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多々良小傘+小悪魔

「召喚魔法、ですか?」


私は、主であるパチュリー・ノーレッジ様の言葉を反駁し、今まさに首を傾げていました。

「そう。本来は力無き人間が自らの魂を賭して行う、一種の賭け…それが召喚魔法。

でもそれを力の有る者が行う事で、ルーレットの球を強制的に狙ったポケットに入れるというズルを使える。私達の言う『召喚魔法』というのは、実はそんなものなのよ。」


おっと、いけないいけない。

紹介が遅れました。私は名無しの使い魔…いや『名無し』と言っても普通に名前はあるのですが、それはパチュリー様以外には秘密にしているだけ。そんな訳で、今はただの小悪魔とだけ名乗っています。

悪魔が名前を知られて良い事など、ただの一つも無いのですから。

「それが…どうか、したのですか?」

パチュリー様に仕え始めて、使われ始めてもう幾年にもなります。ですが、やはりこの突発的な物言いにはいつまで経っても慣れません。

「そこで、よ。

ほら、私はそのイカサマを使って、貴女を召喚した訳じゃない?」

「あれも一種の反則なのですね…」

「そして私は貴女を無事に召喚し、契約を終えた。あの時点で私は既に今と同じ魔女であり、そして存在的には半分位まで人間…といった所かしらね。白玉楼の庭師じゃあ無いけれど。」

「そうですねぇ…」

私の打つ相槌が普通にスルーされるなんて、別に珍しくもありません。

パチュリー様は常に自分の道を行くお方なのです……ええ、傷付いてなんかおりませんとも。

「それなら……」

「はい?」


「悪魔が悪魔を召喚するというのは、どう思う?」


「………ッ!?それは……」

そう。それは、言わば禁術の類であった筈。



人間が悪魔を召喚する際には、魂とは別に身体を構築する為の依り代…言わば媒体として、自分の寿命を使うのが一般的です。それはつまり自らの魂を贄として捧げるのと同義であり、同時にそれは『寿命の無い種族には悪魔を自由に召喚出来る』という事実と繋がります。

勿論、召喚が可能であるという事と制御が効くというこの二つは、必ずしも両立するとは限りません。寧ろしない場合の方が多い位です。


しかし、もし。

もし、それをするのが悪魔なら…?


悪魔には、勿論寿命などありません。それにそもそもの話、『悪魔に使役出来ない悪魔などいないし、使役出来る悪魔もいない』のです。

その理由の一つとして挙げられるのは、悪魔同士は種族として完全に平等であるという点。単純な悪魔は言うに及ばず、魔獣に淫魔、例外的に堕天使等々…それらを全てひっくるめて『悪魔』、と。

つまり、悪魔は悪魔以上になれるけれど、悪魔のままでは悪魔でしかいられない……少し面倒な言い回しですが、これが私達悪魔の間での常識であり、例外の無い共通認識となっています。

要は、平等であるが故に無限に召喚出来る上、制御が不可能…と。最早どこから駄目出ししたら良いのかもわかりませんね。



「そんな事、出来る訳が…」

「出来るのよ、これが。」

ですが、そこはパチュリー様。気にする素振りも見せません。

恐らく何か上手い抜け道でも見つけたのでしょうが…正直、その程度でどうにかなるとは思えませんでした。

「だって、私は悪魔ですよ?召喚()ぶ事は出来ても、従えるなんて不可能です!」

「ええ、そうね。貴女は悪魔よ。」

相変わらず、何処かちぐはぐな答えを返して来るパチュリー様。

いつにもまして、考えが読めません。

「じゃあ、何故?」

「貴女は悪魔だけれど悪魔じゃない。だって貴女は…使い魔でしょう?」

…………………えっ?

「そ、そんな事が…」

可能な筈が…いや、可能であって良い筈がありません。だって私は、ただの悪魔なのですから!

「理論上は可能なのよ。使い魔にされた…成った妖怪は、その時点で『使い魔』という独立した妖怪としての存在を手に入れる。つまり今の貴女は、悪魔であって悪魔じゃないの。」

「成る、程……?」

「ああもう、じれったい…!

