第15話:卒業証書はタコのマフラー!? 学園長、正気(正論)に戻れ!!
魔法学園ラピス・ラズリ。その象徴である時計塔が、朝日に輝く。
今日は、学園の歴史に新たなページを刻む「卒業式」の日だ。
エリート魔導師たちが一堂に会し、厳粛な空気の中で式典が執り行われる……はずだった。
「……おい。エルナ。そこどけ。壇上が見えへん」
アキラは、保護者席(なぜか最前列)で、エルナの後頭部にツッコんだ。
彼女は、寝巻きの法衣のまま、頭の上に一匹のタコを載せ、そのタコの足に**「小さな卒業角帽」**を被せていた。
「しっ、静かにしてアキラ様。今、タコちゃんの『卒業スピーチ』の練習をしてるんだから」
「タコにスピーチさせるな! 鳴き声もないやろ!
あと、その角帽! 昨日の夜、俺の鞄から盗んだ**『黒い布切れ』**で作ったやろ!
俺のパンツやんけ!! タコの頭に俺のパンツを被せるな!!
どんな屈辱的な卒業式やねん!!」
パキィィィン!
アキラの朝イチのツッコミにより、講堂のステンドグラスが軽くひび割れた。
「ひゃうんっ! アキラ様のビブラートの効いたツッコミ……タコちゃんも喜んで吸盤を全開にしてるわ!」
「喜ぶな! 威嚇されとるんや、それは!!」
式典が始まった。
学園長が壇上に上がり、厳かに口を開く。
「……卒業生諸君。君たちは、この学園で多くの魔法を学び、真理を探求してきた。
だが、真の魔法とは、知識ではない。……『遊び心』だ」
「…………(嫌な予感しかせぇへん)」
アキラが身構える中、学園長は杖を振った。
「では、卒業証書授与を行う。……代表、ミリティ!」
地味すぎる魔法少女・ミリティが、おずおずと壇上へ向かう。
彼女は、ハートの杖(先端は耳かき)をギュッと抱きしめ、緊張した面持ちだ。
「……ミリティ。君の、世界の汚れを微細な魔法で落とす『潔癖魔法』。……素晴らしかった。
よって、君には特別に……**『伝説の、拭き取りにくい油性ペンの跡』**を授与する」
「……い、いいんですか!? 私、ずっとそれを魔法で消すのが夢だったんです……!」
ミリティが感激に震えながら、学園長から「油性ペンの跡がついた黒板」を受け取った。
「…………(絶句)」
「……おい。学園長。一回だけ、確認させてくれ。
お前、卒業証書の代わりに、なんで掃除の邪魔になるもんを渡しとんねん!
『油性ペンの跡』って、ただの汚れやろが!
それを授与されたミリティの、将来の夢が『世界一の清掃員』になってまうわ!!
魔法学園の卒業生の進路として、地味すぎるやろがい!!!」
ドガァァァン!
アキラのツッコミで、講堂の天井が軽く抜け、そこから心地よい風が吹き込んできた。
「……おお、勇者アキラ。君のツッコミ、今日も風通しが良いな。
だが、真の卒業証書は、これからだ」
学園長がニヤリと笑うと、壇上に置かれた「卒業証書の束」が、一斉に黄金の光に包まれた。
光が収まると、そこにあったのは紙の筒ではない。
無数に蠢く、生々しい八本の足。……**「タコのマフラー」**だった。
「…………一万本のタコマフラー、生臭すぎやろがい!!!」
アキラの魂の絶叫が、講堂を真っ白に染めた。
「おい! 学園長! 卒業生の首に、なんで生きたタコを巻き付けとんねん!
『タコのマフラー』って、ネーミングセンスが昭和のギャグやぞ!
しかも、あそこの卒業生! タコの吸盤で首筋を吸引されて、キスマークだらけになっとるやないか!
青春の思い出を、軟体生物の吸引痕で上書きするなぁぁぁ!!!」
アキラのツッコミが炸裂する中、エルナが動いた。
「アキラ様、見て! 学園長、タコちゃんの『素晴らしさ』に気づいてくれたのね!
これぞ、聖なるタコの加護! 卒業生全員を、タコの愛で包み込むわ!」
エルナが杖を振ると、講堂の床から巨大な**「タコ型の気球」が膨らみ、空からは「聖なる吸盤」**が雨のように降り注いだ。
「……やめろ! 地獄絵図やないか!
空からタコの足が降ってくる卒業式、誰が祝福したいと思うねん!
聖女の加護って、もっとこう……光の矢とか、癒やしの光やろ!
‘お前の加護は、ただの『食材の散布』なんじゃ!!!」
「あら、アキラ様。タコちゃんも、卒業生を祝福したいって言ってるわ。
ほら、タコちゃんの吸盤が、あなたの頬に吸い付いて……これが『癒やしの接待』ね……っ!」
「それは単なる捕食や! 接待で相手を食おうとする奴がおるか!
そのタコ、さっきから俺のパンツの匂いを嗅ぎつけて、目を血走らせとるぞ!
