第26話:重力1500gの絶望! 土下座に込めた「下請けの魂」
「プレスの重蔵」を攻略し、断罪の重力回廊を抜けた先に待っていたのは、空を黒く塗りつぶすような漆黒の巨塔「重圧閣」。
そこは四天王の一人、重厚のグラビトンが統べる絶対領域である。
塔の内部、玉座の間へ繋がる大階段に足を踏み入れた瞬間、アキラの全身に「惑星ひとつ分」を背負わされたような衝撃が走った。
「……ッ、ガハッ……! 呼吸が……できへん……!」
ドォォォォォォン!!
アキラの膝が床を割り、そのまま上半身が地面にめり込む。
(……アキラ様! 重力値がさらに上昇、現在は1500gです! 本来の重力の千五百倍……! 血液がすべて足元に溜まって、脳が枯渇してしまいます!!)
ミリティが「抗重力バリア・ウルトラ」を限界まで展開するが、バリア自体が重力に押し潰され、アキラの頭をペシャンコにしようと迫ってくる。
「1500gって何やねん!! 体重70キロの俺が……105トン!?
もう数字がデカすぎて、ピンとこんわ!!
エッフェル塔を背負ってスクワットしろってか!!
グラビトンの野郎、嫌がらせの規模が世界遺産レベルやないか!!」
アキラは地面に顔を押し付けたまま、砂を噛むような思いで声を絞り出す。
玉座の間。重力の嵐が吹き荒れる中心で、彼らはついに「その男」と対峙した。
「プクリン」や「ナルシス」とは比較にならない、圧倒的な魔力。
だが、玉座に座っていたのは、重厚な鎧に身を包んだ戦士……ではなかった。
そこにいたのは、**「異常なまでに分厚い牛乳瓶の底のようなメガネをかけ、猫背でカタカタと魔導端末を叩いている、虚弱そうな中年の男」**だった。
「……あ。……あー。……勇者……きた。……ちょっと待って。今、重力の設定ファイル(config)書き換えてるから……。……あ、またコンパイルエラー出た。……ピコッ」
「……お前が四天王か!! 喋るたびに『ピコッ』ってシステム音が鳴るんかい!!
おまけに何や、その『納期直前のデスクトップから離れられないIT土方』みたいなビジュアルは!!
魔王軍の最高幹部やろ!? もっとこう、闇のオーラを纏って高笑いとかせんかい!!
なんで自分とこの魔力の設定ミスって、キーボード叩きながら小声で焦っとんねん!!」
パキィィィン!!
アキラのツッコミが、重力に逆らってグラビトンの鼻先をカスめる。
「……フン。……無知な……勇者よ。……物理的な暴力は、……古い。……これからは、……重力という名の『サーバー管理』で世界を……支配する……。……あ、またバグった。……1500gが15000gに……」
「死ぬわ!!! 15000gとか、俺がダイヤモンドになってまうわ!!
お前の管理能力、ゴミ以下やないか!!
そんなんで魔王様に『世界、任せてください(キリッ)』って言うたんか!!
無能な管理職のせいで、俺らの命がデバッグ作業に使われとんねん!!」
グラビトンが端末のキーを強打した。
瞬間、アキラたちの周囲の重力が、視覚化されるほどの密度で紫色の稲妻となって凝縮された。
ミリティのバリアが粉々に砕け、ルビィの鎧がミシミシと悲鳴を上げる。
「ぐっ……あぁ……!! アキラ殿、すまぬ……! この『未体験の圧迫感』……。私の変態的な耐性をもってしても……骨が折れる喜びよりも、臓器が縮む恐怖が上回ってしまう……!!」
ルビィすらも地面に這いつくばる。シズクも影の中に潜ることすらできず、薄っぺらくなって地面に張り付いている。
アキラもまた、顔を床に押し付けられ、鼻の穴に床の埃が詰まるほどの重圧を受けていた。
「……フハハ……。……這いつくばれ。……それが、……ワレの……支配……。……あ、負荷で……OSが……フリーズした……」
「フリーズしとる間に、誰がツッコむねん!!
……ええい、負けるか!! お前の設定がバグっとるなら、
俺の『魂のバグ修正』を……地面越しに叩き込んだるわ!!」
アキラは、顔を地面に埋めたまま、両手で床を叩いた。
それは、世界で最も屈辱的で、世界で最も攻撃的な姿勢――『究極の土下座』。
「お前、その姿勢……!! 自分が最強の管理者やと思っとるかもしれんけどな!!
『自分の設定エラーで世界をフリーズさせとる無能』の末路はな!!
謝罪会見のカメラの前で、ハゲた頭を下げるだけなんや!!
お前の今の姿はな、四天王やなくて、
**『納期を守れなかったあげく、不具合を客のせいにしとる三流の下請け業者』**にしか見えんぞ!!
そんなにキーボード叩きたいならな!!
魔王軍のデータ入力のバイトからやり直して、
実家の物置で、お母さんの家計簿でもデジタル化して親孝行せんかいボケェェェ!!!!!」
ドォォォォォォォォン!!!!!