とりあえずやれば分かるわ、そこの召喚陣の上に立ちなさい。」

「ええぇ!?」

もう準備がしてある……なんと手の早いことでしょう。

いや、パチュリー様の事ですから、もしかしたら私を呼ぶ前に、既に仕込みは終えていたのかも知れませんが…どれにしろ、そんな事は些事に過ぎません。

使い魔である私にとっては、パチュリー様の命こそ絶対。逆らうなどありえない、その言霊に身を委ねる事こそが至上の悦びなのですから。


「はい…パチュリー様の命ずるがままに。」

「それで良いのよ。


……あぁ、そうそう。今回はイカサマは使わないわ。」


「えっ?」

…………何と仰いましたか、このご主人様は。

イカサマを使わない。それは、つまり。

「これで、陣は完全なブラックボックスと化したわね。よし…小悪魔。運良く強力な悪魔が出たら、貴女は紅魔館最強になれるかも知れないわよ?」

やっぱりーーーーッ!?

「そ、そんな!畏れ多いですよそんな!」

「ま、そうそう無いわよ。それにもし手に余る悪魔以外が出たら、責任を持って私が強制送還するから安心なさい。」

「そういう問題では無いのですが…わかりました、じゃあやってみます……」

恐らく今の私は、某白黒魔法使いが見たら、

『どうしたそこの木っ端悪魔、背中が煤けてるぜ?』

…とでも言いそうな雰囲気を纏っているに違いありません。



「どうしたの小悪魔、早くしなさい。」

「………!も、申し訳御座いません!」

パチュリー様の声で、我に返りました。

従者の分際で主人の行動を制限するなど、正に言語道断。許されざるべき事です。

「そ、それでは。」

鋭く伸びた爪で、掌を引っ掻きます。そして流れ出た血を陣の真ん中に滴らせ、後は向こうから来るのを待つだけ。

向こうを指定しない場合は呪文も何も要らない…ある意味楽ではありますが、非常にリスキーなのもまた事実。こんなやり方、流行らないのも当然と言えるでしょう。

かく言う私も、先程パチュリー様から教わるまでは知りませんでしたし。


そして、それから五秒程経った後…召喚陣が、遂に輝き始めました。

何とも形容し難い紫色のそれは次第に強くなってきて、今ではもう目を開けているのも困難な程の、凄まじい光量になっています。こんな暗い色の光でも強くなると眩しく感じるものなのか、と改めて実感。


「油断しちゃ駄目よ小悪魔、そろそろ召喚されるわ!」

「はい、パチュリー様!」

思わず無防備になる私へ、即座にパチュリー様の叱責が飛びます。見てみると、本人は目の前に防護フィールドを展開している様でし、た…………しまった、その手があったかぁ!

「光子量軽減フィールド展開!対象:赤色光・青色光!」

何とか、光量を調整する障壁だけは張る事が出来ました。これで何も心配はありません。

「……無事にガードは出来たみたいね、それでこそ私の部下よ。」

「光栄の至りです。」

視線は召喚陣に釘付けのまま、パチュリー様がお褒めの言葉を下さいました。

飛び上がって喜びたい気持ちを抑えつつ、冷静に状況を静観します。


「…………………出たッ!」

陣の中心部から、まるで空間そのものが急に形を持った様にして、一つの影が現れました。

それはまるで、人間の様な…おや?手に何か棒状のものを持っている様です。

(もしかしたら、死神とか…?)

恐ろしいモノを召喚()び寄せてしまった様な気がして、背筋が冷たくなりました…が、良くも悪くも、そんな想像は跡形も無く吹き飛ばされるものです。セオリーというやつ。

そしてどうやら、今回もその例に漏れなかった様で。


「んもう、何よ突然……って、あれ?ここどこ?お姉さん達、誰?」


陣の中に居たのは…つまり召喚されたのは、毒々しい紫色の傘を持ち水色の服に身を包んだ、少女の姿の憑喪神。

要は、俗に言う『唐傘お化け』という存在でした。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「貴女は……だあれ?」

私は、陣より()でたお化けに、恐る恐る声をかけます。

ぱっと見た、そして力を感じた限りでは、決して凶悪な妖怪には見えませんが…油断は出来ません。

単純な力などでは無く、凶悪な能力そのものを持っている可能性だってあるのですから。

「私?私の名前は、多々良小傘。うらめしやー!」

「多々良、小傘……」

どうやら、かなり元気の良い子の様です。

しかし何が恨めしいのか…いやはや、初っ端から意味不明です。

「えーと…とりあえず、今の貴女の状況を説明しますね?」

「うん!早くはやくー!」

返事するや否や、その場でぴょんぴょんと飛び跳ね始める小傘さん。

「よしよし、元気が良いのはわかりましたから。ちょっとだけ静かに聞いて下さいね。」

はぁい、と元気の良い返事が返って来ました。……駄目だこれ、絶対わかってねえ。

って、あぁもう…陣の中で飛び跳ねないで下さい!まだ貴女はそこから出られないのですよ!?

