第10話:宴会の締めは「万歳三唱」じゃなくて「なんでやねん」やろがい!
魔王軍二万の軍勢(一輪車部隊)が、アキラの渾身のツッコミで地平線の彼方へ消し飛んだ翌日。
獣人の街『フェンリル・パレス』は、未曾有の危機を脱した喜びから、街を挙げた大宴会の準備に沸いていた。
「アキラ様、見て! 街の人たちが、あなたのために最高の『おもてなし』を用意してくれたわ!」
エルナが、今日は頭に**「割り箸」**を刺したタコを掲げてはしゃいでいる。
昨夜、アキラの喉を救ったタコは、役割を終えたのか、すっかり黄金の輝きを失い、元の紫色に戻っていた。そしてアキラの喉から離れると、エルナの頬に「プシュッ」と吸い付いて定位置へと戻っていった。
「……おう。タコ、戻ったんか。首元が急に軽うなって、スースーするわ」
アキラは自分の喉をさすった。タコの吸盤によるマッサージ(?)のおかげか、声帯の痛みは引いている。ここからは再び、自分の地肩(喉力)勝負だ。
アキラが案内された広場の中央。
そこには、この街の最高権力者である**『長老・ガルルム』**が待ち構えていた。
白髪交じりの狼耳を持つ厳格そうな老人……。だが、アキラの視線はその「頭上」に釘付けになった。
長老の頭には、豪華な冠ではなく、**「巨大な回転寿司のレーン」**が載っていた。
「…………(絶句)」
「おお、勇者殿! よくぞ我が街を救ってくれた。さあ、まずはこの『回転・祝杯の儀』を受けてくだされ!」
長老が首を左右に激しく振ると、頭上のレーンが猛スピードで回転し始め、そこに乗った小皿(中身は生レバー)が、遠心力でアキラの顔面に向かって飛んできた。
「…………(パシッ!)」
アキラは飛んできた皿を空中で掴み、全力の地声で吠えた。
「……長老。……一回だけ、確認させてくれ。
お前、それ……首のトレーニング中か!?
なんで宴会のメインディッシュを、遠心力で射出してくるねん!
『回転寿司』の意味を履き違えとるわ! 客に皿をキャッチさせる店がどこにある!
生レバーが顔面に張り付いて、俺の視界が真っ赤やぞ!
お前の首の軟骨がすり減る前に、その無駄なギミックを不燃ごみに出してこい!!!」
ドガァァァァン!
アキラのツッコミが炸裂。長老の頭上のレーンは木っ端微塵になり、飛ばされていた皿がすべて長老の口の中に逆流した。
「……げふぅっ! 素晴らしい……。これぞ伝説の『雷鳴の叱咤』……。
だが、勇者殿。これしきで驚いては困る。祝勝会のメインイベント、獣人族伝統の『キャンプファイア』だ!」
長老が杖を振ると、広場の中央に薪が積み上げられた。
だが、火をつけるのは松明ではない。
百人の獣人たちが一斉に**「巨大な虫眼鏡」**を太陽にかざし、一点の薪を狙い撃ちし始めた。
「…………着火まで何時間かけるつもりや!!!」
アキラの血管がキレた。
「おい! お前ら全員、小学生の理科の実験か!
一万人の軍勢を退けた後に、なんでそんな地味な作業を見せられなあかんねん!
しかも、あそこの猫耳の奴! 自分の尻尾に光が集まって熱がっとるやないか!
街のリーダー格が100人も集まって、誰もライター持ってへんのか!?
文明の利器をボイコットするなぁぁぁ!!!」
ズガガガガァァァン!!!
ツッコミの衝撃波で薪が自然発火(という名の爆発)し、街の広場は一瞬で真昼のような明るさに包まれた。
「……っ、アキラ殿! 今の『文明への指摘』……最高だ!」
横で、ルビィが脱ぎたての鎧を「薪」として焚き火にくべながら、恍惚の表情で震えていた。
「私の……私の高価なフルプレートが、ツッコミの余波で薪の一部に……。
ああ、アキラ殿。もっと私を、資源ゴミのように扱ってくれ……っ!」
「お前はもう、どっかのリサイクルセンターに永住してこい!!!」
宴会が最高潮に達した頃。
長老は満足げに鼻血を出しながら(ツッコミのダメージ)、アキラに告げた。
「勇者アキラ殿……。貴殿のツッコミはこの街を救ったが……同時に、我々の伝統をことごとく破壊した不届き者でもある。
よって、我らフェンリル・パレス評議会は、貴殿を**『永久追放』**とすることに決定した!」
「……おう、ええぞ。むしろこっちからお願いしたいくらいや」
「ただし! 我が街の宝であるシズクが、貴殿についていくと言って聞かないのだ。
シズクよ、本当に行くのか?」
シズクは無言で頷き、アキラの腕をギュッと掴んだ。
彼女は新しいノートを取り出し、達筆でこう書いた。
『追放されるあなたの背中を、後ろからツッコミたい(物理)』
「……お前もそっち側(ルビィ派)かよ! 仲良くすな!!」
翌朝。
アキラ一行は、街の門を(なかば追い出されるように)後にした。
行き先は、魔王軍四天王の次なる拠点が目撃されたという、魔導大国。
「次は魔法学園ね、アキラ様! そこには世界一の魔法使いが集まっているそうよ」
「……魔法学園か。まともな奴が一人でもおることを祈るわ」
その道中。
アキラたちの前に、一人の男が立ちはだかった。
派手な燕尾服を着て、顔にはピエロのようなメイク。背負っているのは巨大な「黒板」と「チョーク」。
彼こそが、魔王軍四天王・第一の刺客。
『理論物理学のメフィスト』。
「フフフ……。野蛮なボケ共を倒した程度で、図に乗るなよ、勇者。
私の戦いは、暴力ではない。……『証明』だ」
メフィストは黒板に猛烈な勢いで数式を書き込み始めた。
「見ろ! 私の魔法理論によれば……『お前のツッコミは、声に出した瞬間にヘリウムガスに変換される』はずなのだ!
