二話 トラブル
〜この話の登場人物〜
桜井雅典……東京の高校に通う高校生一年生。頭がよく秀才。
伊集院聡……桜井と同じ高校に通う。桜井とは同級生で幼なじみ。運動神経がとてもいい。
伊集院重盛……伊集院聡の父親で日本の御三家の一つ伊集院家をまとめる当主。レジスタンスに協力しているという噂があるが、真実は?
使用人の沖……伊集院家の使用人。レジスタンスのテロ現場で会う。
「待てって!」
桜井は聡を追いかけて住宅街の角を曲がった。
「あそこだっ!」
東京湾のドックの周りは今やアメリカ軍基地になっている。
「アメリカ軍基地が……燃えてる……」
「聡!これ以上行ったら危険だ!」
炎上した基地に入ろうとしてる人影が見える。
(レジスタンスか……厄介な場面に遭遇したな……)
その時レジスタンスの指揮官らしき男の顔が炎に照らされてハッキリと見えた。
(あ、あれは!)
桜井が気づいて聡を見た。
「ち、父上……!」
聡は真っ青な顔で父親が基地に入るのを見つめている。
「桜井……先に帰っててくれ」
「聡?お前基地に行く気か!」
もう聡は走りだしていた。
「あのバカがっ!」
桜井も後続いた。
〜アメリカ軍駐留基地〜
「三つに散るんだ!」
「武器庫を爆破しろっ」
男達は爆破用の爆弾を抱えて武器庫に走っている。前方にアメリカ兵が三人。
「こっちから撃って撹乱しろ!」
男達は肩にかけたライフルで応戦した。アメリカ兵もライフルを構え撃ってきた。男達は急いで兵舎の影に隠れる。銃撃戦が続いた。
桜井と聡は基地の門をくぐった。
「警備がいないね」
「ああ……緊急事態だからだろう」
桜井は辺りを見回した。(向こうで銃撃戦か?あそこには聡の父親はいないだろう。あの年寄りが銃の打ち合いはしなさそうだしな……)
桜井は更に辺りを見回す。向こう側の建物に続く道は警備が薄いことに気付いた。
「聡!あっちに行こう。ここは危険すぎる」
「わかった!」
時間は完全に夜。基地を照らす電灯だけが明かりになっていたので、2人は上手く身を隠しながら進んだ。
「あの建物はなんだろ?」聡が指差した先の建物はドアが爆破された跡がある。
(爆破されている……レジスタンス達の狙いになった建物か?)
「リスクを犯して入る価値はあるな」
桜井は見回しながら言った。
(辺りに聡の父親もいない。この建物にいる確率がある)
「わかった。行こう!」
2人は建物へ駆けだした。その時、建物から人影が現れた。5人、6人いる。
「しまった!」
桜井は聡の腕を掴んで逃げようとした。
「待って桜井。あれは……」
聡が言い終わる前に答えが分かった。電灯に照らされた顔を見て聡は走った。
「父上!」
伊集院重盛は息子を見ると、驚きの表情を隠せなかった。
「なぜお前達がここに!」「父上こそなぜ?何をしているんですか?」
聡の顔には悲しい表情が見えた。重盛の近くにいた筋肉質の男が辺りを見回して
「重盛様。敵がもうすぐ!」
そう言った途端、遠くからライフル弾が建物の窓ガラスを割った。
「話は後だ。桜井君も今は逃げるのだ!」
そう言って、重盛を先頭にレジスタンスは走り出した。
アメリカ兵は増援を呼び、更に数を増した。ライフルが火を噴く。
「があぁっ!」
桜井はふくらはぎに激痛を感じた。銃弾が命中してる。
「くそっ!」
そのまま倒れてしまった。
(あ、足が動かない!)
「桜井っ!」
聡が駆け寄ろうとした……がしかし筋肉質の男がそれを止める。
「あなたは……使用人の沖さん!?早く桜井を助けて!」
「無理です!もう兵が来てる!」
沖の言う通り、桜井の倒れている場所にアメリカ兵が近付いて来ている。「今は仕方ありません!逃げましょう」
桜井は這って逃げようとしたがアメリカ兵に足で背中を押さえつけられた。
(ぐっ!こんなとこで!)「桜井っ!桜井ーっ!」
聡の声が遠ざかっていく。
「レジスタンスを捕らえろ!」
桜井は首に激痛を感じた。そのまま意識が遠のいていく。
(俺は……こんなところで……俺は……)
目の前が真っ暗になった。
アメリカ基地の建物………今回レジスタンスが狙った建物。武器庫だったのか、別の何かがあるのかはまだ不明。これも物語が進むと分かるだろう。