第6話:深夜の女子会はボケの博覧会か! ~残業ゴブリンと騎士のMっ気~
深夜の森。
アキラ一行が野営をしていると、暗闇から「カチッ、カチッ」と不気味な音が響いてきた。
「……何や。今度は何の音や」
アキラが身構えると、現れたのはボロボロのスーツを着た一匹のゴブリンだった。
昨夜壊滅した「営業二課」の唯一の生き残り――係長だ。
彼は焚き火の明かりの中に現れると、懐からおもむろに**「ノートパソコン(石盤)」**を取り出し、アキラの前で膝をついた。
「キキッ……。勇者様……。申し訳ありませんが、急ぎの案件が……。
こちら、明日の朝イチまでに確認をお願いします……」
「…………判子押すかぁぁぁ!!!」
アキラの右手が、深夜の森を青白く照らす。
「お前、仲間全滅したんやろ!? なんで一人で『休日出勤』しとんねん!
その石盤の画面、ヒビ入って何も見えへんやろが!
『朝イチまでに』って、俺らはお前のクライアントか!
殺し合う相手に納期を守らせるな!
お前が一番に確認すべきは、自分の寿命やろがい!!!」
ドガァァァァン!
アキラの深夜ツッコミにより、係長ゴブリンは「納期」という概念ごと爆散した。
後に残ったのは、なぜか「領収書(木の葉)」の山だけだった。
「……はぁ。深夜まで働かされて、最後はツッコまれて爆発……。
魔王軍の福利厚生、どうなっとんねん」
アキラは溜息をつき、焚き火の方を振り返った。
だが、そこにはゴブリン以上の地獄が待っていた。
「アキラ様、お疲れ様! 係長さんへの素敵なツッコミ、痺れたわ!」
聖女エルナは、相変わらずタコを愛でていた。
だが、今日のタコは……なぜか**「ビジネスネクタイ」**を頭に巻いていた。
「……エルナ。そのタコ、宴会部長か?
さっきのゴブリンの遺品か?
なんでタコの頭にネクタイ巻いて『お疲れ様です!』みたいなポーズさせてんねん!
吸盤でネクタイ固定すな! 生臭い上司か!!!」
「あら、アキラ様。これはタコちゃんの『労い(ねぎらい)』よ。
見て、この八本の足でネクタイを締め上げる……これぞ社会の荒波に揉まれる戦士の姿よ。
ああ、吸盤が私の頬に吸い付いて……これが『癒やしの接待』ね……っ!」
「それは単なる捕食や! 接待で相手を食おうとする奴がおるか!
アキラは、悦に浸る聖女から目を逸らし、隣に座る重騎士ルビィを見た。
彼女は、鎧を脱ぎ捨て、薄いアンダーウェア一枚で正座していた。
その手には、自らを縛るための「事務用のシュレッダー(手動式)」を握りしめている。
「……ルビィ。お前、今度は何や。なんで深夜にシュレッダー回しとんねん」
「…………っ、はぁ、はぁ……。アキラ殿。
私は……騎士としての機密文書(ルビィの恥ずかしい日記)を、自らの手で粉砕しているのだ……。
だが、見てくれ。このシュレッダー、噛み合わせが悪くて、なかなか裁断できない。
ああ……! この『仕事が進まないもどかしさ』……!
さあ、アキラ殿! この無能な私に、もっと鋭い『進捗確認』という名の罵倒を浴びせてくれ!」
「……ドMの残業申請すな!!!
自分の日記をシュレッダーにかけるのは勝手やけど、なんでそんなに嬉しそうなんや!
『お前の仕事は遅いんだよ!』って言ってほしいんか!?
お前、騎士団にいた頃、わざと報告書遅らせて説教待機してただろ!!!」
ズガガガガァァァン!!!
アキラの全力の進捗確認が、ルビィの精神を直撃した。
物理的な衝撃波で、シュレッダーは粉々になり、ルビィは地面を転がる。
「くっ……あぁぁぁ……! 今の……今の『報告書遅らせてただろ』という図星……最高だ……!
アキラ殿の言葉が、私のサボり癖(M心)を直接抉っている……!
もっと……もっと私の『給料泥棒』っぷりを暴いて、ボロボロにしてくれ!!」
「立ち上がってくるな! その顔で近寄るな!
お前、騎士の誇りはどこに捨ててきたんや!
その格好のまま、さっきのゴブリンの会社に履歴書送ったろか!
『窓際族のドM騎士』として第二の人生歩め!!!」
「あああっ、窓際族……! なんという甘美な響き……っ!」
ルビィは、もはや恍惚の表情で地面をのたうち回っている。
アキラは、もはやツッコむ体力さえ削り取られていた。
「……もう、嫌や。俺、なんでこんな変態二人に囲まれて旅してんねん。
魔王倒す前に、俺の精神が労災認定されるわ」
アキラは、満天の星空を見上げながら、深い、深い溜息をついた。
世界を救う旅は、今夜もボケの爆発音と共に更けていく。
【アキラの現在の状況】
• HP:80(精神的過労死寸前)
• MP:0
• スキル:【真実の弾劾Lv.6】
• 現在の被害:ゴブリン係長(爆散)、ルビィのシュレッダー(全壊)、アキラのテント(未だに再建できず)




