第9話*校内ライブ
「美〜穂っ!これ、これ見て!」
5月に入って、桜の蕾が膨らんできた頃。
鈴が一枚のプリントを持って走ってきた。
「何?鈴。」
「これこれっ、“校内ライブ”のチラシっ!これ、次の新聞に載せてくれないかな?」
軽音部のライブの広告だった。
「良いよ?」
「ありがとうっ!で、このことで、修平先生にインタビューしてくれば良いじゃん?」
「なっ、何言ってんの!!!」
美穂は真っ赤になった。それを見て、鈴は笑っている。
「何言ってんのって、顧問だもん、修平先生。当たり前でしょ?」
「う…」
「そ・れ・に、これが新聞に載れば人は集まり軽音部は嬉しい!そして修平先生と会話が出来る美穂はもっと嬉しい!」
「ばっ…馬鹿…!」
「馬鹿じゃないもん〜♪頭良いよね〜あたしっ」
鈴はくるくると回っている。
「何やってんの?」
そう、声をかけてきた人──修平先生だ。
「あっ、修平先生!これ、新聞に載せてもらおうと思って!」
「おー、良いんじゃね?そしたら人集まるしなぁ〜。」
さっきまで噂されていた“先生”がそう言った。
「一応先生への取材が必要みたいなんですよ。だから修平先生、美穂のインタビュー、受けてくださいねっ」
「おー、分かったよ、俺で良かったら。」
「はっ、はい、お願いしますっ…!」
美穂は慌てて返事した。先生は笑っている。
「あ、そうそう美穂、この前の小テストの間違い、めっちゃ惜しかったよな。あの間違い、よくあるから、しっかり復習しとけよ?」
先生は生徒のことを一番に考えている。
小テストなんて、点数だけ知れれば良いものを、先生はどこをどうやって間違ったかまで知っているのだ。
「はい、ありがとうございます!」
「おー。」
そう言って「じゃ」、と先生は手を挙げてまた歩いて行った。
また、いつもの進路室へ行くのだろうか。
「いやぁ〜美穂、良かったねぇ〜。」
「うるさいな…!」
「でも嬉しいでしょ?」
「う…」
鈴には勝てない、と思った美穂だった。