第27話:静寂の影(ストーカー)対 爆音の筋肉(プロレスラー)! シズクの「執念深すぎる氷結」
一行が辿り着いたのは、空気そのものが煮えたぎる「マッスル村」。
そこは、四天王の一人、**『情熱のバーニング』**の魔力によって、全住人が「声の大きさ」と「筋肉の体積」だけでヒエラルキーを決める、内向的な人間にとっての地獄絵図だった。
「……ッ、暑っ苦しいわ!! 門を潜った瞬間、空気の中に『汗の結晶』が浮いとるぞ!!
なんやあそこの子供、縄跳びの代わりに『極太の鎖』を回しとるやないか!!」
「アキラ様、深刻な環境汚染です。この村の湿度、120%を超えています。原因は全て、男たちの無駄な熱唱とポージングから発せられる蒸気です。……不潔の極みです。この村ごとドライクリーニングに出すべきです」
ミリティが鼻をつまみ、杖から「超強力デオドラント・バリア」を展開する。
しかし、この「熱狂」を誰よりも嫌悪していたのは、アキラの背後に完全に溶け込んでいたシズクだった。
(……アキラ様。……この村、不愉快。……男たちが、……テカテカのオイルを塗りたくって、……アキラ様の神聖なパーソナルスペースを、……脂ギッシュに汚そうとしてる。……全員、……真空パックに詰めて、……冷凍保存してあげる)
シズクの瞳が、怒りでマイナス273.15度(絶対零度)に凍りつく。
「ガッハッハ!! 魂をビルドアップしろ!!
この村に『静寂』を求める者は、俺の大胸筋でプレスしてくれるわ!!」
巨大な爆炎と共に、四天王**『情熱のバーニング』**が、スクワットをしながら現れた。
彼は自らの腹筋を洗濯板のように使い、服を洗うフリをしながら威圧感を放つ。
「勇者よ!! そのヒョロガリな体躯を、俺の『熱血パワー』で、
パンパンに膨らませた『筋肉風船』に変えてやるわ!!」
「……黙れ。……うるさい。……アキラ様の鼓動以外の音を、……この世に残すな」
シズクが、音もなくバーニングの足元……その「影」を侵食し始めた。
「……お前の筋肉。……よく見たら、……鍛え方が偏ってる。……右腕だけ太いのは、……夜中に一人で、……自分のポスターを見ながら、……うっとり自撮りしてるからでしょ? ……その『自撮り専用ライト』、……昨夜、……私が影からコンセント抜いといたよ」
「ギ、ギャァァァ!? 昨晩の、誰にも見せていない『俺様タイム』がなぜバレている!?
コンセントの接触不良じゃなかったのか!?」
「……お前の日常、……全部、……記録済み。……日記、……読んだよ。……『本当は、……ささみより、……甘いエクレアが食べたい』……って、……震える字で書いてあった」
「やめてくれぇぇぇ!! 俺の『硬派な情熱設定』が、甘党という『可愛い弱点』でメルトダウンしていくぅぅ!!」
アキラは、シズクの精神攻撃でガタガタと震え出したバーニングに対し、トドメの叫びを放った。
「……お前、四天王やろ!!
一晩中鏡の前でポーズ決めとるヒマがあったら、
『自分の生活習慣の乱れ』と向き合わんかい!!
お前、そのオイルもな!! よく見たら、
**『期限切れのサラダ油』やないか!!
道理で、さっきから揚げ物屋の裏口みたいな匂いがしとると思ったわ!!
お前のその『情熱』はな!!
ただの『深夜の変なテンションでポチった、翌朝に後悔する健康器具』と同じ価値しかないんじゃ!!
ボケェェェ!!!!!」
ドガァァァァァァァァン!!!!!
アキラのツッコミが「サラダ油」を引火点まで追い込み、そのまま爆散!!
中からは、エクレアを隠し持った色白の貧弱な男が現れた。
村は一瞬で涼しくなり、不条理な熱気は霧散した。
「……ふぅ。……シズク、お前。……今回の調査能力は凄かったけどな。……俺のプライバシーも、一応守れよ?」
(……アキラ様。……心配、……無用。……アキラ様のプライバシーは、……私が全部、……管理してる。……今朝、……靴下を右足から履いたことも、……しっかり、……心に刻んである。……逃がさない)
シズクが、アキラの影の中に「GPS機能付きの婚姻届」をこっそり沈める。
「……怖いわ!! 敵より味方が一番ホラーやねん!! ミリティ、何とかしてくれ!!」
(……了解です、アキラ様。……シズク様の『重すぎる愛の痕跡』ごと、
強力な**『記憶消去型除菌剤』**を、この空間全体に散布しますね。……息を止めてください)
「記憶まで消すな!! 俺が誰か分からんくなるやろがい!!」
一行は、涼しくなった村を駆け抜ける。
アキラのツッコミと、シズクの執拗な視線は、次の「記憶の迷宮」でも止まることはなさそうだ。
【現在のパーティ状況】
• アキラの喉: 熱風とツッコミの酷使で、現在、ガラガラ声の「パンク歌手」のような状態。
• ルビィ: 灼熱の中でも「鎧が蒸れて最高です……」と耐え抜いた結果、発汗量がギネス記録を更新。
• エルナ: 焼けた地面を利用して、勝手に「タコの網焼き」を振る舞い、小銭を稼いだ。




