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49.薄汚れた狂気

「……ちっ、反吐が出る」


 どうだ、驚いたかと言わんばかりのエクレウスのゆがんだ表情を見て、ガッドが吐き捨てるように言った。


「……つまりあんたが裏で糸を引いてたってわけね。あたしたちより前に派遣された討伐隊と調査隊が全滅したのも、全部あんたの仕業ってわけ?」


「そうだ。『祭壇』の存在を知られるわけにはいかなかったんでな。せっかく手柄を与えてやろうとしたのに、無駄に利口なやつがいてな。そいつのせいで、周りのやつらも巻き添えだよ。可哀想にな」


「……皆殺しにしたのね」


「まあ、正確には、何人かはここにいるがな」


 ふん、と笑って、エクレウスは顎で周囲にいる黒ずくめの男たちを差した。

 討伐隊にも調査隊にも、最初からエクレウスの息のかかった者が数名紛れ込んでいたという訳だ。


「……一人も退却できずに全滅したってのは、そういう理由(ワケ)かよ」


 ガッドは心底嫌いなものを見る目つきでエクレウスを睨みながら、いつでも魔法を放てるように身構える。


「あんたたちの目的は何なの?」


 ビスタに視線を向け、またエクレウスはニヤリと笑った。

 その悍ましい表情に、ビスタはぞっとする。


 普段カストールを活動拠点としているビスタ達は、カペラ兵団の副将を遠目に何度か見たことはあったものの、直接の関わりはほとんどない。ビスタはただ、無表情だが落ち着いた男だという漠然とした印象だけを持っていた。

 ——しかし、化けの皮が一枚剥がれると、こんなにも頭のおかしな奴だったとは。


「世直しさ」


 一方のエクレウスは、ビスタが気に入ったようだった。ガッドなどはまるで存在しないかのように、ビスタに向かって自身の狂気をさも自慢げに語り始める。


「この国から汚れた血を一掃し、ゼロから清く正しい国を作り直す。そのためにこの遺跡の封印を解き、わざわざ薄汚いゴブリンどもを匿ってやったのだ。先月の大移動も、この私が〈漆黒の牙〉を使ってカムフラージュしてやったのさ。王宮の【賢者】ですら気づかなかっただろうよ。……と言っても、所詮は薄汚い妖魔(グリム)どもでな。我慢もできずに時々人間を襲うものだから、隠すのにも随分と苦労させられたがね」


「……意味がわかんない。なんでゴブリンの手助けをすることが世直しになるのよ!」


「フ、まあ聞け、娘」


 ビスタの声には明らかに憤りが混じっていたが、エクレウスはビスタのその表情(かお)を見て却って気を良くしたようだった。


「この遺跡は『捧魂の祭壇』といってな。頭のイカレた呪術師どもが、三百年も前に作ったものだそうだが」


 エクレウスは右手の剣の切っ先を洞窟に向けた。もちろんそれは洞窟そのものを差しているのではなく、その奥に隠されていた古代遺跡に向けられている。


(イカレてるのは、あんたもでしょ)


 とビスタは心の中で毒づく。


「ここから南東に数十キロといったところにも、この遺跡と対になる『授魂の祭壇』というものがある」


 ビスタの心中に気づいた様子もなく、青髪の男は続いて剣で森の方を指す。


「その地で、この私がゴブリンどもの親玉に、とある儀式を施してやったのだ。……そう、ちょうどそこにいるような若い娘を贄にしてな」


 エクレウスはそう言って、最後に剣先をビスタの後ろで震える若い娘たちに向けた。

 二人の娘が小さく悲鳴を上げる。

 振り返らなくても、彼女たちの恐怖が痛いほど背に伝わってくる。

 ビスタはエクレウスの少女たちへの視線を遮るように移動しながら、注意を自分に向けるべく、その男が求めているであろう問いを投げかけた。


「儀式ですって?」


 満足そうに、エクレウスは口の端を吊り上げた。

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