………ぷつん。

それでも尚暴れ続ける小傘さんを見て、私の頭の中で何かが切れる音がしました。

「静かに、しろーーーッ!!!」

「「きゃ、っ…!?」」

遂に堪忍袋の緒が切れた私は、思いっきり叫んでしまいました……と、あれ?

前と後ろのふた方向から、同時に声が聞こえてきたではありませんか。

「…………?」

恐る恐る後ろを振り向くと、そこには。

「………(ぷるぷる)」

口を押さえて真っ赤になりながら震える、パチュリー様が。

これは……謝った方が良い空気。

「……ご、ごめんなさい……?」

「もう、小悪魔!貴女って子は…!」

小首を傾げながら謝ってみると、パチュリー様は顔の位置まで本を持ち上げて、ぷいっと後ろを向いてしまいました。

あぁ、怒らせてしまった…

「…………」

きっ、と小傘さんを睨みつけます。

そりゃあそうです、貴女の所為でパチュリー様の御機嫌を損ねてしまったのですから……って、あれ?


「ぐすっ、ひぐ、っ……」


……やけに静かだと思ったら、小傘さんは陣の中で女の子座りをして、ぽろぽろと涙を流していました。

「…………………」

子供か!

そう突っ込みたくなるのを抑えて、何とか頭を働かせます。そもそも小傘さんの外見年齢は私よりも小さいのですし、それに比例して精神が幼いのも予想できる事でした。

これは、ある意味私の失態と言っても過言では無い筈です。

だから、私は。


「ごめんなさいね。」

「………えっ?」

嗚咽もまだ止まらぬまま、こちらを見て目を瞬かせる小傘さん。

「ちょっと気が立っていて…言い過ぎちゃいました。許してくれますか?」

「……う、うん。」

小傘さんはどこか呆然とした表情のまま、頷きます。


「じゃあ、今度こそ説明しますよ?」

「はい、小悪魔さん!」

……どうやら、小傘さんの中で一目置かれてしまった様です。


「貴女は、私の使い魔として呼び出させて頂きました。ここまではオーケイ?」

「使い魔……って何ですか、先生!」

「先生ぇ!?え、えーっと…要するに部下みたいなものです。それと同時に、貴女の場合は『唐傘お化け』であると共に『使い魔』であるという二つの性質を持つ事になります。」

少し難しすぎたでしょうか…首を傾げて目を回しています。ちょっと可愛い。

「つまり、『唐傘お化け』と『私の使い魔』という二つの存在が、貴女の中で混ざり合うって事ですよ。」

「ふーん……何となくわかりました。」

良し、良し。

ではそろそろ…大詰めに、入りましょうか。

「じゃあ、最も重要な質問です。」

「は、はい……」

ゴクリ。

小傘さんが、唾を飲み込む音が聞こえてきました。

恐らく緊張しているのでしょう、ああもう何でこういちいち可愛いのかーーーではなくて。

「小傘さん。」

「はい。」

「貴女は………私の使い魔になり、私に服従を誓いますか?」

「…………っ。」

少し目を逸らし、汗を流す小傘さん。……それはそうでしょう。何より彼女と私は初対面ですし、いきなり自分をこんな風に呼び出した相手を全面的に信用しろというのも、普通に考えれば無理な話です。

そもそも今回は、私が呼び出した使い魔をちゃんと抑え付けられるのかを確かめる為の実験な訳であって……無理矢理気味に言えば、契約そのものには成功しなくても良いのですから。


