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『鳴かず飛ばずのピン芸人、異世界で「なんでやねん!」と言ったら魔王軍が半壊した件 ~切れ味鋭いツッコミは、もはや因果律崩壊の即死魔法でした~』  作者: セルライト
第1章:お笑い地獄から、物理地獄へ

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第5話:野宿の火が強すぎるし、ゴブリンの武装は意味不明すぎる!


 王都を追放されてから三日。

 アキラ一行は、魔王領へと続く険しい街道を歩いていた。

 周囲はうっそうとした森。文明の気配はない。

 夜の帳が下りようとする中、アキラは地面に座り込み、深く、深いため息をついた。


「……なぁ。俺、もう一回確認するけど。俺、勇者として召喚されたんよな? 異世界を救う希望の星なんよな?」


「ええ、そうよアキラ様! 私の水晶タコがそう告げているわ!」


 エルナは、焚き火のそばで相変わらずタコを愛でている。

 ちなみに今日のタコは、なぜか**「小さな麦わら帽子」**を被っていた。


「……そのタコに帽子を被せるセンス、どこから湧いてくるんや。タコに日射病の概念はないやろ! そもそも今、夜やぞ! 街灯もない森で日除けしてどうすんねん!」


 パァァァン!


 アキラのツッコミの余波で、焚き火の薪が一本、勢いよく爆ぜた。


「ひゃっ! さすがアキラ様、ツッコミ一つで火力調整もバッチリね!」


「火力調整ちゃうわ! 薪が悲鳴上げとるんじゃ!」


 アキラは視線を横にやった。

 そこには、重騎士のルビィが、必死に「野営の準備」をしていた。

 アキラに言われて鎧を正しく着直した彼女だったが、今度は別の問題が発生していた。


「アキラ殿! 見てくれ、テントを張ったぞ! 私の騎士としての意地を見よ!」


 ルビィがドヤ顔で指差したのは、巨大な布の塊だった。

 だが、それはテントではない。

 彼女は**「自分のマント」**を四隅の木に縛り付け、その下に潜り込もうとしていた。


「……おい。それ、ただのハンモックの失敗作やろ」


「何を言う! これこそが騎士団に伝わる『緊急野営術マント・シェルター』だ!」


「嘘をつけ! 隙間だらけで雨風どころか、虫も入り放題やんけ! お前、さっきからマントの紐が首に食い込んで、顔が紫色になっとるぞ!

 『守備のスペシャリスト』自称するなら、まず自分の気道を確保しろ!

 窒息死する騎士とか、魔王軍も笑うに笑えんわ!!!」


 ドガァァァン!


 ツッコミの衝撃で、マントを縛っていた紐が千切れ、ルビィは地面に顔面から激突した。


「ぐはっ……! 素晴らしい……。アキラ殿の鋭い指摘が、私の甘い生存戦略を粉砕してくれた……。ああ、脳が揺れる……心地よい……」


「喜ぶな! 脳震盪やそれは!」


 アキラは天を仰いだ。

 聖女はタコと会話をし、騎士は自爆に快感を覚える。

 このパーティーに「まとも」という概念は存在しないのか。


「……もうええわ。俺がやる。お前ら、そこに座ってタコと心中しとけ」


 アキラは、売れない芸人時代の「過酷なロケ(という名の土木作業バイト)」で培った手際の良さで、あっという間にテントを張り、適切な火力の焚き火を作り上げた。


「……はぁ。異世界に来てまで、なんで俺が一番働いとるんや」


「アキラ様、お疲れ様! ほら、ご褒美に私の手料理を食べて?」


 エルナが、差し出したのは……**「紫色の液体に、タコの足が一本突き刺さった何か」**だった。


「…………これ、何?」


「『聖女特製・元気が出るスープ』よ! 隠し味に、私の愛と……あと、そこらへんに生えてたトゲトゲのキノコを入れたわ!」


「毒薬やないか!!! トゲトゲのキノコはだいたい毒やろが!

 元気が出る前に、天国への階段が見えるわ!

 愛とか言う前に、厚生労働省の許可取ってこい!!!」



 ドゴォォォォン!!!



