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■高校1年 6月第3~4週 夜営訓練(3)

「うー、酷い目にあったわ。」


「フラグ立てた、あんさんが悪い。」


15km歩いての移動訓練はタイムにこそ差は出たが全員完走した。




今は夜営の準備中。

一人用の高さの低い小型テントを二つ並べて設置した。

男女一人ずつ寝て、もう一人ずつが起きて見張りする二交代制の予定。

見回すとグラウンドには15パーティ分のテントが結構な間隔を開けて点在している。




「異様に開いてるのは、やっぱり襲撃用だろうか?」


「ここまで大規模な訓練です。


『一箇所襲って騒がれてみんな起きて終わり』なんてのは襲撃者側には不本意でしょう?」


「そうでもないんだよ。明日もあるから、頑張りすぎるのはちょっとねー。」


「「「「(げぇっ。)優ちゃん先生!」」」」


「はい、こんばんわー。」


隣にいたのに、気配も足音も無かった。




「「「「……こんばんわ?」」」」


「誰から聞いたのかは知らないけれど、事前に情報収集してきたようね。関心、関心っ。」


「聞いたら、まずかったですか?」


「こうやって見回って、それと無く話すつもりだったから問題ないよ。それに……。」


「それに?」


「毎回罰ゲームの趣向は変えるから。」


「聞くんやなかった。」


「間違いなくフラグが立ったわ。」


「私たち何されちゃうんでしょう?」


「可愛い生徒を傷つける方法じゃないから大丈夫。でも精神的には、ちょーっと(つら)い罰ゲームかなぁー。」


「最初の魔法授業でわいの指折ったやんけ……。」


「精神的に(つら)い罰ゲームの方が心配。」


「アレは1分以内に治したので学園ルールではノーカンよ。見張りがちゃんと起きて機能してれば何もしないから安心して。それじゃ次行くから。」


フッと姿も気配も消えた。




「光学迷彩かしら?」


「そんなレベルやない。認識阻害とかそう言うの使(つこ)うとるな。」


「でも、さっきのを夜には使って来ないと思いますよ。」


「なんでや?」


「『見張りがちゃんと起きて機能してた』って私たちには『あれ』を見つけることはできないです。」


なるほど、そうか。




「じゃあ、どうするのよ。」


「最初の予定通り、起きてる二人はテントを挟んで180度ずつ警戒。

念のために見張りで使う水筒と夜食と武器以外は全部テントの中に入れて保護した方がいいな。

それで優ちゃん先生に言われたとおり『見張りがちゃんと起きて機能して』何もしない状態を維持すればいい。」


「つまりこっちが襲撃者を視認していることを示せば、襲撃をしないってことやな。」


「そうね、確かにあの発言はそう取れるわ。」


「今の訪問が偵察って可能性もありますね。」


「あの人はそれくらいはやるだろう。もう一つの問題は他のテントに近づく襲撃者をどうするか? だな。」


「残念だけど見捨てるしかないわ。それとこっちが気づいた時点でハンドサイン出して『黙ってて』って指示して来ると思う。」


茂子さんが人差し指を唇の前に当てて見せる。




「こっちが本当に視認してるか確認するためにも、ハンドサインは出してくるでしょうね。」


「そんときゃ首振るとか頷くとか、返事したほうが良さそうやな。」


そんな事を話しながら設営を終えて、自衛隊仕様のミリ飯で食事を取った。

今夜は新月、暗くて長い夜になりそうだ。



◇◇◇◇◇◇



グーパーで男女一人ずつ選出して組を決めた。

俺と姫宮さんが先発、喜久彦と茂子さんが後発。

テントの中は「なぁ、好きな子って誰よ?」とか小ネタを挟んだ雑談をしていたが、すぐに寝息に変わった。

昼間の疲労が原因だろう。


テントの外も男女二人きり。

しかし、ありがちなロマンスは起きない。

テントを挟んで距離を取って背中合わせでいる上に、テントの二人が聞き耳立ててる可能性もある。


さらに襲撃役の暗視ゴーグル装着の佐野先生と、なまはげやしっとマスクな上級生がうろついて居る。

彼らを何度か見送り、お留守になりがちな0度と180度周辺を互いにカバーし合いながら無言で交代時間まで乗り切った。



◇◇◇◇◇◇



朝を迎え、喜久彦と茂子さんも同様に乗り切ったようだ。

ただ一つ俺達と違ったのはテントを迂回する形で糸が張った糸電話を使っていた。


「材料は目の前にあったし、黙って起きてるんも辛かったからな。」


紙コップのコーヒーを飲み干す。




そこに悲鳴が上がった。


「俺の荷物から飯だけ抜かれてる!」


「なによこれ! 落ちないっ!!」


「あれ? 私の朝ごはんどこー?」


「「「「なんじゃこりゃぁぁぁ!」」」」

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