18.地下街の少年
「てめえ、許さねえ!ぶっ殺してやる!」
昼間でもやや薄暗い狭い路地の一角で、不穏な怒鳴り声が響く。
図体のデカいスキンヘッドの男が唾を吐き散らしながら、目の前にいる痩せた少年をひどい形相で睨みつけていた。
強気な言葉に似合わず、焦っているのが声からも表情からも、額の冷や汗からもよく分かる。
「いや、お前らが因縁つけてきたんだろ」
少年はあきれたように眉を顰めた。
グレーの髪、明るい茶色の瞳。
幼さの残る顔立ちだが、目は鋭い。
あまり上等とは言えない質素な衣服を身に着けている。
少年の足下にはすでに四人、人相の悪い男が地べたに転がって呻いていた。
スキンヘッドの仲間だろう。
「るせえ!てめえが俺らの“仕事”の邪魔をしたからだろうが!正義漢ぶりやがって、同類のくせに」
「正義面してるつもりはねえし、同類って言われりゃあんまり否定できねえけど……うーん、いや、やっぱお前らと一緒にされたくはねえかも」
「うるっせえ、死ねやあ!」
スキンヘッドの男が少年に向かってタックルする。
体重が少年の倍近くもありそうな巨体に物を言わせて、少年を押し倒そうとする。
灰髪の少年は苦も無く軽やかに身を翻して躱すと、すれ違いざまに右の膝をスキンヘッドの男のみぞおちに叩き込んだ。
「ごぉほっ!?」
一撃で悶絶し、一瞬の後スキンヘッドの男は他の仲間と同様、地べたを転がって呻くこととなった。
「……じゃ、これはカツアゲじゃなくてあくまで迷惑料だからな」
少年は呻くスキンヘッドの横にしゃがみ込むと、男の腰にぶら下がっていた袋を取り上げた。ジャリ、と中の金属が音を立てる。
「ちっ、しけてんなあ」
中身の貨幣を確認し、不満げな顔で地べたに転がるスキンヘッドを見下ろす。
「て、てめえが“仕事”の邪魔したからだろうが……」
ぜえぜえと腹を抑えて喘ぎながら、少年を憎らしそうな目で見上げてスキンヘッドが吐き捨てるように唸った。
「まあ、これに懲りたら悪いことはやめなって」
しれっと笑う少年に、
「てめえが言うんじゃねえ……!」
半ば泣きそうな声でそう言うと、スキンヘッドは腹を抑えたまま何とか起き上がり、周りでまだ倒れていた仲間たちに「いつまでも寝てんじゃねえ!」と一括してからよろよろとその場を去っていく。
他の男たちも、弱々しい恨み言を吐きながらおぼつかない足取りでそのあとを追う。
「しっかし、こんなことしてても、たいした金になんねえなあ」
チンピラたちの後ろ姿を眺めながら、一人少年は誰にともなくつぶやく。
ふとその視線が、男たちのいなくなった路地の向こうに見覚えのある人影を捉えた。
(お、あれは)
少年の茶色の瞳がギラリと光る。
(……ちょっとは金になる話があるかもな)
彼は小さな期待を胸に、路地を走った。




