第一話 夕暮れ
「これで3つ目か」
少女、五十嵐みゆは独り言をこぼした。
ここ1ヶ月間人は見ていない。
見たのは飼い猫のミアとプラスチックのコップに住み着いていたハツカネズミと、古びた看板の裏の蜘蛛の巣についていた死にかけのハエくらいだ
「あと5つくらいあれば足りるか?」
そういい、リュックにラベルがふやけた缶詰を入れ、もう一度腰を上げて歩き出す。
今は1週間分の食料を探してスーパーマーケットに来ているところだ。
「ミアの食料も買わないと…この缶詰でいいか」
残りの5つとミア用の缶詰を集めて足早にスーパーを出る
(ティッシュ家にあったかな…?)
ドラックストアの前を通りながら帰り際に貰ってきたポテトチップスを口に運ぶ
足元のガラスをジャリジャリ言わせながら早歩きで家に帰る。
「よいしょ」
少し足を開いて立て付けが悪くて重くなったドアを引く。すると、暗い廊下に真っ白い毛玉が一番に目に入る
その毛玉…飼い猫のミアはこちらを見ながら「にゃあ」と鳴く
「ただいまミア、お腹すいたよねごめん、缶詰持ってきたよ一緒に食べようか。」
みゆはリュックを置きに一度キッチンへ入る。
(この家が崩れていなくて本当に良かった…)
とっくに水は出ていない蛇口の横を床を軋ませながら通りすぎる。
もう日は暮れてきていて窓から暖かいオレンジの日が差す。
リュックを開けて缶詰を出すと、暖かい光を反射する。
かろうじて使えそうな箸を箱から出してペットボトルの水で少しすすぐ。
「水も持ってくれば良かったな…いや重くて持てないか、次行った時に持ってこよう。メモしておくか」
引き出しからまだ使えるペンを出して付箋にペンを走らせる
「水三本…っと」
(水はさっき通ったドラックストアにあるかな…)
書き終わったらすでに数十枚付箋が貼ってある壁に新しく綺麗な付箋を貼る。
するとドアの向こうからミアがちょうどよく「にゃあ」と鳴く
「ミア、缶詰これでいい?」
ドアを開け目の前のローテーブルに座る
「サバ缶といわしの缶を持ってきたから今日はサバね」
青いラベルの缶をテーブルに広げる。
缶を開けてあげるとテーブルにジャンプしてむしゃむしゃ食べ始める。
「ちゃんと噛みなよ〜」
頭を撫でながら喋りかける。
(水取ってきたら洗ってあげよう)
ミアの食べているところを見ながら
自分の缶を開ける。
するとミアはこっちを覗き込む
みゆは自分の分を少しつまんで口に近づけてあげる。
「さっきポテチ食べたしあげるよ」
ミアは「み」と鳴いてちょっとずつ食べ始める。
みゆは残りの分を食べて風呂場に入る
(今日は少し体を流そうかな)
煮沸して綺麗にしておいた水を頭からかぶる
(冷たい。けどしょうがないな)
汚れたところを落としてからタオルで拭いて出る。
するとミアは食べ終わったようで、毛布の上で丸まっていた
(暑くないのかな)
「今度毛を切ってあげるね」
頭を撫でてからさっき食べた缶詰を水で洗う。
「虫が湧いたら敵わないからな」
こんな状況になっても虫にすら出会わないのはこのおかげだろう。
なかなかに綺麗になった缶詰を立てかけて手を洗ってから隣の空き部屋に入る
空き部屋には洗濯物が干してあり窓からはもう日の光は見えなかった。
みゆは干してあった服を手に取り少し撫でてから隣にある箱にしまった。
(何個か綺麗な服があって良かった。)
みゆは空き部屋を出て先ほどのローテーブルの前に座りアンティーク調の分厚いノートを取り出した。
そして書き綴ってゆく。
今日起きたことミアの様子。明日の予定。そして彼女の空想の物語まで。
明日もこの世界で生きてゆくためにこの時間はルーティーンになっていった。
(明日は水を取りに行こうかな、それ以外は特にやることはないから近くの丘にでも行ってみよう。)
ゆっくり本を閉じて、
「よし」
そう小さく呟いてみゆは立ち上がる。
月の位置から見て現在時刻約11時。
少女、みゆは飼い猫のミアと共に布団に入り就寝した。
これは終末世界で一人の少女と一匹の猫がただただ生きてゆくお話。
読んでくれてありがとう。
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