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■高校1年 4月 迷宮(ダンジョン)クラス 魔法学(1)

迷宮(ダンジョン)クラス最後の初授業科目は『魔法学』だ。

俺達生徒は地下訓練場、通称:迷宮(ダンジョン)0層に集められていた。

格好は迷宮(ダンジョン)用の黒ジャージな防具セットだ。


担当は攻撃系魔法が『迷宮学』と兼任で福居(ふくい) 木八(きはち)、回復系魔法が保険医と兼任の伊勢崎(いせさき) (ゆう)だ。

回復系の人は面接で会った、背の低い優しそうなお姉さんであった。その幻想は入学式で上映された迷宮映像とその後の御乱行でもうない。




「私が回復系担当の伊勢崎(いせさき) (ゆう)です。普段は保健室にいます。

まずは魔法が本当に実在するって事を体で覚えて貰いますね。

拘束(バインド)!』『全休符(フィナーレ)!』」


足元から光のリングが沸いて、太もも・胸の2箇所で拘束された。胸のリングは二の腕も巻き込んで肘から先しか動かせない。見渡すと自分だけでなくクラス全員36名が同じ状態だ。胸が強調されてマズいことになってる女子もいるが、それどころではない。声も出ないのである。


「はいはーい。

言いたいことがあるのはわかるけれど、授業にならないので『全休符(フィナーレ)』で封じたよ。

立ってる人はゆーっくり膝を曲げて座ってね。でないと危ないから。」


『危ないから』と聞いて、声にならない抗議を止め全員が座った。


「それじゃ、木八さんお願いします。」


「既に『迷宮学』で会ってるから自己紹介は要らんな。

先ほど伊勢崎さんが言うたように魔法の存在を体感するために、これから実際に攻撃魔法を受けてもらう。」


「ここは加護ブーストも強く掛かってるし、手加減もするから中々気絶できないと思うけれど。意識を強く持って頑張って覚えてね。」


「悪く思わんでくれ……これが一番効率的なんじゃ。……『炎雨(ファイアレイン)!』」


俺達は降り注ぐ紅い光の弾幕に打ちのめされ、真夏のアスファルトに飛び出したミミズのようにのた打ち回った。




10分後。


「それじゃ5分休憩ね。回復魔法も良く味わって覚えてね。『ヒーリングフィールド!』」


地面が黄緑色にぼんやり光り生徒達を包む。じんわりと暖かい感触は面接で指を再生して貰った時の感覚に近い。


「10分続けても穴一つ無いとは、今回の体操着はなかなかだな。」


「はいっ、今年の新作モデルです。」


中身の心配しろよと思って睨んでいるのは、俺だけでないはずだ。




それを察したのか、にんまりとした顔で見渡す伊勢崎先生。


「さっきは火傷ができない温度でしたが、もうちょっと威力上げても大丈夫ですよ。もし火傷しても私が(あと)も残さず直しますので。」


「心得た。去年は女生徒の服が溶けてえらいことになったからのう。」


もう30分かけて2セットの地獄が続いた。



◇◇◇◇◇



「さて初日から『乱暴なやり方』だと思っている人がほとんどだと思います。でも迷宮に入る時に魔法ができないと、ひもじい思いをしたりもっと痛い思いをするだけでなく、希少な装備を失うことになります。」


「伊勢崎さん、アレやったらどうじゃ?」


「そうですね。はい、今目を逸らした君。前へ。」


喜久彦がつかまった。


「ちなみに私が生徒だった時の方法は、二人一組でこうやって。手をつないでですね……。」


手を握られて無理やり立たされる。美人のあんな近くで、しかも恋人握りうらやま……。


「えいっ。」



パキッ



「…………。」


喜久彦の親指が変な方向向いた。

親指と人差し指で挟んで喜久彦の親指を折ったのか!?

喜久彦は苦悶の表情を浮かべて逃げようとするが、ガッチリ恋人握りされてて逃げられない。


「うふふふっ。こんな風に指折って『ヒール』の感覚を覚えるまで、何度も何度も何度も何度も何度も折って治療してもらいました。

ちなみに『ヒール』が使えるようになった後は、自分でナイフ刺して『ヒール』で治す練習を延々と繰り返すのですよ。

もし今日の方法が不満な方は、ぜひ申し出てくださいね。昔の方法で特別授業しちゃいますよ。

杉戸君だっけ? 協力ありがと。『ヒール!』『全解除(リリース・オール)!』」


喜久彦の指が直り、俺達も光の輪の拘束と沈黙から解放された。しかし全員倒れこんで、口を開くものはいない。


「『ヒール』連続で受けるのに慣れてないからだるいかもしれんが、寝るなら寮まで戻れ。礼はいい。解散!」


「魔法学」の初回授業はこうして終わった。

しかし、これから7回の授業で残り7属性――水風土光闇力心を味わう事になるのをこの時は知らなかった。

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