第3話*修平先生
日本史の授業は週4時間。一週間のうち、無いのが木曜日だけだった。
教科担任に目を移す。
“渡辺 修平”
この4文字が印刷されていた。
ああ、修平先生か!
新聞部である美穂は、校内の先生のほとんどの顔を知っている。もちろん、何度か取材をしているからだ。
渡辺という名字の先生は、3人ほどいる──四つ葉高校は、生徒数約1000人、先生は約50人の北海道でも有数のマンモス校である──ため、一人一人が名前で呼ばれることも多い。
そのため、みんなその先生のことは“修平先生”と呼んでいた。
しかしこの先生、去年までは三年生─卒業した─の年次主任であったので、美穂たち新2年生とは何の関わりもない。
楽しみ。
そう美穂は思った。
その日は午前中だけで終わり、放課後になった。
今日1日は早かったなあ。
そう思って、これから新1年生が入学式のために来るであろう教室棟を通って、部室へ行った。
午後からは入学式の取材なのだ。
正直疲れていた美穂は、面倒な気もしていたが、仕方がない。
ついこの前まで自分が使っていた教室を眺めながら、美穂は歩いた。
1年って、こんなに早いんだ。
美穂は少し、切なくなった。
入学式も無事終わり、新聞も出来上がったのは、部活が出来る最終時間の7時。
「お疲れでしたー」
「ばいばーい」
そう言って、美穂たち新聞部員 (5人しかいないが) は帰る。
美穂も、迎えに来た父の車に乗る。
明日の学校──クラスへの不安を抱きながら、今日あったことを思い出しているうちに、眠ってしまった。
月が輝いていた。