「ーーーぁくまさん、小悪魔さん。」

「……ッ!?ど、どうしましたか、小傘さん?」

「もう…ちゃんと聞いて下さいよぉ。」

「すみません、ちょっと考え事をしていました。」

いけないいけない、こんな時にぼーっとしているだなんて。

「で、何ですか?小傘さん。」

何ですかって……と呟いた後、小傘さんは小さく息を吐き、


「私は、やっぱり小悪魔さんの使い魔にはなれません。」


と、きっぱりと言い切ったのでした。

「………やっぱり、そうですか。」

それはそうです。同じ状況だったら、私だって断るでしょう。パチュリー様には違うと言われたけれど、何せ今の私は『普通の悪魔』にしか見えないのでしょうから。

そんなのにこき使われるなんて、私だったら死んでも御免です。


「だから…小悪魔さんと私は、今日から友達ね!」


「そうですよね、私なんかーーーえっ?」

何だか今、聞き慣れない単語が聞こえた様な。

「………友、達?」

「そう、友達!」

「……………へ?」

私、呆然。

いや、何を考えているのでしょうか、この子は。

「友達?私……悪魔ですよ?」

「だから何だってのさ……」

逆に変なものを見るかの様な、微妙なジト目で見られてしまいました……何だかこっちが悪い事を言ったような気分です。


「…………ックク……あっはははは!!!」


「「えっ?」」

互いの目を見つめながら、頭の中に疑問符を浮かべていた私達。

その後ろから突然、澄んだ高い笑い声が聞こえて来たのです。私の頭では、そろそろ現状を処理仕切れなくなってきました。


「良いんじゃないかしら?私は好きよ、こういうの。」

「レミィ……どうしたのよ、こんな時間に。」


そう…そこに居たのはこの館の主。吸血鬼、レミリア・スカーレット。

レミリア様…お嬢様は私達をちらと見て、その幼い容貌に不釣り合いな、鋭い…それでいてどこか達観した様な笑みを浮かべながら、ぼそりと呟く様に言いました。


「お前達のやり取りは、さっきから見させてもらったわ。さっきも言ったけれど、そういうのは嫌いじゃない。……小傘とやら。私の友人の部下を、よろしく頼むわよ。」


お嬢様はそうとだけ言うと、踵を返して足早に図書館を出て行かれました。

遠ざかって行く足音が、長い廊下に反響する…そんな中。私は、お嬢様の去り際に頭を下げるのを忘れていた事に、やっと気付いたのでした。




そう。これが、私と彼女の出会いでした。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「………で、何でそれを私に相談するんだぁ…?」

「だ、だって…魔理沙さん、友達多いでしょう?」

「否定はしないけどさ…」

そんな事があった、次の日のこと。

私の目の前にいらっしゃるのは、お嬢様の友人、霧雨魔理沙さん。たまに本を盗んで行く事に目を瞑れば、人当たりも良いししっかりした良い人です。

……まぁ、要するに『信用出来ない人』って意味ですね。

「向こうが友達って言ってるんだから、それっぽい事すりゃ良いんじゃ無いのか?少なくとも、私はこの場で『友達とは何なのか』なんて答えの出ない問答に付き合ってやるつもりは無いぜ。」

