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29.再会

 翌日。一行は予定通り早朝にカペラを発った。


 カペラからポルックスまでの街道は十分に舗装されておらず、また聖石灯の数も少ない。

 見渡す限りの荒野を進む半日の道中で、二度も野生の魔物に襲撃される羽目になった。

 昨夜も遭遇した黒妖犬と、梟の顔と熊の体を持つ『アウルベア』だ。


 だが、どちらもアリス達の行軍を遅らせるほどの脅威にはならなかった。

 二体ともアリスかシュカにあっという間に撃破され、セラフィナもジェイクも全く出番はなかった。

 セラフィナに至っては、武器の柄にさえ手を掛けなかった。


「どっちが化け物かわかんねえな。お前らといると楽できそうだ」


「ねえねえ、あの黒妖犬は昨日の群れからはぐれた奴かな」


「さあな。黒妖犬なんてそこら中で見かける魔物だろ。ゴブリンだとかコボルドだとかに馬代わりに飼われているとき以外じゃあ、群れてる方が珍しいしな」


 馬上でジェイクとセラフィナが暇そうに話していた。

 梟熊アウルベアを討伐してから馬上で揺られることおよそ一時間。


「見えたぞ」


 アリスと並んで先頭に馬を歩かせていたシュカが、振り返ってジェイクとセラフィナに声を掛けた。

 どこまでも広がる青空の下、ポツンと小さな村の影が一同の目に映る。


「うっわ、今度は正真正銘のクソ田舎だな」


 ジェイクが双眼鏡を覗きながら呆れたような声を出した。


「あれももう一年以上前か。懐かしいな」


 アリスが呟いた。

 あの時とは打って変わって、晴れ渡る空の下。

 季節も春で、あの時よりはだいぶ暖かい。

 柔らかい日差しを浴びているその小さな村は平和そうに見える。


 一行は予定通り、ポルックス村に到着した。



     Ψ


 チリンチリン、と鈴の音を響かせて木製の扉が開く。

 店の外では犬が吠えている声が聞こえる。

 騒がしいが、警戒をしている、というよりは心なしか喜んでいるようだ。


「おう、来たな!今日は遅刻しなかったじゃねえか」


 アリス達が『星明かり亭』に入ると、早速懐かしい声がした。


 赤みがかかった茶色の短髪、やや大きめの丸い鼻。簡素な革鎧レザーアーマーを身に着け、腰には中型の広刃剣ブロードソードを下げている。上半身は、革鎧の下は素肌だ。


「ガッドさん」


 アリスは軽く会釈して答えた。

 ガッドのテーブルには彼の他に、以前鳥竜退治でともに戦ったロンド、ビスタ、そしてグレッグもいる。


「おお、待ってたぜ」


「アリス君!相変わらず女の子みたいな綺麗な顔だけど……あれ、でもちょっと背伸びた!?」


 ロンドが手を挙げて挨拶し、ビスタは立ち上がって駆け寄ってくる。


「久しぶりだな、アリス。今は【星屑スターダスト】って呼ばれてるんだって?その歳で『号持ち(ネームド)』なんて、お前はやっぱりすごい奴だったんだな」


 ロンドも席を立つと、アリスのもとへ歩み寄ってきた。


「……半分は嫌味を込めて付けられた称号(タイトル)なんですけどね」


「『【一番星】の残り屑』ってヤツな」


 アリスの苦笑に、彼の背後に続いて店内に入ってきたシュカが付け加える。


「……後ろのお連れさんたちもみんな強そうだな。あんたたちも騎士かい?」


 ロンドの向かいに座っていた壮年の屈強な大男——グレッグがシュカたちに視線を向けた。


「——しかもみんな、超イケメンと超美少女じゃん!!」


 ビスタがカウンターの前にいた給仕の娘に「ねえ?」と声を掛けた。

 給仕の娘も大きな瞳を輝かせてコクコクと頷く。


「ビスタとは大違いだな」


「あんたともね」


 ビスタはそう言ってガッドを睨むと、すぐにアリス達に向き直った。


「お嬢さんは魔導士さんかな?その髪と超絶可愛い顔……もしかしてアリス君の妹さん!?」



「分かってるね、お姉さん。そう、私はお兄ちゃんに顔がそっくりなのが玉に瑕の、超絶美少女……」


「妹のセラフィナです」


 アリスがセラフィナの話を遮った。


「美女姉妹……間違えた。美男美女兄弟だね!」


 ビスタはそれからジェイクに視線を移し、


「そっちの目つきの悪いキミは……うーん、騎士様って感じじゃないね。うちらと同業かな?」


「目つきの悪いキミってな……」


 反射的に文句を言ってやろうとしたジェイクだったが、ビスタの悪気のかけらもない笑顔に毒気を抜かれたようだった。


「……ああ、一応、『便利屋カニングフォード』でギルドに登録してる。『プレート持ち』じゃねえけど」


 それを聞いて、何故がガッドが勝ち誇ったように胸を張る。


「うちのグレッグは『青銅等級ブロンズ』だぜ!」


「なんであんたが偉そうなの」


 すかさずビスタがガッドのみぞおちに肘を入れる。


「……なんかやたらと賑やかな顔見知りだな」


 シュカが呆れた表情を浮かべ、


「なんか冒険者って感じ!」


 セラフィナは空色の瞳を輝かせる。

 アリスは苦笑していた。


「……さて。積もる話もあるだろうし、作戦会議もしなきゃなんないだろうが」


 いつの間にかカウンターの奥から出てきた女主人が、大きな皿を持ってやってきた。隣には給仕の娘も、同じく大皿を手にして控えている。


「まずは腹ごしらえだ。たくさん食ってたくさん飲んでおくれ。今日はアタシの奢りだからね!打ち合わせはその後にしようや」

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