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りんね  作者: ハムイチ
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第5章 デブとラーメン

白い世界


『りんね』からはいつもと違う感じがする。

外観はいつも通りなのだが、何かが違う。

扉を開けると、店の一角がラーメン屋になっているではないか。


そこには体の大きな男性がラーメンを何杯も食べている。


「マスター、おかわり」


マスターは寡黙だが、ビフテキの時とは違い、嬉しさを出してラーメンを作り運んでいる。


この体の大きな男性について語らせてもらう。男性に語らせるとラーメン伸びてしまいマスターに怒られるから。表情が見えないからわからないが。


彼の名は大

体は大きな姿だが、優しい小心者。職場でも都合よく使われていた。いつも残業を押し付けられ、気づけば22時。


帰りのラーメンが彼の唯一の楽しみであった。ある夜に入ったラーメン屋で感動した。昔ながらの中華そばなのだが、正にどストライクの味!鳥の味がしっかりとしたスープ、中太ちぢれ麺にしっかりと絡む。具材はメンマ、ネギ、赤かまぼこと薄くスライスされたチャーシュー。そして半分に切られた煮卵。あっという間にどんぶりは空になる。


「大将、おかわり」


大将が言う。


「味わって食べてんか?大食いとちゃうんやで!」


「おいしいからすぐ無くなっちゃうです。今度はもっと味わって食べますから。もう一杯」


「なら、すぐ作ったるさかいに」


大は次の一杯をゆっくりと味わって食べた。

お会計に

「おいしかった、また来ます」


大はラーメン屋の常連となった。


会社の人達は更に酷くなり、大に仕事を投げつけ、気づけば三徹。眠気覚ましのコーヒーを手に職場一胸の大きな女性の後ろを通り過ぎようとした。三徹でふらついた瞬間、手のコーヒーを女性の胸元にこぼしてしまう。


「きゃあ!熱い!」


大が気づくと、頬が痺れている。口の中は鉄の味。

打たれたと気づくまで時間がかからなかった。


「ごめんなさい。ふらついて」


と言って、ハンカチをポケットから出して、汚れた白いワイシャツの胸元に当てようとする。


「近寄らないで、変態!課長、助けて!」


その声を聞いて、課長がすぐ様飛んでくる。実はこの女性と課長は不倫関係にあった。この課長、見栄え主義の権化とも言える人物で、大の仕事が増えているのは、この課長の指示であった。課長は大をひどい言葉で叱責した。


居た堪れなくなった大は、職場を飛び出してしまう。


大は無職となった。


大はラーメン屋に行くことが無くなっていた。

就職活動の帰り、ラーメン屋の前を通って行こうとした瞬間、


「あれ?最近来てなかったよな?寄ってかねぇの?」


ラーメン屋の大将が声をかける。

ラーメン屋に入り、ラーメンを注文する。ここのラーメンはおいしい。いつもと変わらない。大の目には涙が浮かんでいた。


「おかわりはしないのかい?」


「今日はちょっと持ち合わせが」


大将は、大の異変に気づき、話を聞く。今までの話をすると、大将はこう言った。


「ならここで働くか?」


大は驚いたが、何かを決めたように返事をした。


「ありがとうございます。でもここにはラーメンを食べに来たいのでやめときます。」


大将はそれ以上何も言わなかった。


大将も何かを感じ取ったのだろう。

大が帰るときに、一言だけ。


「来るの待ってるからな」



大は、就職活動を頑張った。しかし届くのは、不採用の通知だけ。貯金も底をついてしまい、部屋を追い出される。


大はホームレスとなってしまう。


それでも大将との約束のため、就職活動を頑張る。しかし、よれよれのスーツ、履歴書とは違う様相。食事をしてないため、体が細くなりもはやスーツのサイズは合っていない。顔は、土気色で明らかに体調が良くない。それでも就職活動37社目を受けに行く途中、意識が遠くなり、気づけば白い世界の中だった。


『りんね』


おやおや、彼の話をしている間に、ラーメンは食べ終わったようである。満足した大の顔が見える。扉から新しいお客さんの姿が入ってくる。


「ラーメンのスープの匂いがするんだが、誰が作ってんだ?」



大が振り向くと、そこには、あのラーメン屋の大将の姿。


「大将、僕です。お腹が空いて、マスターが出してくれたんです。」


「なんだって?うちの味を盗んだんか?ああコラ!」


大将は怒り気味だ。


だが、マスターから説明を受けると、大将は恥ずかしそうに頭を下げた。


「知らねぇって言ってしまってすまんかった」


マスターはにこやかに頭を1つ下げて厨房のほうに戻っていく,。大と大将は、少し話をすると、店を出て、光の中へと入っていった。




[願いを言え。ひとつずつ叶えてやる]


大は


また大将のラーメンが食いたいです


大将は


こいつに腹いっぱいになるまで、俺のラーメンを食べて欲しい


神は願いを叶えた。




新しい世界



ある一軒家のお昼時、お父さんが子供を呼ぶ。


「お昼できたぞ、早く来ないと伸びるぞ」


子供が走って食卓に寄ってくる。


「僕、お父さんのラーメン大好きなんだ。今日もいっぱい食べていい?」


父親は笑顔でその返事をする。


テーブル上の新聞の一面は、昔、大が勤めていた会社の倒産を告げる記事だった。粉飾決算、金銭授受、情報漏洩、スキャンダルのオンパレードであった。あの2人の顔写真も載っている。



神は気まぐれだ。素直に願いを叶える時もある。そして、貶めた人間には、現世で罰を与える。そして白い世界でも。




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