第24話:鋼鉄のボケ地獄! 喉枯れの勇者と、聖女エルナの「軟体覚醒」
一行の前に立ちはだかったのは、次の村へ続く唯一の関所。そこには、これまでの「残念な配下」とは一線を画す、無機質で圧倒的な威圧感を放つ軍団が待ち構えていた。
「……おい、なんやあれ。……交通機動隊の検問か? それにしては、殺気が鉄板焼きの鉄板くらいアツアツやぞ」
アキラが声を絞り出すが、その喉は度重なる激闘でボロボロだった。
前方には、整然と整列した数百体の自律型ボケロボット、『スベラナイ・ワン』。
全身は鈍く光る超合金。頭部のモノアイが赤く発光し、機械的な駆動音と共に、一斉に「お盆」や「ハリセン」、「謎の覆面」を装備し始めた。
「……アキラ様。これは厄介です。……彼らは感情を持たないため、『恥じらい』がありません。つまり、アキラ様のツッコミで精神崩壊させることが不可能な、計算された『スベり機』です。しかも、そのボケの頻度は秒間10回……。アキラ様の喉では、三分と持ちません」
ミリティが青い顔をして、アキラの喉に「マジカル・加湿バリア」を張る。
「……アカン、一歩歩くたびにボケてきよる。……あいつら、俺を笑い死にさせる気やなくて、ツッコミ過多で『喉を爆発』させる気や……!」
関所の門が開くと同時に、ロボット軍団が起動した。
一体目が「巨大なカツラ」を被りながら、逆立ちで迫ってくる。
二体目が「バナナの皮」を千枚ほどバラ撒きながら、ムーンウォークを披露。
三体目に至っては、自分の腹部から「ハト」ではなく「生きたサバ」を大量に射出し始めた。
『……コンニチハ。……サバ、サバ、……サバ、ダバ、……ダ。……プフッ』
「サバダバダって言うな!! 鮮度が良すぎてピチピチ跳ねとるやないか!!
あと逆立ちのカツラ!! 重力無視して浮いとるぞ!! お前らの設計思想、どうなっとんねん!!」
パキィィィン!!
アキラのツッコミが炸裂する。しかし、相手はロボット。
一体を処理する間に、背後から十体が「変なおじさん」のポーズで迫り、空中からは「タライ」が雨のように降ってくる。
「ガハッ……! ゲホッ!! ……多すぎる!! ボケの渋滞や!!
環状線のラッシュ時より酷いぞ、これ!!」
アキラが膝をつく。喉からはヒューヒューと虚しい音が漏れ、もはや言葉を紡ぐことすら困難な状態。ツッコミ勇者、絶体絶命の危機。
「……ここまで、か……。俺の喉が……先にスクラップになる……」
「……アキラ様! 下がって!!」
その時、一行の背後から、神々しい(?)光を放ちながら一人の少女が前に出た。
聖女エルナである。彼女の頭の上では、いつも以上にヌチャヌチャと激しく蠢く「聖なるタコ」が、ピンク色のオーラを放っていた。
「アキラ様、お休みになって。……ツッコミが届かない鋼鉄の心(回路)には、理屈を超えた『軟体の慈愛』が必要なんです!」
エルナが両手を天に掲げると、彼女の背後に巨大なタコの幻影が浮かび上がった。
「見なさい、機械人形たち! これが深海より伝わりし、聖女の真の姿……!
『ホーリー・スクイッド・エクスパンション(聖なる烏賊足展開)』!!」
「タコやのにイカって言うたな今!! ……あかん、ツッコみたいけど声が出ぇへん……!!」
アキラが喉を押さえて悶絶する中、エルナの周囲から無限の「半透明のタコ足」が噴き出した。
それは実体を持った魔力の塊。タコ足は、迫りくるロボット軍団のボケを、物理的に「無効化」し始めた。
ロボットが投げたタライを、タコの吸盤が空中でキャッチ。
ロボットが踏もうとしたバナナの皮を、タコ足がサッと回収。
そして、サバを射出しようとしたロボットの排出口に、タコ足が優しく、しかし強引に「生姜(魔法製)」を突っ込んだ。
「……機械さん。そんなにスベりたいなら、私が『物理的』にヌルヌルにしてあげます。
さあ、タコちゃんの聖水(分泌液)を浴びなさい!!」
エルナが杖を振ると、関所一帯に大量の「高品質タコオイル」が噴霧された。
超合金の地面は一瞬で、氷の上よりも滑る「ヌルヌル地獄」へと変貌した。
『エラー……。……足元、……摩擦、……消失。……スベリ……スギ……』
ロボット軍団は、自らの意思とは無関係に、四方八方へとスライディングを開始した。
ボケようとしても、立ち上がることすらできない。数千体のロボットが、お互いに衝突し合い、ドミノ倒しのように崩れていく。
「……すごい。……物理的に『スベらせて』、ボケを完封しよった……!!」
アキラが呆然と見守る中、エルナの猛攻は止まらない。
彼女は愛用の「聖なるタコ」を空高く放り投げた。
「最後はこれです!! 全てのボケを吸い込み、無へと帰す究極の癒やし……
『バイオ・マザーズ・サクション(母なる大いなる吸着)』!!」
巨大化したタコが関所の門を覆い尽くし、その数百万の吸盤が、ロボットたちの電子回路から「ボケのデータ」を直接吸い出し始めた。
『アア……。……真面目ニ、……働キタイ。……農業……シタイ……』
ロボットたちが、ボケることを忘れて次々と再起動されていく。
破壊するのではない。エルナの「軟体魔法」は、魔物たちの歪んだ設定を吸い取り、更地に戻してしまったのだ。
数分後。
関所には、ピカピカに磨き上げられ(タコオイルのせい)、大人しく整列したロボットたちの姿があった。彼らはもはや「スベラナイ・ワン」ではなく、ただの「高性能な掃除・耕作ロボ」へと生まれ変わっていた。
「……ふぅ。お疲れ様、タコちゃん」
エルナが、頭に戻ってきたタコを優しく撫でる。
その姿は、間違いなく人々を救う聖女そのものだった。(足元がヌルヌルで、タコ臭いことを除けば)
アキラは、ミリティの魔法で少しだけ回復した喉で、絞り出すように言った。
「……エルナ。お前、たまに……いや、数万回に一回くらい、役に立つな……。
ツッコミの出番、一ミリもなかったけど……今回だけは、感謝したるわ」
「えへへ、アキラ様に褒められちゃった!
じゃあ、ご褒美に、このタコ足の吸盤でアキラ様の喉を内側からマッサージしてあげますね。
さあ、口を開けて! 聖なる触手が入りますよ!!」
「……あかん、やっぱりコイツはコイツやわ。
……助けてくれ、ミリティ!! この聖女を今すぐクリーニングしてくれ!!」
「了解です。アキラ様。エルナ様の邪念(タコ愛)ごと、高圧洗浄機で洗い流しますね」
「私も洗うな!! 嫌ぁぁぁぁ!!」
関所を越え、一行は再び歩き出す。
アキラの喉は依然として危機的状況だが、仲間たちの「異常な頼もしさ」に、少しだけ(本当に少しだけ)希望を見出した
【現在のパーティ状況】
• アキラの喉: エルナの活躍により、一応の休息を得た。しかし「タコ触手マッサージ」の恐怖で、精神的ダメージは最大。
• エルナの成果: 「軟体覚醒」を経験したことで、タコとのシンクロ率が120%に到達。
• ミリティの成果: 放棄されたロボット数体を「全自動洗濯乾燥機」として改造し、パーティーの荷物に加えた。