アキラの叫びが、地面を伝わって塔全体を共鳴させた。
その振動は、グラビトンの魔導端末に「物理的な衝撃」として直撃した。
「ギ、ギャァァァ!? ターミナルが……クラッシュした……!!
ワレの……ワレの、三徹して書いたクソコードが……消える……!!」
「書き直せ!! 全ページ手書きで!! 夏休みの宿題を最終日に始めた小学生みたいにな!!」
アキラのツッコミに呼応し、エルナが「重力で圧縮されてカチカチになったタコ」を全力で投げつけた。
タコは重力の影響で「超音速の砲弾」と化し、グラビトンの分厚いメガネにベチャリと張り付いた。
「……アキラ様! 重力が反転します!! 今です!!」
ミリティの叫びと共に、塔の重力が「負」の方向へと振り切れた。
グラビトンは、自分の端末ごと天井に向かって猛烈な勢いで吸い上げられていく。
「お前、その『ピコッ』っていう鳴き声!!
実はただの『パソコンの古いビープ音』やったんやろ!!
お前の本体は、その虚弱な体じゃなくて、
中二病全開で給料つぎ込んだ**『無駄に光る高級ゲーミングPC』**やないか!!
コンセント抜いて、お母さんに『電気代高すぎるから捨てたわよ!』って怒られてこいボケェェェ!!!!!」
ズガガガガッ!! パリン!!
アキラのトドメの一撃で、グラビトンの魔導端末が爆散。
城を支えていた重力魔法が完全に消失し、四天王グラビトンは
「あー、バックアップ取ってねぇ……」
という悲痛な遺言と共に、光の粒子となって消滅した。
重力の呪縛から解き放たれ、塔がゆっくりと崩壊していく中、アキラたちは荒野に立っていた。
アキラの喉は、今度こそ完全に「沈黙」を守っていた。
(……アキラ様、一言も喋っちゃダメです。喉が『オーバーヒートしたCPU』みたいになってますから)
ミリティが、アキラの口をガムテープ(魔法製)で封印する。
(……アキラ様。……四天王、倒した。……次は、もっと強い。
……重力から解放されたアキラ様の体、ふわふわして飛んでいきそう。
……私が、重石になってあげる。……この婚姻届を重りにすれば、……一生地面に縛り付けられる。……完璧)
シズクがアキラの腰に「超重量級の愛」で抱きつく。
「……ムグッ……!!(重いねん!! 物理的にじゃなくて気持ちが!!)」
アキラの心のツッコミが、夜空に響くことはなかったが。
不条理な世界を笑いに変える勇者の旅は、次の「激アツな領域」へと向かっていく。
【勇者:アキラ】
• 称号: 1.5トンの重圧を跳ね除けた下請けの星
• 喉の耐久度: 測定不能(要冷却)
• 1500gの重力下で咆哮した結果、声帯が超高密度化。ささやき声でも小石を砕く破壊力を持つ。
• 特殊スキル:
• 土下座ツッコミ(New): 最も卑屈な姿勢から放たれる、物理法則を無視した衝撃波。
• 多重並列処理(並): 数百のボケを瞬時に識別し、一括でツッコむ。
【除菌魔導士:ミリティ】
• 称号: 魔王軍の給与明細を握る女
• 魔導ランク: 特級クリーナー
• 装備: 四天王のPCの残骸(解析中)
• 近況: グラビトンのサーバーから抜き出したデータにより、「魔王軍の福利厚生が意外とホワイトであること」に驚愕している。
【重騎士:ルビィ】
• 称号: 原子レベルで密な女(物理)
• 防御力: 計測上限突破(硬度10)
• 状態: 鎧が脱げない
• 重力で圧縮されすぎた結果、鎧と肌が分子レベルで結合。本人は「アキラ殿との距離より密だ……」と悦に入っている。
【隠密:シズク】
• 称号: 高重力対応型ストーカー
• 愛の重さ: 2000g相当
• 近況: どんな重力下でもアキラの背後をキープできる特殊歩行術を習得。婚姻届に「耐圧・耐熱加工」を施した。
【聖女:エルナ】
• 称号: 圧縮タコの母
• MP: 急上昇中
• 近況: 重力でカチカチになったタコを「投擲武器」として運用することに味を占めた。
■ 固有武器ステータス
【聖剣:真実の弾劾】
• 現在のレベル: Lv. 26
• 解説:
アキラのツッコミが四天王本人(およびその強力な配下)に直撃し、相手の「存在の矛盾」を暴くたびにレベルが上昇します。
• Lv. 22~24: 量産型ロボット軍団の「虚無のボケ」を数千回捌いたことで、攻撃速度と処理能力が大幅アップ。
• Lv. 25: 「プレスの重蔵」の漬物石設定を粉砕し、**属性:重力(反転)**を微弱ながら獲得。
• Lv. 26: 四天王グラビトンの「管理者(笑)設定」を完膚なきまでに論破したことで覚醒。
【Lv. 26 新解禁エフェクト】
「概念デフラグ」
ツッコんだ相手の設定が「バグ」であればあるほど、その矛盾をエネルギーに変換し、相手の精神を強制的にシャットダウン(気絶)させる確率が上昇しました。




