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『鳴かず飛ばずのピン芸人、異世界で「なんでやねん!」と言ったら魔王軍が半壊した件 ~切れ味鋭いツッコミは、もはや因果律崩壊の即死魔法でした~』  作者: セルライト
第2章:魔法学園編

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第20話:心の汚れは「概念」ごと。ミリティ、勇者の記憶を漂白せよ!

シズクの「影の包囲網」から一夜明け、アキラの目の下には、もはや化粧では隠せないほど濃い隈が刻まれていた。

朝日は無情にも輝き、一行は再び旅の準備を始める。

エルナは朝食に「タコの踊り食い(タコが社交ダンスを踊りながら口に飛び込んでくる)」を推奨し、ルビィは「寝不足でふらつくアキラ殿に踏まれたい」と足元に転がっている。シズクは無言で、アキラの飲み干したコップの残り香を瓶に詰めていた。


「……もう、ええわ。俺、一回死んでリスポーンしたい」


アキラが力なく呟いた時、その背後に「シュッ」という小気味よい音が響いた。

ミリティだ。彼女は霧吹きと雑巾を手に、アキラの影の形に合わせて地面を磨いていた。


「……アキラ様。今の発言、0.3秒の『負のゆらぎ』を感じました。

 精神の衛生状態が、深刻なレベルで汚染されています」


「お前のせいや!!

 大体、なんで地面の『俺の影が落ちてた場所』を磨いとんねん!

 影が去った後まで清潔にする必要あるか!!」


パキィィィン!


寝不足の割にキレのあるツッコミ。だが、ミリティは動じない。

彼女は杖(耳かき)をスッと掲げ、アキラの鼻先に突きつけた。

「アキラ様。最後は私です。

 皆さんのボケを浴び続けて、アキラ様の『脳内メモリ』はゴミ箱がいっぱいになったパソコンのようになっています。

 ……マジカル・ディスクアップ・クリーン!!」


「横文字で誤魔化すな!!

 お前、今俺の頭の中に直接魔法を流し込もうとしたやろ!

 人の脳みそを洗濯機にかけるなぁぁぁ!!!」


「いいえ、アキラ様。これは『心の断捨離』です。

 不条理なタコ、変態的な騎士、重すぎる獣人……。

 それらの記憶を一度『アーカイブ(圧縮)』して、

 ついでにアキラ様の過去の『恥ずかしい思い出』も、綺麗さっぱり消去してあげます!」


ミリティの瞳が、高圧洗浄機のノズルのように鋭く光る。


「……待て。今、サラッと言ったな。

 『恥ずかしい思い出』を消すって、それ、俺の人格形成に関わる重大なバグやぞ!!

 中学生の時に書いたポエムとか、

 漫才の舞台でスベり倒して逃げ帰った夜の記憶とか……!

 それが無くなったら、俺のツッコミの『深み(悲哀)』が消えてまうやろがい!!」


「……アキラ様。過去に執着するのは、部屋に古い雑誌を溜め込むのと同じです。

 『あの時、右手を光らせて”俺の魂が叫んでいる”とか言っちゃった夜』の記憶……。

 今すぐ、白紙クリーンに戻しましょう!!」


「なんでそれを知っとんねん!!!

 お前、魔法で俺の脳内のフォルダ勝手に漁ったな!!

 プライバシーの侵害や! 精神の家宅捜索や!!

 その思い出は、俺が死ぬ時に『うわあああぁぁぁ!』って叫びながら墓まで持っていくもんや!

 勝手にゴミ箱にドラッグ&ドロップするなぁぁぁ!!!」


ドガガガガァァァン!!!


アキラの魂の叫びが、ミリティの展開した「洗浄フィールド」を突き破る。

だが、ミリティは「ふむ」と頷くと、さらに強力な魔法を練り始めた。


「……頑固な汚れ(黒歴史)ですね。

 では、奥の手です。……マジカル・概念漂白!!

 この空間に存在する『ボケ』という概念そのものを、一時的に無効化クリーニングします!」


ミリティが杖を振り下ろすと、周囲の景色が「真っ白なショールーム」のように漂白された。

すると、どうだろうか。

それまで暴れていたエルナが、真顔でタコを川に逃がし始めた。


「……そうね。聖女たるもの、軟体生物に固執するのは不衛生だわ。

 これからは、純粋な『光』だけを信仰するわね。タコ焼き器も捨ててくるわ」


「エルナが……!? エルナが正気まともになった!?

 タコを捨てた聖女なんて、ただの『光る置物』やないか!!」


さらに、地面に転がっていたルビィが、キリッと立ち上がり、鎧の襟を正した。


「……アキラ殿。先ほどまでの私は、騎士としての誇りを忘れていたようだ。

 これからは、一歩離れた場所で、貴殿を紳士的に守護することを誓おう。

 ……あ、その、私のことは無視して構わない。それが真の礼儀だ」


「ルビィがドMを卒業した……!?

 『無視して構わない』って言うてる時の目が、一ミリも潤んでへん!