 アキラの全力ツッコミにより、スープの鍋が中身ごと蒸発した。

 その時だった。

 ガサガサ……。

 暗闇の中から、無数の赤い光が一行を囲んだ。


「キキッ! 人間、発見! 美味そうな、人間!」


 現れたのは、十数匹のゴブリン。

 緑色の肌、尖った耳。ファンタジー界の最弱モンスターだ。


「……やっとまともな敵が出てきたな。よし、エルナ、ルビィ。お前らのボケで荒んだ俺の心を、こいつらの爆散で癒やすわ」


 アキラが立ち上がろうとした。

 だが、月の光に照らされたゴブリンたちの姿を見て、アキラは再び硬直した。


「…………は?」


 そこにいたゴブリンたちは、脆弱どころではなかった。

 彼らは全員、**「最先端のビジネススーツ」をパリッと着こなし、右手には「アタッシュケース」を、左手には「折りたたみ傘」**を持っていた。


「……なんや。なんやねんお前ら。これから接待か?」


「キキッ! 我ら、魔王軍・営業第二課! これより、貴様らの命を『コストカット』させてもらう!」


 リーダー格のゴブリンが、アタッシュケースからおもむろに**「名刺」**を取り出し、アキラに差し出した。


「こちら、我が社のパンフレットです。死ぬ前にご一読を」


「読めるかぁぁぁ!!! 暗いわ!!!」


 アキラの右手が、怒りで青白く発光する。


「お前ら、魔物やろ!? 棍棒振り回して『ウギャー!』って襲ってくるのが仕事やろ! なんでサラリーマンのコスプレしとんねん!

 名刺交換の作法は完璧やけど、出すタイミングが殺し合いの最中っておかしいやろ!

 ビジネスマナー講師に謝れ!!!」


 ズガァァァァン!


 名刺を持っていたゴブリンが、ビジネスマナーの矛盾を突かれ、名刺ごと爆散した。


「キキッ!? 課長がやられた! おのれ、ならばこれを受けろ! 必殺『サービス残業(物理)』!!!」


 ゴブリンたちが、折りたたみ傘を抜刀し、アキラに斬りかかってくる。


「傘を剣にするな! 親に教わらんかったんか、危ないやろが!

 しかもその傘、ビニール傘やんけ! 強度が知れとるわ!

 『サービス残業』って言いながら、お前らめっちゃ元気に定時(襲撃)守っとるやんけ!

 ブラック企業ぶるなら、もっとこう……目がバキバキで、栄養ドリンク片手に震えながら襲ってこい!!!」


 ドガガガガァァァン!!!


 ツッコミの嵐が、ビジネスゴブリンたちを次々と粉砕していく。

 「サービス残業と言いつつ健康そう」という矛盾、「ビニール傘での物理攻撃」という無理筋。

 それらすべてが、アキラの言葉によってエラーとして処理され、この世から消去されていく。


「最後や、そこのアタッシュケース持ち!!! お前、中身見せてみろ!」


 アキラが指差すと、生き残ったゴブリンが震えながらケースを開けた。

 中に入っていたのは……大量の**「バナナ」**だった。


「……バナナかぁぁぁい!!! 書類入れろや!

 お前、営業中におやつ食べる気満々やろ!

 仕事舐めとんのか! 猿か! ゴブリンか! どっちやねん!!!」



 ドゴォォォォォォォォォォォン!!!!!



 アキラの魂の叫びが、夜の森を真っ白に染め上げた。

 爆発の衝撃波で、森の木々が数メートルなぎ倒され、ゴブリン営業二課は全滅。

 後に残ったのは、綺麗に皮が剥けた大量の焼きバナナだけだった。


「……ふぅ。……まともな敵が、おらん」


 アキラは、焼きバナナを一本拾い、虚しく口に運んだ。

 甘い。驚くほど糖度が高い。


「アキラ様、お見事だわ! まさかゴブリンの営業戦略を、言葉一つで破綻させるなんて!」


「アキラ殿! あのバナナのツッコミ……私、今度からバナナを見るたびに貴殿の声を思い出して震えてしまいそうだ……っ!」


 キラキラした目で自分を見る二人に、アキラは力なく返した。


「……もうええ。バナナ食って寝るぞ。明日は、もっとマシな世界になってることを祈るわ」


 だが、翌朝。

 アキラが目を覚ますと、ルビィが「鎧の中にバナナを詰めて、天然のクッションにした」と自慢げに話しており、アキラのモーニング・ツッコミで森がまた一つ消滅することになるのを、彼はまだ知らない。

【アキラの現在の状況】

• HP:110(焼きバナナの栄養で少し回復)

• MP:0

• スキル:【真実の弾劾ツッコミLv.5】

• 現在の被害:ゴブリン営業二課(倒産)、森の木々(伐採)、エルナの鍋(蒸発)

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