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35.授魂の祭壇と呪いの残滓

「——!!」


 だがしかし、そこには、何もいなかった。


 少なく見積もっても三百人は優に収容できるような巨大な広間。

 中央には不気味な祭壇のようなものがあった。

 台座を中心に、複雑で大掛かりな魔法陣が描かれている。その魔法陣は、まるで何度か描いては消してを繰り返したような跡が伺えた。


 そして、祭壇の台座の上には白骨化しかけた死体。

 さらにその下にも、だいぶ時間が経過した人骨と思しきものも散乱している。


「……もぬけの殻、ということか」


 カレンが苛立たし気に吐き捨てた。


「何かが大勢ここにいたのは間違いないが、今はここを捨ててどこかに移動した……ということだな。私たちはとっくに放棄された廃墟の調査に、まんまと一月も足止めされたわけだ」


 ルシアが祭壇に歩み寄る。


「人間の……女性ね」


「おぞましい儀式の犠牲者だな。ここで何かが行われたのは間違いない。ちょうど一か月前のあの瘴気の原因は、これだろうな」


 カレンもルシアの隣に立ち、手を組んで、哀れな犠牲者に小さく祈りを捧げた。

 ルシアも同じように祈りを捧げてから、ふと台座の縁に、気味の悪い蜘蛛のような模様と、その下に文字らしきものが刻まれていることに気づいた。


(……魂贄の呪詛、授魂の……祭壇?)


 それは現代のいかなる言語でもなかったが、彼女の血筋に脈々と伝わる膨大な魔導の知識を総動員し、ルシアは辛うじてそれらしい言葉を読み取った。


「ルシア、お前ならここで何があったか分かるか?」


「ちょっと待って」


 カレンの問いに、ルシアは紫水晶(アメジスト)の瞳を閉じて短く答えた。


「私の魔眼は、調査系にはあまり向かないのだけど……このくらい明確な呪力の痕跡があれば」


 そう言ってから開いたルシアの瞳の色は、紅玉(ルビー)のように赤く輝いていた。

 ルシアの紫色の髪が、風もない遺跡の最奥で、重力に反してふわりとなびく。無音だが、周りにいた〈星芒騎士〉たちは、強力な魔力の奔流が広大な広間全体を支配していくのをはっきりと感じていた。


「……見えた」


 やがて、ルシアが口を開いた。


「……妖魔よ。妖魔がいる」


「妖魔?あれだけの力の源が、古の悪魔や魔神の類ではなく、ただの妖魔だというのか?」


 カレンが拍子抜けしたような表情を浮かべる。

 通常なら、彼女たちにとって妖魔は忌むべき存在ではあっても脅威にはなりえない。

 だが、ルシアは静かに頷く。


「……何度か、ここで似たような儀式が行われたみたいだけど…一番新しいのは……」


 赤く輝く瞳が、あたかもそこにおぞましい者たちがいるかのように、虚空を凝視する。


「……ゴブリンよ。でも」


 怪訝そうな顔をするカレンとは対照的に、ルシアの表情が少しずつ厳しくなっていく。


「すごい数……!百や二百じゃないわ。上位種もたくさん見える。この子を生贄に何かの儀式をして、大きなゴブリンに何かを移したわ。そして……」


 そしてはっと何かに気づいたように、ルシアはカレンを振り返った。


「……ここを出て、北西に向かった」


「北西って……まさか今アリス達が向かっているゴブリンの巣穴か!」


 カレンも驚いたように、切れ長の目を見開いた。


「あの子たちの戦力は……?」


「……恐らく、余裕を見て十人といったところだろう。相手は小鬼が多くても五十匹って話だったからな」


「五十どころの話ではないわ。急がないと、あの子たちが危ない……!」


 ルシアのその美しい顔には、明らかな焦りの色が滲んでいた。


第二章はここまでです。

これまでは、かなりゆっくり目でしたが、いよいよ、第三章から展開がどんどんスピードアップしていく...はずです!


お読みいただきありがとうございます。

今日、連載始めてから11日目となり、初めて週別ユニークが更新され、244人!とっても嬉しいです!

もしよろしければ、厳しめなご意見も含めて正直な感想・評価などいただけますと嬉しいです。

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