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先生と、私。  作者: Cheryl
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第4話*短いやり取り




「日本史担当の、渡辺 修平です。えー、去年卒業生の年次主任でしたね。初めてだと思いますが、よろしくお願いします。」


初めての日本史の授業。少し丁寧な先生。


年は30になったばかりだという。


…14歳も離れてるんだあ…


無意識のうちに計算していた自分に少し呆れながら、先生の声に耳を澄ませる。


「日本史はねぇ、何で勉強すると思う?はい、えーっと、大西。何でだと思う?」


先生は、席の表と生徒の顔を照らし合わせながら、大西、という生徒に当てた。


「わかりません。」


大西、と呼ばれた生徒はすぐにわからないと答えた。


「早いな。じゃあ…えーと、佐々木。」


先生は笑いながら佐々木という生徒を当てる。


「えっとぉ、今を知るには過去が大切だから?だと思いますぅ。」


呼ばれた女の子は、そう答えた。


「うん、そんな感じだな。簡単に言えばね。でもね、一番大切なのは、今高校生の君たちは、これからの日本を作っていくわけだよね?過去の間違いっていうか、過ちの歴史。これを繰り返さないようにっていうのが、一番の目的だね。」


先生はそう言った。


「ほら、原爆が落とされた広島の原爆ドームの原爆死没者慰霊碑に彫ってある言葉、知ってるか?『過ちは繰り返しませぬから』ってやつ。それと同じだ。人間の間違った歴史を、これから二度と繰り返さない。そのために、まず日本の歴史を学ぶんだよ。」


先生のその言葉に、美穂は胸を打たれた。


それが、初めての授業。先生を目で追い始めるようになった。


しかし、考えれば考えるほど、授業で当てられる回数の少なさにもどかしくて。


「はい、じゃあここ、中村。」


「はい、三角縁神獣鏡です。」


「そうだな。合ってるぞー。」


たったそれだけの会話。会話と言って良いのかさえ疑いたくなるようなやり取り。


だが、それだけで、美穂は嬉しくなる。


先生のことは大好き──でも、恋とかとは違う。


14歳も離れてるし。


そう思って過ごす毎日。もちろん、誰にも言えるはずがない。


親友の奈津にでさえ言えないこと。



…馬鹿みたい。



美穂は思った。



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