第2章 日本兵とスープ
光に向かって人の列は続いている。今日は人の数が多いらしく、神も忙しそうに見える。途中やっつけになってないか?
神はどのような姿をしているか。私には昔どこかのドラマで見たことがある、口髭があり細目で中年のおっさんが口を細かく動かしながら人々に話しているように見える。
そんな人の列から少し離れたところにある喫茶店
『りんね』
中には防災頭巾をかぶっている人もいる。兵隊さんもいる。いろんな国から来ているようだ。
カウンターには1人の日本兵が、スープを飲んでいる。
「このスープはこんな味だったのか!」
マスターは聞く。
「ここでは望むものが出てくるのですが、日本食かと見てみたら豆のスープ。なにかわけがおありなので」
日本兵は少し寂しそうな顔で話し出した。
とある世界。
日本兵は東南アジアのある国に派兵された。
ジャングルの中に入っていき、敵兵を殺して1日、また1日と生き延びていた。
ある時、ジャングルの奥に集落を見つける。戦いが嫌になり逃げて来た原住民たちがいた。最初、日本兵たちは、嫌われていた。戦いをする奴らはみんな嫌いな集団である。日本兵だろうが敵兵であろうが関係なかった。
だが、敵兵が集落に来て食糧徴収のため暴れていた時、日本兵たちが助けてからは、少しだけだが友好的になり、日本兵たちはこの集落を守ることを自分たちの役目のように過ごすようになる。
集落の中には1人の男子が一回り小さな家で生活していた。戦いで親兄弟を失い、村の人がわずかな食糧をわけることでなんとか生きている状況である。
日本兵はその男子が気になり、集落に来た時は声をかけていた。男子も初めは心を閉ざしており、無視していたが、何度も何度も何度も声をかけてくる日本兵に勇気を出して話したところ、日本兵は笑顔で話してくれた。
彼らはいろんな話をした。日本兵のこと、今まであったこと、将来のこと、そして日本のこと。
男子は日本に興味を持ち、いろんなことを聞いた。日本兵は日本のことを話した。日本を行きたい、もっと知りたい。男子の中でそんな思いが大きくなっていった。
しかし戦いは待ってはくれない。戦況は日本兵たちに逆風となってくる。日本兵たちはジャングルに逃げ込み、生き延びていた。ある時食糧が無くなった。あるやつはあの集落からいただこう。いいだろ?俺たちまもってやってたんだ。
賛同したやつらに向かって日本兵は銃口を向けた。
日本の誇りとして、そんなことは許せなかった。
日本兵たちは散り散りになった。
日本兵はジャングルにある木の根などを噛み、掠奪することなく隠れていた。
ジャングルでは雨も降る、風も吹く、訳の分からない病気もある。日本兵は急に体調を崩して動けなくなった。
薄れていく意識。俺もここまでか。
体が持ち上がり引きずられていく。
あの男子が必死になって体を支え、引きずりながら声をかけていた。
集落の男子の家、日本兵は寝かされている。男子はスープを煮込んでいる。日本兵が体を起こそうとした時、男子は気付き器にスープを入れ差し出した。男子が作ってくれたスープ。豆のスープ。男子は笑顔で差し出している。手が震えている。
実はこのスープは男子の最後の食糧だった。日本兵を連れて来たことで、集落の人たちから食糧を分けてもらえなくなった。自分のために話しかけてくれた日本兵を助けたい!でも自分の最後の食糧。
その時、男子の家の戸が開いた。敵兵だ。入って来て日本兵を見て嘲笑いながら、男子を突き飛ばした。男子は倒れ、スープもこぼれた。日本兵は力を振り絞り敵兵に向かったところで、目の前は暗くなった。
話が終わった頃、『りんね』の入り口に身体の大きな褐色の男が戸を開け入って来た。入った途端、身体の大きな褐色の男はあの男子へと変わっていった。
カウンターに来て声をかけられて日本兵は残ったスープを飲み干し、男子と共に光へと向かった。
神の前
[願いを言え。ひとつずつ叶えてやる]
男子は言う
「日本に行って日本を学びたい」
日本兵は
「この子に日本のことを教えたい」
新しい世界
とある学校
日本史の授業が行われている。
一生懸命に勉強している学生と過去の戦争の愚かさとそんな中にあった高尚な願いを熱く語る先生の姿。
神は気まぐれだ。人の願いを素直に叶える時もある。




