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『鳴かず飛ばずのピン芸人、異世界で「なんでやねん!」と言ったら魔王軍が半壊した件 ~切れ味鋭いツッコミは、もはや因果律崩壊の即死魔法でした~』  作者: セルライト
第1章:お笑い地獄から、物理地獄へ

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8/21

第8話:一万人のピラミッドが倒れてくる絶望を、お前は見たことがあるか!


 フェンリル・パレスの草原は、もはや戦場という名の「巨大な舞台」と化していた。

 アキラの放ったツッコミの衝撃波で、先陣のオークたちはキャラメル色に焦げ付き、街道には甘い香りが漂っている。

 だが、魔王軍・無言サイレント師団の本領はここからだった。


「キキッ……。……第一形態、『だるまさんが転んだ』……終了」


「第二形態……『組体操』……開始……」


 一万の魔物たちが、一斉に無言で動き出した。

 彼らは武器を捨て、互いの肩に足をかけ、泥まみれの地面に四つん這いになる。


「……は? 組体操? お前ら、運動会でも始めるつもりか?」


 アキラの予感は、最悪の形で的中した。

 一万の魔物が、驚異的な統率力で積み重なっていく。

 土台となるオークの上に、敏捷なゴブリンが乗り、その上にスケルトンが立ち、頂点には先ほどのアフロ・デーモンが君臨する。


「…………一万人の人間ピラミッド、高すぎやろがい!!!」


 ドガァァァァン!


 アキラのツッコミで、後方の森が一つ消し飛んだ。


「おい! 雲を突き抜けとるやんけ! 頂点の奴、酸素薄くて意識朦朧としとるぞ!

 しかも、一番下のオーク! 膝がガクガクやんけ!

 プルプル震えながら『耐えてます』みたいな顔すな!

 自重で潰れるのが先か、俺がツッコむのが先か、チキンレースでもしとんのか!!!」


 だが、魔王軍は止まらない。

 巨大な「肉の塔」が、ゆっくりと、物理法則を無視した角度で街の城壁に向かって倒れ込もうとしていた。


「キキッ……。……必殺、『大崩落サヨナラ・ホームラン』……」


「……ネーミングセンスが古臭いわ!!!

 倒れ込むだけで必殺技にするな!

 ただの重力に従った自爆やろが!!!」


 この絶体絶命の瞬間。アキラの隣で、聖女エルナが動いた。


「アキラ様、見て! 私のタコちゃんが、ついに『進化』したわ!」


 見ると、エルナが抱えていたタコの吸盤が、不気味に赤く発光している。

 タコはいつの間にか、アキラの鞄から盗んだ**「メガホン」**を八本の足で器用にホールドしていた。


「タコに拡声器持たせてどうすんねん!

 そいつ、鳴き声とかないやろ!

 『キュ~』とか言わせて、敵を萌え死にさせる作戦か!

 甘いわ! 魔王軍の心は鋼鉄ボケでできとるんやぞ!!!」


「いいえ、アキラ様。この子は……あなたの『ツッコミ』を録音して、無限ループで再生する『ディレイ・タコ』になったのよ!」


 『……遅すぎやろがい!……遅すぎやろがい!……遅すぎやろがい!』


 メガホンから、アキラの声がハウリングしながら大音量で流れ出した。



「…………著作権侵害やないか!!!

 俺の声を勝手にサンプリングすな!

 しかも、エコーかけすぎて何言っとるか分からんくなっとるぞ!

 ただの『ノイズまみれの関西弁』を世界中にバラ撒くな!!!」



 ズガガガガァァァン!!!



 アキラのツッコミが「自分の声」と干渉し、空中で複雑な衝撃波ハウリング・バーストを形成。ピラミッドの中層部にいたゴブリンたちが、鼓膜を押さえて次々と落下していく。

 さらに、騎士ルビィがその落下地点に飛び込んだ。


「アキラ殿! 見ろ、空から魔物が降ってくる!

 これは、神が私に与えた『千本ノック』……!

 さあ、落ちてくる魔物たちよ! 私の鎧のかどに、的確に急所をぶつけてくれ!!」


 ルビィは、なぜか**「鎧をわざと半壊させ、隙間だらけの状態」**で、落下するゴブリンを全身で受け止めていた。


「…………キャッチすな! 迎撃しろ!

 お前、それは防御じゃなくて『人間クッション』やろが!

 『痛いけど……もっと……』みたいな顔で空を見上げるな!

 お前の騎士道は、マゾヒズムという名の底なし沼に沈んだんか!!!」


 アキラは、叫び続けた。

 右から来るエルナのシュールな発明に、左から来るルビィの変態行為に、そして正面から迫る一万の魔物の集団ボケに。

 そして。

 獣人少女シズクが、アキラの足元に跪いた。

 彼女は無言で、自分のノートにこう書きなぐった。


『アキラ様。一万の軍勢のリーダーは、あのピラミッドの頂点。

 あいつに、あなたの「最高の一言」を叩き込んで。

 そうすれば、私は……あなたの「所有物」になってもいい』


「……条件が重いわ!!!

 勝手に契約書ノートを更新するな!

 あと、所有物ってなんや!

 俺はお前を、もっとまともな『普通の女の子』として救いたいんじゃ!!!」


 アキラは大きく息を吸い込んだ。

 ピラミッドの頂点、アフロ・デーモンが今まさに街へと倒れ込もうとしている。

 アキラは右手を突き出し、喉の奥にある全エネルギーを一点に集中させた。


「ええか、お前らぁぁぁ!!!

 一万も集まって、真面目に戦争もせんと……!!

 組体操で街を潰そうなんて……!!

 そんな……そんな……」

 「……そんな、効率の悪い嫌がらせ、世界が許しても俺の喉が許さんわぁぁぁ!!!」



 ドドドドドドォォォォォン!!!!!



 過去最大。いや、歴史上類を見ないレベルの「真実の弾劾ツッコミ」が放たれた。

 光の柱がピラミッドを貫き、一万の魔物たちが一瞬で白一色の世界へ消えていく。

 だが。


「……ガハッ……!?」


 爆発の余韻が冷めやらぬ中。

 アキラの膝が、崩れた。

 カハッ、と短い咳。

 アキラの口から、鮮血が地面に飛び散った。


「アキラ様!?」


「アキラ殿!!」


 駆け寄るエルナとルビィ。

 シズクも目を見開き、震える手でアキラの背中を支える。


「……あ、あかん。……喉が……焼けるように……熱い……」

 アキラの喉は、酷使に次ぐ酷使で限界を突破していた。

 「ツッコミ」という名の物理法則書き換え魔法。その代償は、彼の声帯に致命的なダメージを与えていたのだ。 


「そんな……。ツッコミすぎで吐血する勇者なんて……。アキラ様、喋っちゃダメ!」


「……ふ、ふん。……喋らな……こいつらに……ツッコミ入れられへん……やろ……」


 アキラの声は、今にも消えそうなほど掠れていた。

 だが、無情にも魔王軍の残党――さらに巨大な、二万の増援の足音が、地平線の向こうから響いてきた。


「キキッ……。……真打……登場……」


 声が出ないアキラ。

 目の前には、さらなるボケの軍勢。

 絶体絶命のピンチ。アキラの意識が、遠のいていく――。

• アキラの容態: 喉の崩壊。

• エルナのタコ: 音声録音機能が故障し、「死ぬわ……死ぬわ……」という不吉な言葉をリピート中。

• 魔王軍の増援: 二万。「全員が全力で滑り散らかす」という新戦術を導入。

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