さあ、叫んでみろ! 滑稽な高い声でな!!」
「…………変換されるかぁぁぁ!! 質量保存の法則を無視すな!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!
アキラの全力の「なんでやねん」が、メフィストの黒板を粉砕し、彼を空の彼方へと吹き飛ばした。
「……ガハッ!? 理論が……理論が通用しないだと!? なぜだぁぁぁ!!」
「お前の理論、前提条件が『俺を笑わせること』になってるからやボケ!!
出直して、算数からやり直してこい!!!」
アキラは、喉元のタコの吸い跡をさすりながら、再び歩き出した。
「魔法学園……。屁理屈を並べるガキ共が相手か。
ええやんけ。俺が全部、赤ペン先生並みの精度で添削(粉砕)したるわ!!」
こうして、アキラ一行は次なる舞台――魔法学園『ラピス・ラズリ』へと向かう。
そこでは、さらなる理不尽な魔法が彼らを待ち構えていた。
第1章:完
■ 轟木 アキラ(とどろき あきら)
【職業】 異世界唯一のツッコミ勇者
【Lv】 15
【装備】
• 武器: 素手(指差し時の衝撃波は音速を超える)
• 防具: 売れない芸人時代の自前スーツ(タコのヌメリで防水加工済み)
• 装飾: タコの吸盤跡(喉元にあり、声帯を強化中)
【ステータス】
• 攻撃力: 計測不能(ボケが深いほど威力が増大)
• 防御力: 15(基本、避けるかツッコんで相殺するスタイル)
• メンタル(胃壁): 3(ボケの波状攻撃により常に限界)
• 喉の耐久度: 100(タコ補強により、現在は絶好調)
【保有スキル】
• 真実の弾劾Lv.10: 矛盾を指摘し、対象を物理的に爆散させる。
• 環境添削: 物理法則のミス(ボケ)を見つけ、強制修正する。
• 高速スルー: どうしようもないボケを無視して精神を守る(が、大抵失敗する)。
■ エルナ
【職業】 軟体至上主義の聖女
【Lv】 14
【装備】
• 武器: タコ(名前:タコちゃん)
• 防具: 聖女の法衣(ただし、吸盤の跡だらけ)
• 装飾: 割り箸(タコの頭に刺さっているが、理由は不明)
【ステータス】
• 信仰心: 999
• 調理スキル(たこ焼き): 師範代クラス
• 慈愛: 0(タコ以外には基本、無関心)
【固有スキル】
• ホーリー・オクトパス: タコを巨大化させたり、属性を付与したりする。
• たこ焼き・パルプンテ: 具材によって戦場の天候を変える。
■ ルビィ
【職業】 鉄壁(自称)のドM重騎士
【Lv】 18
【装備】
• 武器: 折れた聖剣(「折れている=不完全=辱め」という理由で愛用)
• 防具: 隙間だらけの半壊鎧(アキラにツッコまれるために、わざと破壊)
• 装飾: 自縛用の鎖(常に持ち歩いている)
【ステータス】
• 防御力: 500(ダメージを受けると快感で跳ね上がる)
• 攻撃力: 10(反撃するより、攻撃を受けたい)
• 露出度: 危険水域
【固有スキル】
• 恍惚の盾: 罵倒されるほど周囲に強力な結界を展開する。
• 前後逆の真理: 全方位からの攻撃を「背後(弱点)」として受け止める。
■ シズク
【職業】 猛烈無口な獣人少女
【Lv】 12
【装備】
• 武器: 短剣(護身用)、巨大綿菓子(予備)
• 防具: 獣人の軽装(アキラによく裾を掴まれる)
• 装飾: 婚姻届の束(常に懐に忍ばせている)
【ステータス】
• 素早さ: 200(アキラの背後に回る速度は光速)
• 筆談力: 300(一瞬で長文を書きなぐる)
• 重さ: 愛が重い
【固有スキル】
• サイレント・ボケ: 喋らずに行動だけでアキラの血管をキレさせる。
• 高速筆談: あらゆる会話を最終的に結婚に繋げる。
■ タコ(一匹)
【正体】 聖女の使い魔 兼 アキラの専属マイク
• 特性: 特定の条件(アキラの血など)で黄金化し、奇跡を起こす。
• 現状: 宴会の食い過ぎでエルナの頭上で寝ている。