 嘘やろ、このパーティーから『不条理』が消えていく……!!」


シズクも、手に持っていた婚姻届の束を、静かに焚き火の中に放り込んだ。


(……アキラ様。個人の追跡は、公共の福祉に反する行為。

 ……私は、あなたの影ではなく、ただの『パーティーメンバーA』として振る舞う。

 ……婚姻届、全部燃やした。……さよなら、執着)


「シズクぅぅぅ!! お前までホワイト企業みたいな顔すな!!

 婚姻届を燃やす時の顔が、まるで『不要な領収書』をシュレッダーにかけてるOLやないか!!」


アキラは周囲を見渡し、絶望した。

そこにあるのは、完璧に清潔で、完璧に理性的で、そして完璧に「面白くない」世界だった。


「……ミリティ。お前……何してくれたんや。

 確かに、俺は『ボケがうるさい』って叫び続けてたけど……。

 でも、こんな……誰もボケへん世界、俺、何にツッコんだらええねん!

 俺の存在意義が、完全にデリートされとるやないか!!」


「……アキラ様。これが、あなたの求めていた『普通の、まともな世界』ですよ。

 さあ、私のことも『便利な掃除用魔法デバイス』だと思って、清々しく旅を続けましょう。

 思い出も、欲望も、汚れも……何もない、真っ白な未来へ!」


ミリティが、感情の消えた笑顔で、アキラに手を差し出す。

その手は、あまりにも綺麗で、あまりにも冷たかった。


「……ふざけんな!!

 『まとも』って、こういうことちゃうわ!!

 タコにまみれても、変態でも、ストーカーでも……!

 そいつらが、生きて、喚いて、失敗して、それを俺が全力で叩き直す!!

 その『無駄』こそが、俺の生きてる実感なんじゃ!!」


アキラは、自分の喉が裂けるほどの声で、真っ白な世界に向かって吠えた。


「お前の魔法は、世界の汚れだけやなくて、『心』まで洗濯してまいよったな!!

 そんな綺麗なだけの世界、俺がツッコミ一発で……泥まみれに戻したるわ!!

 お前の『潔癖魔法』の仕様書、今すぐここで破り捨てろぉぉぉ!!!」


ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!


アキラの、過去最大級のツッコミが炸裂した。

それは、論理を越え、概念を越え、ミリティの「漂白フィールド」を粉々に砕き散らした。

光が弾け、色が戻る。

すると、次の瞬間。


「……あら? 私、なんでタコちゃんを川に流そうとしてるのかしら!

 戻ってきて! あなたがいないと、私の頭頂部が寂しくて死んじゃうわ!!」


「はっ……! 私は今、何を……!?

 アキラ殿に放置されるという『究極の放置プレイ』に酔いしれていたのか……!?

 ああ、なんて罪深い……! さあ、アキラ殿! 今の失態を、1時間ぶっ通しで罵倒してくれ!!」


(……アキラ様。今、婚姻届を燃やす夢を見た。……悪夢。

 ……バックアップの2000枚目を、今すぐアキラ様の靴の裏に仕込む。……離さない)


三人が、いつも通り……いや、いつも以上のパワーでボケ倒しながらアキラに群がる。


「……ぜぇ、はぁ……。戻った……。

 地獄に戻ってきたわ……。……ああ、喉が痛い。最高に喉が痛いわボケ……」


アキラが地面に膝をつくと、隣でミリティが「テヘッ」と舌を出した。

その瞳には、先ほどの無機質な光ではなく、いたずらっ子のような輝きが戻っていた。


「……合格です、アキラ様。

 あなたが『ボケのない世界』を否定してくれた。

 これで私も、心置きなく『世界のバグ(皆さん)』のお掃除に専念できます。

 ……あ、アキラ様。今のツッコミで、また唾液が0.5ミリ飛んで地面を汚しましたね。

 はい、マジカル・モップ!!」


「お前、わざとやったな!!

 俺の存在意義を確認するために、世界を漂白したやろ!!

 この地味な策士め!!

 お前が一番、俺の喉を戦略的に破壊しにきとるやないか!!!」

ドガァァァン!!

勇者アキラと、四人のバグたち。

個別面談を経て、彼らの絆(という名の不治の病)は、より一層深く、修復不能なものへと固定された。


「……よし。休憩は終わりや。(俺だけ全然休憩できてへんけど)

 おい、野郎ども! 荷物まとめろ!

 『バグの核心』へ向けて、出発や!!」

「「「「はーい!!(ギュルルルル/タコの鳴き声)」」」」

アキラのツッコミが、旅立ちの合図となって、どこまでも続く荒野へと消えていった。

• アキラの喉: 「ボケのない世界」の恐怖を知ったことで、以前よりツッコミに「愛の重み」が乗るようになった。

• ミリティの成果: アキラの「ツッコミの必要性」を再確認させ、パーティー内の不動のポジションを確保。

• 全体の雰囲気: 各自が「自分のボケはアキラの生き甲斐」だと勘違いし、第3章での暴走が約束された。

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