最悪なお家デート
翌朝俺は寝不足のまま、学校に行くことになった。
摩耶西の言われた通りにするのは嫌なため、対策を練っていたらいつの間にか朝になっていた。
「健二、いつもより顔色悪く無いか。死んだ魚見たいな目してるぞ。何かあったか?」
心配そうに顔を見てくる。自分では分からないが、こういう時いつもはバカにする徳見が心配するとは余程顔色が悪いのだろう。
「あーまあいいか、実は...」
摩耶西のために隠すのは癪だが全て話すと面倒なので、摩耶西が好きな相手が徳見であることを伏せて話すことにした
「お前それまじで言ってんの?」。
当たり前の反応だ。学園の中心と言っても過言ではない存在をいきなり非難したんだからな。普通に考えれば信用度の低い俺よりも信用度の高い摩耶西を信じるのが妥当だろう。
特に摩耶西のファンの徳見には信じることは苦だろう。
「別に信じなくてもいいぞ。ただの虚言だと思ってくれれば。」
少し気まずい話題をしてしまったなと後悔しながら徳見の返答を待つ。
「いや、健二が無駄に嘘つくとは思わないから信用はするけど、ってなにその顔。」
徳見は摩耶西のファンなので、むしろ俺を非難すると思っていたからあっさり信用した徳見に驚きが隠せなかった。
「いや、てっきりお前は信用しないと思っていたから。」
徳見は呆気にとられている俺を見て首を掻き、呆れたと言わんばかりにため息をついた。
「あのなあ、何年友人やってると思ってるんだ。それぐらい分かるつーの。」
俺は誰にも信用されていないのが普通であり、仕方ないことだったから、信用してくれたことが、嬉しくて笑みを浮かべそうになる口を徳見にばれないよう手で抑えた。
家に着くと学校の中心的存在、摩耶西が俺の家の前でしゃがんでいた。
少しばかり眺めて見るとやはり絵になるぐらい可愛いと思ったのだが、殺意すら感じるぐらい怒っていたためすぐにそんなことは無いと思い直した。
「やっと来た。返事、聞かせてくれる?」
俺に気づいて話しかけてきた。さっきまでの殺意や怒りが嘘のように消えていて、完全に学校で見る摩耶西さんモードになっていて少し恐怖を覚えた。
「いや、俺の前でキャラは、無理でしょ。」
あまりの代わり映えに思わず、つっこんでしまった。
「キャラ?キミってそう言う冗談言うんだ。意外と面白いんだね。ここじゃ話しづらいから、家に上がらさせて貰ってもいいかな?」
完全に学校で見る摩耶西さんモードなので、負の感情は消えていたが、何故か強烈な圧を感じた。
「...はい。」
俺は圧に負けて摩耶西さんを家に上げってしまった。
これから起きる出来事を考えると頭がやられるので、これはお家デートだと現実逃避をすることにした。