ食ってないんやろ? 歩きながら晩飯にしよか?」


「悪いな。」


夕飯の事なんかすっかり忘れていた。

差し出されたお茶とおにぎりを受け取り、おにぎりの包装を剥ぎ取り噛り付いた。


「腹が減っては戦はできないし、元気も出なきゃ、糖分不足で頭も回らんやろ。いいから食いや。」


喜久彦も袋からおにぎりを取り出して食べ始めた。




「なぁ、さっきの話になるんやれど。ワイもあの二人と話してるのは楽しいで。でもどっちが一番かと言われると、ワイもわからん。ひょっとしたら一生考えても答えが出ないかもしれん。二人とは別の誰かがひょっこり出てくるってのもあるよな。だから今は保留にしておいても、ええんちゃうか?」


「そうか、そうだよな。」


お茶でおにぎりを流し込んで答える。




「どの道18まで結婚はできないんや。ほれ、もう一個行っとけ。デザートもあるで。」


おにぎりと羊羹(ようかん)を受け取る。


「ありがとう。」


「まだちょっと固いな。でもこれから4層までやっつけて、ついでに休み明けに佐野を模擬戦でぶっ飛ばしたらスッキリするはずや。一緒にやろうやないかっ!」


「ああ。」


「まー、あいつらも同じように悩んでるかもしれないけどな。」




そしてその予想は当り、女子二人はさらに遅れた。

20:30に全員の出発準備が終わった。

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