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『鳴かず飛ばずのピン芸人、異世界で「なんでやねん!」と言ったら魔王軍が半壊した件 ~切れ味鋭いツッコミは、もはや因果律崩壊の即死魔法でした~』  作者: セルライト
第1章:お笑い地獄から、物理地獄へ

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第7話:一万の軍勢が「だるまさんが転んだ」で攻めてくる恐怖を知れ!

森を抜けたアキラ一行の眼前に広がったのは、異世界でも有数の商都『フェンリル・パレス』。獣人たちの活気あふれる街……のはずだったが、その周囲を埋め尽くす「漆黒の軍勢」が、不気味な静寂を撒き散らしていた。


「……なぁ、エルナ。俺、一応聞くけど。あれ、魔王軍やんな?」


 アキラが指差した先。城壁を包囲しているのは、推定一万の魔物たち。

 だが、その様子が、アキラの知る「軍隊」の概念を根底から破壊していた。


「ええ、アキラ様! あれこそ魔王軍・第一軍団、通称『シュール・サイレント師団』よ。彼らは戦場において一切の無駄口を叩かず、ただひたすらに『意味不明な行動』を繰り返すことで、敵兵の精神を錯乱させ、最終的に自害セルフ・ツッコミに追い込むという最凶の部隊なの!」


「……精神攻撃特化型か。で、あいつら今、何してんねん」

 アキラが目を凝らすと、一万の魔物たちが一斉に、城壁に向かって**「だるまさんが転んだ」**をしていた。

 一万匹のオーク、ゴブリン、スケルトンが、一斉にガサガサと動き、幹部らしき巨大なデーモンが「ダルマサンガ……コロンダ!」と叫んだ瞬間、ピタッ、と静止する。


「…………進軍スピード、遅すぎやろがい!!!」


 ドガァァァァン!


 アキラの我慢が限界を迎え、街道沿いの巨岩が粉砕された。


「おい! 城門まであと500メートルはあるぞ!

 一歩進むたびに止まって、ポーズ決めて、何分かけるつもりや!

 お前ら、攻城戦を放課後の遊び感覚でやっとんのか!

 しかも、あそこのスケルトン! 止まった時に骨が一本落ちたからって、律儀にアウトになって退場すな!

 戦争やぞ! ルールを厳格に守る誠実さを、もっと別の……『侵略』とかに使え!!!」


 アキラの全力ツッコミが戦場に響き渡る。

 すると、一万の軍勢がピタリと止まり、全員がゆっくりとアキラの方を振り返った。


「キキッ……。……ツッコミ、入った」


「待機……。……ターゲット、変更……」


 魔物たちが、一切の感情を排した無機質な声で囁く。

 彼らにとって、ツッコミを受けることは「ネタが完成した」ことを意味し、さらなる「ボケの波」を繰り出す合図なのだ。


「……っ、アキラ殿! 危ない!」


 ルビィがアキラの前に躍り出た。彼女は、鎧の下に仕込んでいた「大量の鈴」をシャンシャンと鳴らしながら、上気した顔で叫ぶ。


「見てくれ、アキラ殿! 私もこの街を守る騎士として、魔物たちの『静寂のボケ』に対抗して、『騒音の自爆』を試みている!

 この鈴の音、耳障りだろう!? 鬱陶しいだろう!?

 さあ、この愚かな鈴虫女を、もっと激しく揺さぶってくれ!!」


「……お前、うるさいわ!!!

 戦場をチンドン屋の練り歩きにするな!

 お前のその『自称・騎士の誇り』、どこで鈴と交換してきたんや!

 敵より先にお前の騒音で街の人がノイローゼになるわ!!!」


 ズガァァァァン!!!


 ツッコミの衝撃でルビィが吹き飛び、ついでに鈴の振動波が魔王軍の前衛を数体粉砕する。


「……ああっ、快感の衝撃……! アキラ殿の怒声が、私の耳垢みみあかごと不純物を掃除していく……っ!」


 恍惚とするルビィ。 


 その横で、エルナは巨大な**「タコ型の気球」**を膨らませていた。


「アキラ様、見て! 私の新しい奇跡『ホーリー・オクトパス・バルーン』よ!

 この気球から、聖なる吸盤を大量に降らせて、敵の頭を吸い取ってやるわ!」


「……やめろ! 地獄絵図やないか!

 空からタコの足が降ってくる戦場、誰が守りたいと思うねん!

 聖女の加護って、もっとこう……光の矢とか、癒やしの光やろ!

 お前の加護は、ただの『食材の散布』なんじゃ!!!」


 アキラの叫びは、まだ始まったばかりだった。

 街の正門がゆっくりと開き、そこから一人の少女が姿を現した。

 灰色の耳、力強い尻尾。獣人の少女シズクだ。

 彼女は、魔王軍一万を前にしても一切怯まず、おもむろに腰から「一本の長い棒」を取り出した。

 アキラは思った。(おお、あれが伝説の槍か、あるいは魔力を持った杖か……!)

 だが、シズクが掲げたのは、**「巨大な綿菓子」**だった。


「…………お前もかぁぁぁ!!!」


 シズクは無言で、綿菓子を魔王軍に向かって「ふりふり」と振った。

 魔王軍のオークが、釣られるように「あーん」と口を開けて近づいていく。


「餌付けすな!!! 野生動物の保護区かここは!

 お前、その綿菓子で世界を救えると思っとんのか!?

 ベタベタして敵が動きにくくなる……とか、そんな計算高いボケじゃないやろ!

 ただただ、甘いもんを提供しとるだけやないか!!!」


 ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!


 アキラの魂の絶叫が、フェンリル・パレスの平原を真っ白に染めた。

 綿菓子はツッコミの熱量で一瞬にして焦げたキャラメルへと化し、周囲のオークたちをまとめて「甘い爆発」に巻き込んでいく。

 シズクは、爆風の中で乱れた耳を揺らしながら、無言でアキラを見つめた。

 その瞳には、恐怖ではなく、深い「信頼(という名の期待)」が宿っていた。


「……っ!?(この人の声……胸の奥まで、響く)」


 シズクはノートを取り出し、一言だけ書いた。 


『もっと。激しく。突っ込んで』


「……フォントを大きくするな! 意味が深くなるやろがい!!!」


 魔王軍一万、身内(ボケ担当)三名。

 四面楚歌、ならぬ四面ボケ。

 アキラの異世界・第1章完結編、その幕が、爆発音と共に切って落とされた。

【第7話・戦況報告】

• アキラの喉の状態: 既にガラガラ。

• シズクの武装: 焦げた綿菓子(物理攻撃力:0 / 誘惑力:100)。

• 魔王軍の進捗: 「だるまさんが転んだ」にて、ようやく城門まで498メートル。

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