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『鳴かず飛ばずのピン芸人、異世界で「なんでやねん!」と言ったら魔王軍が半壊した件 ~切れ味鋭いツッコミは、もはや因果律崩壊の即死魔法でした~』  作者: セルライト
第2章:魔法学園編

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20/21

影は愛の檻(ケージ)。アキラ、毛布と婚姻届の包囲網を突破せよ!

ルビィとの「密室ツッコミ・サウナ」から命からがら脱出したアキラは、もはや自分のテントに戻る勇気を失っていた。あそこはもはや寝床ではない。鋼鉄のドMが潜むトラップルームだ。


「……あかん。どこか、一人で静かに、ボケの飛沫が飛んでこない安全圏で寝たい……」


アキラは、焚き火の残り火を背に、森の少し開けた場所にある大きなブナの木の下へと避難した。ここなら、エルナのタコも届かないし、ミリティの「整列魔法」の対象にもならないはずだ。

だが、彼は忘れていた。

このパーティーにおいて、最も「物理法則」を無視し、かつ「アキラのプライバシー」という概念をバグとして認識している存在がいることを。


(……アキラ様。見つけた。……逃がさない)


背後の木の幹から、音もなく、ぬるりと「影」が染み出してきた。シズクだ。

彼女は獣人特有のしなやかな動きで、アキラの背後にぴたりと張り付いた。その距離、わずか3ミリ。アキラの後頭部に、シズクの冷たい鼻先が触れる。


「うわあああぁぁぁ!! 出たぁぁぁ!!

 お前、木と同化して待機すな!! 忍者の里でもそんな不気味な待ち伏せ教えへんぞ!!」


パキィィィン!


反射的なツッコミが夜の森を震わせる。だが、シズクは瞬き一つせず、無言で大きな「毛布」を広げた。その毛布には、アキラの顔が100個ほど刺繍されている。


(……夜風は、アキラ様の喉の敵。……私が、温める。

 ……この毛布、私の『抜け毛』とアキラ様の『古着の繊維』を1対1で混紡した、運命のハイブリッド

 ……さあ。くるまって。……朝まで、私と一緒に『ミノムシ』になる)


「誰がそんな呪物みたいな毛布にくるまるか!!

 混紡の比率が怖すぎるわ!!

 あと、ミノムシになるのはお前一人で十分や!

 俺を巻き込んで、愛のまゆを作ろうとするなぁぁぁ!!!」


シズクは無言でノートを取り出し、月光の下で高速にペンを走らせた。


『アキラ様。拒絶は、愛のスパイス。

 ……でも、この森の影はすべて私の手足。

 逃げても、影があなたの足を掴む。……ほら、見て』


アキラが足元を見ると、自分の影が意志を持っているかのように動き出し、アキラの足首を「キュッ」と抱きしめていた。


「影に抱きつかせるな!! 自分の影にセクハラされる勇者の気持ちを考えろ!!

 これ、物理的に動けへんやんけ!!

 お前の魔法、使い道が『私物化』に特化しすぎやろがい!!」


(……アキラ様。影は、嘘をつかない。

 ……あなたの影が、私の影と『指切り』したがっている。

 ……あ。今、足元に滑り込ませたのは、影で編んだ「婚姻届ナイトモード」。

 ……足の裏で、受領印を押して。……逃がさない)


「足の裏で契約を結ぶ奴がおるか!!

 ナイトモードってなんや! 闇に紛れて既成事実をロンダリングしようとすな!!

 大体、お前。さっきから無言で俺の耳元でフガフガ鼻を鳴らすな!

 『アキラの匂い指数が上昇中』とかノートに書くな!!

 俺は芳香剤じゃないんじゃ!!」


ドガァァァン!!


アキラのツッコミが、シズクの影の拘束を弾き飛ばした。

その衝撃で、シズクの持っていた「婚姻届ナイトモード」が紙吹雪のように舞い上がる。


(……散った。……でも、大丈夫。

 ……予備の1001枚目は、私の肌に直接タトゥー(魔法転写)してある。

 ……アキラ様が私に触れた瞬間、契約は成立する。

 ……さあ。寒いでしょ? 私の背中に触れて。……受理して)


「お前の体、重要書類の原本か!!

 迂闊に肩も叩けへんやないか!!

 どんなセキュリティ対策やねん!!

 お前の重すぎる愛は、もはやバグを通り越して『世界の仕様変更』レベルやぞ!!」


そこへ、暗闇からピカピカに磨かれたバケツを持ったミリティがトコトコと現れた。


「……アキラ様。シズクさんの影から、わずかに『不純な殺気(欲情)』を感知しました。

 影の汚れは、光で洗うのが一番です。……マジカル・フラッシュ・クリーニング!!」


ミリティが杖を振ると、アキラの周囲が昼間のような爆光に包まれた。

あまりの眩しさに、シズクの影が悲鳴(物理的な無音の振動)を上げて縮んでいく。


「眩しっ!! 目がぁぁぁ!!

 お前、掃除の仕方が極端すぎんねん!!

 『影を洗う』って、物理的に消滅させとるだけやろがい!!」


「あ、すみませんアキラ様。ついでにシズクさんのノートの『婚姻届』の文字だけ、漂白しておきました。

 これでただの白紙のノートです。とってもクリーンですね!」


(……ミリティ。貴様……。

 ……私の『聖典』を、無慈悲にデリートした。

 ……許さない。明日、あなたのパッキングの中に、私の『念がこもった小石』を1万個詰め込む)


「陰湿な報復を予告するな!!

 石を詰められたら、またミリティがそれをサイズ順に並べるっていう、

 無限ループが始まるやろがい!!」


アキラは、爆光の中で悶えるシズクと、淡々とバケツを磨くミリティの間で立ち尽くした。


「……はぁ。もう、どいつもこいつも……。

 俺を寝かせる気が一ミリもないんか。

 このパーティー、夜の治安が世紀末よりひどいわ……」


(……アキラ様。光が消えたら、また戻ってくる。

 ……私は、あなたの影。……光がある限り、私は消えない。

 ……あ。今のツッコミで、喉が少し乾燥した。

 ……私の『特製・喉越し滑らかシロップ(材料不明)』、飲んで。……逃がさない)


「材料不明のものを飲めるか!!

 絶対にお前の毛とか入っとるやろ!!

 お前の献身は、常に『疑惑』とセットなんじゃ!!」


ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!


アキラの最後の一喝が、森の夜鳥を一斉に飛び立たせた。

結局、アキラは朝まで一睡もできず、シズクの「無言の凝視」とミリティの「定期的な除菌」に晒され続けることになったのである。

勇者の喉に「精神的な渇き」という、修復不能なダメージを刻み込んで終わった。

【現在のパーティ状況】

• アキラの喉: 精神的ストレスにより、声のトーンが「不機嫌なバリトン」へと固定されつつある。

• シズクの成果: アキラの影との『指切り』を脳内シミュレーションで完遂。愛の深度がマリアナ海溝を突破。

• ミリティの動向: 森の土壌に含まれる「微細なゴミ」を魔法で除去し、キャンプ地一帯を「国立公園レベルの清潔さ」に保つことに成功。

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