四時間目:『三つの民族』の話について
みんな、休み時間はしっかり休憩できた?
四時間目も張り切っていっくよ~!
今回の授業は、ナディア建国前からこの地域に住んでいた、三つの『民族』のお話。
Ψ
——『自由の国』ナディア。『希望の国』ナディア。
『公平』と『平等』を国是とし、『実力主義』『合理主義』を旨とするこの国の文化は、ある意味で意図的に造られた、と言う方もできるかも。
ちょっと表現が悪いかもしれないけどね。
この国は六十年前に建国された、比較的新しい国だっていうのは、みんな知ってるよね?
この国ができる前には、このナディアの地には三つの民族が暮らしていて、永い間、互いにいがみ合ってたんだ。
そう。それが今の王都周辺の高台にいた『星の民』、グランディス地方にいた『大地の民』、そして今のサザンクロスや西に浮かぶセイレニア、カリプソなどに住んでいた『海の民』の三つだよ。
どうやらこの三つの民族の小競り合いは千年以上前から続いていた、って言う話もあるんだけど、そのあたりは定かではないんだ。
でも少なくとも、強力な『機械文明』で大陸中の覇権を握っていた帝国が衰退し始めた三百年前くらいから、民族間の争いが激しくなったのは確か。
ナディアの地の覇権を争って、血で血を洗う戦争が繰り返されてたんだよ。
やがて『大地の民』の猛攻で追いやられた『海の民』は、『星の民』と組んで対抗した時期もあったけど(その時に交換条件として、現在のサザンクロスを『星の民』に譲り渡した、なんて話もあるよ)、結局は勢力を維持できず、最初に脱落。
大陸を離れて西の島に引き上げたんだ。
その後も『大地の民』の優勢は変わらず、『星の民』も追い詰められてあわや全滅、と言うところだったんだけど、そこに救世主が現れたの。
それが後のナディア初代国王陛下だよ。
今の国王陛下の御爺様。他国からは『獅子王』なんて呼ばれてるよね。
『大地の民』でありながら『星の民』に恩のあった彼は、『星の民』の若者の中から《光の剣》の使い手を見出し、その部隊を率いて圧倒的劣勢の中『大地の民』と戦い、終に戦局を覆したんだ。
長い戦いに終止符を打ったあと、初代国王陛下はナディアを平定した上で、恋人だった『星の民』の女性と結婚し、統治を開始したの。
三つの民族の争いに心を痛めていた彼は、とにかく二度とこのような哀しい殺し合いが起きないようにと、心を砕いたわけ。
その結果が『公平』『平等』『実力主義』『合理主義』といった考え方で、それに基づく政策が『民族融合』『世襲降格制度』っていう感じかな。
初代国王陛下の理想はすっごく素敵だし、もちろん私も尊敬しているんだ。
けど、人間ってそんな簡単でもないよね。
民族間の争いの歴史とか恨みの連鎖とか。それにもっと単純に今まで約束されいたはずの権限をはく奪される人たちとか。
『民族融合政策』も、別に強制されるわけではないけど、特にお年寄りたちは自分たちの民族の文化が失われるんじゃないか……なんて不安を抱いているのも確か。
そういう訳で、表面的には『自由の国』『希望の国』なんてもてはやされるけど、水面下では不満分子がずっと燻ってたんだよ。
それが五十年経って一気に噴出したのが、今から十年前に始まって七年前に終わった『内戦』。
いろいろあって、特に最後の一週間は反乱軍が王都の市壁内まで侵攻するような大混乱になったんだよ。
この一週間のことを『血の七日間』って言うんだけど、この時王都防衛の中心となっていた〈星芒騎士団〉にもすごくたくさんの死者が出たの。
——あの時のことは……ごめん、私もあんまり思い出したくないから、詳細はここまでにさせてね。
とにかく、この内戦では、なんかまるで『大地の民』が中心になったみたいに言われてるけど、実際には『海の民』も『星の民』も多くが参加してたんだ。
首謀者たちは当然全員捕まったけど、その不満の根底は、正直なところまだなくなったわけじゃない。
というか、たぶん完全にはなくならないよね。
だって、それが人間ってものだから……。
……なんかちょっと暗い話になっちゃったかな。
そんなつもりはなかったんだけど。
ちょうどそろそろ良い時間だから、四時間目もここまでにしよっか。
いよいよセラフィナ先生の授業もあとちょっとで終わり。
五時間目は、ナディアの軍事力の要、『騎士団』の話をしようと思うよ!
それじゃあ、一旦、休み時間でーす。
また後でねー!