「そこまでは望んでいません…でも、言ってる事は変わらないのかな……?」

もう頭の中がごちゃごちゃで、自分でも何を言っているのかわかりません。

友達とは何なのか……裏を返せば、どうすれば相手を友達と呼べるのか。

「んー…何やら、お前もめんどくさい状況に嵌ってるみたいだな。」

「否定はしませんけどねー……」

めんどくさいと言うよりは、私が深く考え過ぎてどつぼに嵌っているだけなのだと思います。でも、そうだからこそ、根が深い。


コツッ。

靴音が、広い部屋に響き渡りました。

そんな話をしている内に、どうやらパチュリー様がこちらへやって来た様です。

「ちょっと小悪ま……あら、魔理沙じゃないの。本なら貸さないわよ。」

「ちっ…この前のやり取りから学んだらしいな?」

「『死ぬまで借りる』だなんて、そんな馬鹿みたいな事言うのは魔理沙くらいのものだしね。」

ゴゴゴゴゴ…とでも音が鳴りそうな空気です。

二人の間に、火花が散っている幻覚まで見えて来そうな始末…これはどちらかがスペルカードを取り出す前に、私が鎮めなければ。

「ちょ、ちょっと魔理沙さんにパチュリー様!…………あっ。」

ふと、二人にしてみたい質問が浮かびました。

「ん?どうしたの小悪魔。」

私の纏う空気に気付いたのか、パチュリー様がこちらを向いて下さいます。


「パチュリー様と魔理沙さんって、友達なんですか?」


「「……………」」

二人して、互いをじろりと睨み合いました。……これは望み薄でしょうか。

失礼にも、そう思ってしまった瞬間。二人は全く同じタイミングでこちらを見て、


「そうね。」

「ま、友達なんだろうな。」


と、口を揃えて肯定しました。

「…………ええっ?」

意外だとか、そうは見えないだとか…そんなどうでもいい事は、今の私の頭の中にはありませんでした。

考えていた事は、一つ。

『何故この人達は、こうも迷いなく頷けるのか』

その疑問が、私の中を満たしていました。


「………な、何故?」

そんな私の口から出て来たのは、意図したよりも、よっぽど弱い問い。これでは、伝えたい事の一割も伝わらないでしょう。

ですがそれを聞いた二人は、全てわかっているとでも言いたそうに頷き、こちらを見て微笑みました。


「小悪魔。それを理解する為に、私達はこうして喧嘩をするのよ。」

パチュリー様が、どこか誇らしげに言い。

「私だって、コイツよりは霊夢の方が良いさ。それに、コイツと霊夢とでは全く違う付き合い方をしてる。でも霊夢は友達だし、コイツとも友達だ。……いいか小悪魔。こういうのはな、思ったモン勝ちなんだよ。」

魔理沙さんは、お得意の無理矢理な理論を笑顔で披露し。

そして二人とも、先程の口喧嘩に戻っていったのでした。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


そして、その次の日。

「小悪魔、ちょっとこっちへ来なさい。」

「はい、パチュリー様。只今参ります!」

何時も通りに本棚の整理をしていたら、いきなりパチュリー様に呼び出されました。


「何か御入用でしょうか。」

「……そうね。」

「?」

パチュリー様が、どこか言いづらそうに口をもごもごと動かします。そんなパチュリー様が珍しくて、ついじろじろと見てしまいました。

「………何見てるのよ。」

「も、申し訳ございません…」

怒られてしまいました。

しかし、何故か全く怖くありません。普段のパチュリー様とは全く違う…どこか迫力の様なものが抜けてしまっている様に感じました。

「………ねえ、小悪魔。貴女…」

「何でございましょうか。」

「私と、友達になりたい?」

「…………………はい?」

何を言っていらっしゃるのか……一瞬、頭が追いつきませんでした。


一昨日の小傘さんとの会話を聞いていたであろう、パチュリーのこの言葉。つまりは『使い魔をやめる気は無いか』と尋ねられているのでしょう。

私はその言葉に込められた意味を、よく反芻し、咀嚼して、十分に理解した後。

私は深々と頭を下げて、言葉を紡ぎます。


「ご遠慮させて頂きます。私には、この関係が一番心地良いものですので。」


「………………」

そんな私を見たパチュリー様は、相変わらずの無感情な声で、静かに言いました。

「顔を上げなさい、小悪魔。」

下げていた頭を持ち上げた時、私はパチュリー様が笑みを浮かべているのに気が付きました。

魔理沙さんの様な明るいそれとは違う…冷たい夜空を照らす月の光の様な、それは優しい笑顔でした。


「さて、小悪魔。」

「は、はいっ!」

曲がりなりにもパチュリー様の厚意を無碍にしてしまったのですから、仕置は覚悟の上です。

さぁ、どんな罰ゲームでもどんと来い!


「今日一日、貴女に休暇を出すわ。」


「……………………はい?」

本日二度目の、この台詞。ですが、先程のそれよりも驚きは大きくありませんでした。

何故なら、この先に続く言葉はもう、わかっているのですから。

「もう、迷いは無いのでしょう?」

「はい!」

「そう、なら良いわ。

あの傘の妖怪、命蓮寺の墓地にいるそうよ。……だから精々、今日は子供のお守りで費やすと良いわ。」

「…………はい!」


ありがとうございます、とは敢えて言いませんでした。何故なら、パチュリー様はこういうお方なのですから。





「それでは、行って参ります!」

「あー、はいはい。わかったから行ってらっしゃい。」


紅魔館の門を開き、私は一歩を踏み出します。

幻想郷へ来てから始めてできた友人に、会いに行く為に。

やっぱりパチュリー様と小悪魔、揃ってヒキニート的な先入観があるんですよねー……それでもパチュリー様は力があるから、何だかんだで周りとは良い関係を築けてそう。


……じゃあ、小悪魔は?


みたいな、そんな感じで書いてみました。


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