聖女の慈愛を軟体生物に浪費するなぁぁぁ!!!」
ズガガガガァァァン!!!
アキラのツッコミがエルナのタコ気球を直撃し、講堂はタコのインクで真っ黒に染まった。
タコのインクにまみれた講堂で、ルビィが立ち上がった。
「アキラ殿! 私に任せろ! このタコのボケ……私の盾で受け止めてみせる!」
ルビィは、鎧を脱ぎ捨て、薄いアンダーウェア一枚で、空から降ってくるタコの足に向かって突撃した。
「はぁ、はぁ……! 見ろ、タコの足が、私の全身を無言で拘束してくる……!
ああ……っ! この『身動きが取れない屈辱感』……!
もっとだ! もっと私を効率悪く攻めてくれ!!」
ルビィは、タコの足に絡まり、恍惚の表情で地面をのたうち回っている。
彼女がダメージを受けるたびに、周囲に「鉄壁のオーラ」が広がり、エルナのタコ攻撃を物理的に押し返していく。
「ルビィ、お前の防御の仕組み、やっぱりおかしいわ!
快感が防御力に変換されるとか、どんなバグ技やねん!
あと、そのアンダーウェア姿でタコに絡まるな! 異世界の倫理規定に引っかかるわ!!
お前の騎士道は、マゾヒズムという名の底なし沼に沈んだんか!!!」
ドゴォォォォン!!!
アキラのツッコミがルビィを直撃し、彼女はタコと一緒に講堂の壁を突き破って外へ飛んでいった
そこへ、シズクが無言でアキラの背後に回り込み、アキラの服の裾をギュッと掴んだ。
彼女は新しいノートを取り出し、達筆でこう書いた。
『アキラ様。このカオスな卒業式、私たちの「結婚式」の予行演習にぴったり。
卒業生全員を、私たちの結婚の証人にする。
……あ。今、背中に貼ったのは、婚姻届じゃなくて『世界平和への誓約書(裏面に婚姻届)』。
……逃さない。この騒動の中で、ハンコを押して。……無言で』
「条件が重いわ!!! 勝手に契約書を更新するな!
あと、所有物ってなんや! 俺はお前を、もっとまともな『普通の女の子』として救いたいんじゃ!!!」
「お前もそっち側(ルビィ派)かよ! 仲良くすな!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!
アキラの叫びと共に、講堂の天井が完全に吹き飛び、空には巨大な「なんでやねん」の文字の形をした雲が形成された。
カオスが極限に達した講堂で、ミリティが杖を掲げた。
「……アキラ様。あの『タコマフラー』、よく見ると吸盤の位置が左右非対称です。
魔法で、吸盤の位置を完璧なシンメトリーに整えてもいいですか?」
「お前は空気を読め!!
吸盤の位置を直して、このカオスが止まるかボケ!!
あと、マジカル・耳かきでタコマフラーをガリガリすな! タコが嫌がっとるやろがい!!」
「あ、すみませんアキラ様。……では、仕上げに。ミラクル・卒業証書の修正!!」
ミリティの杖から放たれた光が、講堂中のタコマフラーを包み込んだ。
すると、タコマフラーは、一瞬にして、真っ白な、几帳面に畳まれた**「高級タオル」**へと姿を変えた。
「…………(絶句)」
「……ミリティ。お前、タコマフラーを、なんでタオルに変えたんや」
「だって……。生きたタコなんて、後からホウキで掃くのが大変じゃないですか……。
タオルなら、皆さん家で使えますし……」
「主婦の意見か!!! 卒業証書を、ただの生活用品にするな!!」
学園長が、タオルを首に巻きながら、満足げに微笑んだ。
「……おお、ミリティ。素晴らしい『実用性』の魔法だ。
君こそ、真の遊び心を持った魔導師だ」
「…………(学園長、お前もか)」
アキラは、脱力感に襲われた。
聖女はタコに狂い、騎士はドMに狂い、獣人は重愛に狂い、魔法少女は地味に狂っている。
そして学園長は、そのカオスを「遊び心」として称賛している。
「……あかん。これ、この学園におったら、俺の喉が物理的に消滅するわ」
シズクが無言でノートを掲げる。
(アキラ様。第15話、終了。
アキラ様のツッコミ、本日もマッハで火を噴いた。
| 私の婚姻届、記入欄は『ピカピカ』。
ミリティに磨いてもらった。……あとは、あなたの名前を書くだけ。……逃がさない)
「消せぇぇぇ!! 執着という名のバグを、真っ先にデバッグしたるわ!!!」
アキラのツッコミが、屋根のない講堂から、学園の空を割った。
世界の「バグ」は、まだ始まったばかり。
だが、ツッコミ勇者の喉には、新たな「使命感」という名の激痛が走っていた。
• ツッコミ回数: 108回(除夜の鐘レベル)。
• 喉の状態: ミリティの「マジカル・のど飴」により、なぜかミントの香りがする。
• パーティーの結束: シズクとミリティの間で「どっちがよりアキラの身の回りを管理するか」という地味な冷戦が勃発中。




